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親の自宅の相続に要注意!「家なき子相続厳格化」と「配偶者居住権新設」とは?

絶対に“争族”にしない!親子で考える相続(第7回)

公開日:2018年5月31日

この記事の概要

  • 2013年度の税制改正によって基礎控除額の引き上げなどが行われた結果、2015年1月以後の相続では相続税が課税される比率が上昇しました。相続税を心配する方が増えたことを受け、本連載で不動産相続のポイントを解説しました。相続の対象となる不動産といえば、まず対象となるのが親(被相続人)の自宅です。その関連で、最近、変化があったポイントを3つ紹介します。

親の自宅の相続のイメージ画像

「家なき子」と聞くと何を思い浮かべるでしょうか。多くの方は子どもを主人公にした文学やテレビドラマだと思います。それに対して、相続の分野で使われる『家なき子』は、「3年以上自分の持ち家に住んでいない、被相続人(亡くなった人)と別居している相続人の通称です」と相続対策を専門とする東京シティ税理士事務所の熊田俊樹税理士は説明します。

この「家なき子」が、被相続人が自宅として使っていた土地を相続すると、その土地の相続税評価額を、本来の8割減にすることができるというのが、通称「家なき子特例」です。「税額をかなり減らせるので、相続税対策として活用することを想定していた方もいると思います。しかしこの特例に関して、2018年4月1日の税制改正で運用の厳格化が図られましたから、注意が必要です」(熊田税理士)。

被相続人が所有する不動産の評価減としては、「小規模宅地等の特例」が良く知られています。「被相続人が自宅として使っていた土地については、配偶者か亡くなった人と同居している親族が相続した場合、一定の面積までは8割の評価減ができる」というものです。この適用範囲を広げたのが「家なき子特例」です。本来の趣旨は、同居はしていないものの持ち家はない相続人が、被相続人の家を引き継ぎやすくするための特例でしたが、過度な相続対策として活用されているのではないかということで、運用の厳格化が実施されたのです。

孫への相続、名義変更などの方法は認められなくなる

具体的には、次の2つが特例適用の範囲から外れました。
①相続開始前3年以内に、被相続人の3親等内の親族又は被相続人と特別の関係のある法人が所有する国内にある家屋に居住したことがある者
②相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者

①を分かりやすく説明すると、これまで特例適用の要件である持ち家ありなしの判定は「夫婦」で行っていましたが、それが「3親等内の親族」や「特別の関係ある法人」に広げられたということです。これにより、遺言書を作成して、持ち家のない孫に被相続人の自宅を引き継がせるといった方法などで特例を使うことはできなくなりました。

②は、以前、自分が所有していて現在は違う人が所有している家に、その違う人から借りて住んでいる場合、家なき子特例は使えなくなったということです。これは、持ち家を購入済みなのに、その持ち家を親や自分の所有する会社に売却して名義を変えて、特例を使おうとする行為を防ぐのが目的です。

約40年ぶりの民法改正で配偶者居住権新設

「親の自宅の相続を考える上でもう1点、チェックしておきたいのが、『配偶者居住権』の新設です」と熊田税理士は指摘します。まもなく相続に関する民法の見直しが約40年ぶりに行われます。2018年3月に政府は民法改正案などの関連法案を提出しました。その中で注目されるのが、被相続人の死後、残された配偶者を保護するために、配偶者が亡くなるまで今の住居に住めるようにする配偶者居住権が盛り込まれたことです。

現行制度でも被相続人の配偶者は、相続により住居(自宅)の所有権を得ればそのまま住み続けられます。ただ、所有権を得ると預貯金など他の遺産の取り分が少なくなり、生活資金に困る可能性が出てきます。その対策が配偶者居住権の新設です。配偶者居住権は売却などの権利がないので所有権と比べると評価額は低くなります。その結果、預貯金など他の遺産の配偶者の取り分が増え、生活資金に余裕ができます。

「配偶者居住権は相続対策に大きな影響を与える可能性が高いのですが、現状では評価の詳細などが明確になっていません。配偶者の平均余命などをもとに算出されることになりそうですが、所有権と比較してどの程度低くなるのか注目してください」(熊田税理士)。

遺産分割規定の見直しで配偶者を保護する

民法改正では、遺産分割の規定も見直される見通しです。これも注意を払うべき項目です。婚姻期間が20年以上の夫婦の場合、配偶者に住居を生前贈与するか、遺言で贈与の意思を示せば、その住居は遺産分割の対象から外すことができるようになる模様です。現状では、自宅以外の遺産が少なければ、遺産分割のために売却を迫られ、新たに住居を探さなくてはならなくなる恐れさえあることから改正案に盛り込まれました。

こうした民法改正は、長寿化に伴い高齢者の生活を保護する意味があるのですが、まず、配偶者が健在な一次相続では遺産分割の対象となる資産が大きく変わる可能性があります。さらに残された配偶者の遺産が多くなることが考えられますから、二次相続への影響も避けられません。

被相続人の自宅は、相続する資産の中でも大きな比率を占めるケースが多いと思います。それに関連する「家なき子特例」適用の厳格化、「配偶者居住権」の新設、遺産分割規定の見直しは、相続に大きな影響を及ぼすことは間違いありません。熊田税理士は「すでに相続の試算を行い対策に着手した方も、こうした変化を組み込んでもう一度やり直す必要があります。もちろん、その前に被相続人(ご両親)の老後の生活プランも再確認しなければならないので、早めに取り掛かってください」とアドバイスします。

協力・監修

東京シティ税理士事務所:不動産を所有する方の相続と不動産税務を専門とする税理士事務所。35年の歴史を持ち、20人以上の税理士が所属。

※本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

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