遺言
遺言を作成することで相続をめぐる紛争をあらかじめ防止することができます。注意点や種類をチェックしておきましょう。
遺言のポイント
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遺言者の死亡の時からその効果が生じます。
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自分の財産の具体的な分け方を生前に決められます。
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相続人以外の人にも財産を遺すことができます。
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遺留分に配慮すればスムーズに資産を継承することが可能です。
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いつでも書き換え、撤回ができます。
遺言が好ましいケースとは
ケース1:子供のいない夫婦
遺言がないと…
直系尊属(親・祖父母等)が既に亡くなられている場合、残された配偶者は被相続人の兄弟姉妹(亡くなられた場合には、その子である甥姪)全員と遺産分割協議を行う必要があり苦労されることが多いです。
遺言があれば…
兄弟姉妹には遺留分がなく、遺言書を作成すれば、遺産分割協議が不要となり、「配偶者に全財産を相続させる」ことも実現できます。ただし、特別の寄与をした親族は、寄与に応じた額の支払いを請求できます。
ケース2:特定の相続人に多く遺したい
障害のある子どもの安定的な生活のためや、同居している子だけに自宅を確実に渡したい、円滑な事業承継のため後継者に自社株や事業用資産を遺したい等、財産配分に差をつけることができます。
ケース3:お世話になった人やユニセフなどの団体に遺したい
遺言書がない場合、原則として財産は法定相続人が相続します。
遺言しておけば、知人・友人・日本赤十字社、ユニセフなど相続人以外の方に財産を遺すこともできます。
遺言の種類と特徴
公正証書遺言
遺言者の口述に基づき公証人が作成し、遺言者、公証人、証人の署名押印が必要。
公証役場で原本を保管し、遺言者は正本(または謄本)を保管
特徴
- ○法律の専門家である公証人が作成するので、法的に安全
- ○遺言者が亡くなった後、相続人等が公正証書遺言の有無を照会できる
- ○公証人作成のため内容が複雑でも過誤なく正確
- ○偽造、変造、紛失、破棄、隠匿の危険性がない
- ○作成時、遺言能力の確認が行われる
自筆証書遺言(自宅等保管)
遺言の全文・日付・氏名を本人が書き、捺印。財産目録はワープロ等での作成可であり(ただし、目録の各頁、および表面と裏面がある場合にはその両面に署名・捺印することが必要)、自宅などで保管する。相続発生後すみやかに、家庭裁判所での検認が必要。
特徴
- ×法的要件不備等により無効とされたり、遺言内容に過誤があり実現できない場合あり
- ×紛失や忘却、他人による偽造、変造、破棄、隠匿の危険性あり
- ×遺言作成時の遺言能力の有無について紛争が起きる場合あり
- ×遺言者が亡くなった後、相続人等が自筆証書遺言(自宅等保管)を探す必要がある
自筆証書遺言(法務局保管)
遺言の全文・日付・氏名を本人が書き、捺印。財産目録はワープロ等での作成可であり(ただし、目録の各頁、および表面と裏面がある場合にはその両面に署名・捺印することが必要)、法務局で原本と画像データを保管する。
特徴
- ×法務局は遺言書の方式の適合性(署名・押印・日付の有無など)を外形的に確認するのみ。遺言内容に過誤等がある場合には、実現できない可能性あり
- ×遺言作成時の遺言能力の有無について紛争が起きる場合あり
- ○偽造、変造、紛失、破棄、隠匿の危険性がない
- ○遺言者が亡くなった後、相続人等が自筆証書遺言(法務局保管)の有無を照会できる
不動産 耳寄りな話
不動産の共有名義はできるだけ避けましょう
不動産が相続人間で共有名義となると、管理、納税、売買等さまざまな場面で支障をきたし、トラブルに発展するケースがあります。遺言書で後継者を指定することも、ひとつの手段となります。
- ※2024年4月1日現在の法令に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。
- ※監修:宏和法律事務所