生前整理の実行計画と継続のための8つの心得

絶対に“争族”にしない!親子で考える相続(第9回)

この記事の概要

  • これまで、生前整理について親に納得してもらうコツと進め方のポイントを解説してきました。今回は、実際に生前整理を実行するための計画の立て方と、整理した状態を継続するための心得について、幸せ住空間セラピストの古堅純子さんにアドバイスしてもらいました。

生前整理の実行計画と継続のための8つの心得のイメージ図

生前整理を実施することについて親になんとか納得してもらい、進め方のポイントも理解できれば、次はいよいよ実行です。その際にお勧めしたいのは「生前整理ワークシート」の作成です。目標をクリアするたびにチェックを入れる「生前整理ワークシート」を使って達成感を高め、計画的に実家の片付けを進めましょう。

下に示したような生前整理ワークシートを作って、目標をクリアするごとにチェックを入れていくと、達成感も湧いてきます。初めは玄関周り、洗面所など比較的思い入れが少ない場所から片付けを始めると、作業もはかどります。

面倒な場所は数日間かけるなど、決して無理はしないこと。この表では1カ月で完了する設定になっていますが、週末しか片付けに行けないなら、半年以上かけても一向に構いません。子供が急いでいると、親は不安に感じてしまうからです。

生前整理ワークシート

※ 古堅さんの著著を参考に作成

親にスッキリ空間を継続させるための8つの心得

生前整理ですから、実行した後も親はそこで暮らしていきます。ただ、苦労して実家を片付けても、再びモノがたまってしまっては元も子もありません。片付いた空間を保つためには、大胆な発想の転換が必要です。「片付けた実家の状態を継続していくためには、子供が協力して親の生活習慣を見直してあげることが重要です」と古堅さん。

古堅さんは、そのポイントとして8つの心得を上げてくれました。いくつか説明しましょう。すっきり空間を継続するには、まず、モノを適量にとどめる習慣づけをすること。例えば、クローゼットなどの収納に収まる7割を適量として維持すれば、洋服なども出し入れしやすいでしょう。

客用の布団が押し入れにしまわれているケースもよくあります。これらも、日常生活には、ほとんど不要です。必要な際は貸布団をレンタルするという発想に切り替えてはどうでしょうか。

高齢者に見合った住環境にしていくことも大切です。例えば、こたつのある和室などで生活をしていると、立ち上がることが億劫になります。すると、いつも座る場所の周囲にモノを置きやすくなりがちです。テーブルと椅子の生活に切り替えてみるのも一手でしょう。思い切って、家のサイズを見直すことを視野に入れてもいいかもしれません。収納が多過ぎる広い家に暮らしているから、そこにまたモノを入れてしまいます。高齢の親の生活に見合う、コンパクトなマンションなどに引っ越すことも一つの策です。

生前整理した状態を継続する8つの心得

心得①もらい物はドンドン使う

結婚式の引き出物などでもらった高級な食器は、箱ごとしまい込み、普段使いの食器が安物だったりする。高級品といえどもためらわず、どんどん日常使いしていきましょう。

心得①もらい物はドンドン使う

心得①もらい物はドンドン使う

心得②モノの定位置を決める

洋服、バッグ、老眼鏡などモノの定位置を決め、使用後はきちんと元の場所に戻す習慣をつけましょう。部屋も散らからず、なくなったのかと思って同じモノを何度も買う失敗もなくなります。

心得②モノの定位置を決める

心得②モノの定位置を決める

心得③「ざっくりBOX」を作る

郵便物や雑誌など置き場に困るモノは、暫定的に何でも入れられる「ざっくりBOX」を用意して、そこに収めます。BOX の中は定期的に点検して、整理・処分することを忘れずに。

心得③「ざっくりBOX」を作る

心得③「ざっくりBOX」を作る

心得④収納のキャパは「7割」に

収納スペースにぎっしり詰め込むから中に入れたモノが分からず、使わずじまいになります。収納はキャパの7割までと決め、その範囲内の服や日用品でやりくりするようにしましょう。

心得④収納のキャパは「7割」に

心得④収納のキャパは「7割」に

心得⑤衣装ケースはなるべく使わない

衣装ケースに服を入れてしまうと何を入れたか見えにくく、結局、忘れてしまいがち。洋服ならハンガーで吊るすか浅めの引き出しに入れて、何がどこにあるか分かるようにしましょう。

心得⑤衣装ケースはなるべく使わない

心得⑤衣装ケースはなるべく使わない

心得⑥椅子の生活に切り替える

畳やこたつなど座る生活をしていると、立ち上がるのが面倒で手の届く範囲にモノを置きがちです。思い切って椅子とテーブルの生活に切り替え、モノが周囲にたまらないようにしましょう。

心得⑥椅子の生活に切り替える

心得⑥椅子の生活に切り替える

心得⑦客用布団はレンタルで

たまの泊まり客のために、山ほども客用布団を押し入れにしまい込んでいる家が多いのでは。必要なときは貸布団をレンタルする、と発想を転換すれば、空いた空間を有効利用できます。

心得⑦客用布団はレンタルで

心得⑦客用布団はレンタルで

心得⑧家のサイズを見直す(引っ越す)

収納が多い広い家に暮らしているから、モノが増えてしまいます。高齢の親の生活に見合うコンパクトな家に引っ越すことを子供が提案すれば、快適な老後生活を後押しすることになります。

心得⑧家のサイズを見直す(引っ越す)

心得⑧家のサイズを見直す(引っ越す)

解説

古堅 純子

幸せ住空間セラピスト。1998年老舗の家事代行サービス会社に入社。約20年間、現場第一主義を貫き、お客様の元に通っている。2000軒以上のお宅に伺いサービスを重ね、整理収納のメソッドと技術を取得する。整理収納アドバイザー1級。企業内整理収納マネージャー。個人宅や企業内での整理収納コンサルティング、収納サービスを提供する傍ら、大手住宅機器メーカーの収納開発に協力した実績あり。テレビ・ラジオ雑誌などのメディアの取材協力も多数。『定年前にはじめる生前整理』(講談社)ほか著書多数

執筆

文:礒部 道生

イラスト:エイイチ

協力:『日経おとなのOFF』(日経BP社)

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。