家族に代わって親の安心・安全を確認する住まいの「見守りサービス」

絶対に“争族”にしない!親子で考える相続(第11回)

この記事の概要

  • トラブルのないスムーズな相続を実現する前提は、親子に信頼関係があることです。それがなければ、きちんとした相談や話し合いができないからです。信頼関係を確かなものにするには、互いのコミュニケーションがポイントになります。離れて暮らしても、高齢な親御さんを見守り、常に安否を気にしておくことが必要でしょう。それを実現する住まいの「見守りサービス」を紹介します。

家族に代わって親の安心・安全を確認する住まいの「見守りサービス」のイメージ図

高齢の親御さんが遠方に住んでいるような場合、離れて暮らす子どもは何かと心配なものです。まして、独居(ひとり暮らし)になってしまえば、不安はより募ります。知り合いやご友人などが自然と気にかけてくれる近隣のコミュニティ機能も衰えつつあり、昨今はあまり頼れなくなっています。

内閣府の高齢社会白書(2017年版)によると、2015年時点で65歳以上の高齢者がいる世帯は2372万4000世帯であり、全世帯の47.1%を占めています。そのうち、夫婦のみの世帯が746万9000世帯、単独世帯が624万3000世帯あり、両方合わせると過半数を超えています。子どもとの同居率は39%。1980年には69%でしたから大幅に低下したことが分かります。

最近は、相続の問題が非常にクローズアップされていますが、その前提は親子の信頼関係つまり“絆”があることです。そのためには、たとえ離れていても、お互いの健康や安全を気にしながら暮すことが大切です。最近は、親の安全や健康を確認する方法として、さまざまな「見守りサービス」が提供されています。こうしたサービスを上手に活用すれば、離れても安心して暮らせるようになります。

機器を使った遠隔管理かスタッフの訪問か

一口に見守りサービスといっても、さまざまな事業者が多彩なサービスを提供しており、内容や費用などが異なっています。これらのサービスについて整理したのが下表1です。各サービスの特徴についても簡単に説明しました。

表1 見守りサービスのタイプ例
タイプ 概要 特徴
遠隔
監視型
センサー
監視型
自宅の各所にセンサーを取り付け、非常時に家族のPC等に連絡が入る
  • 非常時に自宅に駆けつけるサービスもある
カメラ
監視型
自宅にカメラを設置し、サービス提供者が24時間監視。緊急時は高齢者からの呼びかけにも対応
  • 非常時に迅速に駆けつけてくれるサービスが用意されていることが多い
定期
連絡型
定期的に電話やメールを入れ、高齢者に回答してもらうサービス。回答は申込者にも送信される
  • 比較的ローコスト
  • 本人の協力の下に成り立つ
訪問型 訪問型 現地のスタッフや警備員が定期的に安否を確認するサービス
  • 本人と直接コンタクトを取る
  • ヒアリングや困りごと相談等のサービスを提供する事業者も
宅配型 食事の宅配サービスなどと併せ、高齢者の安否や健康状態等を確認してくれる
  • 食事代+αで安否確認できる

見守りサービスはこのように大きく「遠隔監視型」と「訪問型」とに分けられます。「遠隔監視型」は、部屋の各所にセンサーなどを設置して遠隔で高齢者の生活確認を行ったり、定期的に電話連絡をしたりして監視するサービスです。原則、通常時はスタッフが直接訪問することはありません。一方、「訪問型」は、提供する事業者のスタッフが定期的に対象の高齢者宅に訪問し、直接様子を確認するサービスです。それぞれについて、もう少し細かく見ていきましょう。

人感センサー、インフラ、家電など様々な方法で異常を感知

遠隔監視型にも、自宅内に設置した各種機器やセンサーで監視する「センサー監視型」、室内カメラによる「カメラ監視型」、電話連絡による「定期連絡型」などの種類があります。

「センサー監視型」は、基本的なサービスは高齢者宅の室内にセンサー機器を取り付けて24時間監視するサービス。異常が起きたと判断された際には、サービス事業者は本人に確認の連絡を入れたり、登録した保護者に報告を入れたりする対応が行われます。センサーは、寝室やトイレ、浴室などに人感センサーを設置して入退出を確認するほか、照明のオン・オフをモニタリングできる「照度センサー」、室温「温湿度センサー」、テレビやラジオ等の音量等に反応する「音響センサー」など、さまざまな機器を使ったサービスが存在します。

電気やガス、水道など、毎日使うインフラの利用状況をチェックすることで、日々の生活に異常が起きていないかを確かめるサービスも、センサー監視型の一種といえるでしょう。毎日使うはずのガスが使われていない、夜消すはずの照明が消えていないなどの現象が起こった場合、緊急時と判断され、連絡や報告がなされるというものです。同様に家電品の使用状況をチェックするサービスもあります。代表的なのが、冷蔵庫や電気ポットをチェックに使うサービス。使用されない状態が続くと連絡が入るという仕組みです。

「カメラ監視型」は、セキュリティ会社などが高齢者の自宅にカメラを設置し、遠隔地から高齢者の安否や健康状態などを確認する見守りサービスです。単に人感センサーを設置するよりも情報量が多いので、チェックのレベルは高くなります。映像はセキュリティ会社だけでなく、保護者(子ども)も確認できるサービスも少なくありません。カメラ経由とはいえ、高齢者の安否を直接確認できるのは大きなメリットといえるでしょう。緊急時には、セキュリティ会社が高齢者からの呼びかけなどに対応したり、自宅に駆けつけたりする仕組みを備えたサービスもあります。

「定期連絡型」は、定期的な電話などで安否を確認するサービスです。人は動かないので「訪問型」よりは比較的費用が安価になるメリットはありますが、見守られる親御さんが、いちいち対応するのを面倒に感じる可能性があります。

スタッフが高齢者宅を定期的に訪問し、直接の会話を通じて安否や生活状況を確認し、家族にメール等で知らせる「訪問型」のサービスにもいろいろなタイプがあります。安否確認だけを目的とするのではなく、食事の配達と併せて状況をチェックする「宅配型」など複合型のサービスも登場しています。スタッフの訪問頻度、確認内容などはサービス事業者によってかなり異なります。

見守られる側の抵抗感に配慮が必要

このように、現在、見守りサービスはさまざまな事業者が多彩なサービスを提供しています。事業者によって、サービス内容やコストはかなり違うので、親の年齢、健康状態、生活習慣、性格などによって、最適なものを選ぶ必要があります。

最後に、こうした見守りサービスを活用する際、気にかけておくことが2つ、ご紹介します。

1つは、多くの見守りサービスは基本的には、「救命を保証するものではない」ということです。あくまでも見守りに過ぎません。万一の際に最悪の事態を必ず避けられるものではないことを、意識しておくことが必要かと思います。

もう1点は、見守られる側になる親御さんの心理的な負担や抵抗感に配慮すべきということです。子どもが、遠方で暮す自分を心配してくれるのは、親御さんにとっても、ありがたいことではあるのは確かです。しかし、一方で、「自分はまだまだ大丈夫なのに」とか。「生活を監視されるのは嫌だ」といった気持ちが生じる可能性もあります。

見守りサービスは、こうした親御さんの感情に配慮して、納得してもらって導入することが大切です。そして、「これで自分がまったく連絡しなくても大丈夫」などと考えず、きちんと互いの様子を報告しあい、親子の“絆”を補完する存在として、見守りサービスを活用しましょう。離れていても、見守りサービスに委ねてしまうのでなく、コミュニケーションは欠かせません。まめな連絡やコンタクトと、見守りサービスとのダブルチェックが、何よりの安心につながるでしょう。

執筆

谷内信彦(たにうち・のぶひこ)

建築&不動産ライター。主に住宅を舞台に、暮らしや資産価値の向上をテーマとしている。近年は空き家活用や地域コミュニティにも領域を広げている。『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP社・共著)

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。