
ご両親の逝去。悲しみの中でお通夜、告別式などを滞りなく執り行うことができてほっと一息。そんな後にやってくるハードルが遺産相続です。遺産として残される財産にはかなりの比率で不動産が含まれています。最近は、たとえ長子でも親と同居せずに、持家を購入しているケースが珍しくありません。住む必要がない「実家」が相続財産にあった場合、どうしたらよいのでしょうか。
せっかく実家を相続しても「財産」ではなく「負債」に
実家が地方などにあり、仕事や子育てなどの都合から相続人の中に住む人がいない場合や、誰も借り手がない場合など、空き家にしておくしかないことも増えています。その場合でもさまざまな維持管理コストが発生します。維持管理コストの中の代表的なものが固定資産税と都市計画税です。しかも、2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家対策特措法)」が制定されたため、地方自治体から「特定空家等」とみなされると住宅用地の特例から外されてしまい、土地の固定資産税が一気に6倍にアップしてしまうことさえあります。
建物は使っていないと傷みが早くなるため、定期的な訪問による空気の入れ換えや清掃、点検作業等も必要になります。近隣に迷惑をかけないよう、庭の草刈りや寒冷地の冬場の雪下ろしなど屋外の管理も必要です。実家が遠方だと交通費もかかりますし、何よりこうした負担が気苦労になってしまいます。しかし、建物のメンテナンス費用をかけずに放置しておけば、“廃屋”となり、火災などのリスクが増してしまいます。
メンテナンス費用をなくすため更地にするには、家屋の取り壊し費用がかかります。しかも、家屋を取り壊してしまえば、土地の固定資産税がやはり6倍になってしまい税金の負担が増します。せっかく相続した「実家」なのに、「財産というより負債のようだ…」と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ご実家への愛着もあるでしょうが、ご兄弟や親戚との話し合いの上、売却して所有者の負担を軽減するのも1つの考えです。空き家として放置するより、新たな住まい手の下で使われる方が、その家にとって幸せなことでもあるという考え方もあるかと思います。
住宅用地の特例
住宅の敷地 |
固定資産税 |
都市計画税 |
200㎡までの部分 |
課税標準×1/6 |
課税標準×1/3 |
200㎡超の部分 |
課税標準×1/3 |
課税標準×2/3 |
「特定空家等」として適用される恐れのある空き家の状態
- そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
(国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法」より)
相続のトラブルを避けるために専門家を活用する
上記は相続に当たって、実家の相続人を決めてから、実家を売却する場合の流れです。その前に、いわゆる遺産分割協議により相続全体の同意形成を行わないとトラブルになりかねません。相続に当たっては、相続財産の確認、相続税評価額の計算、相続税納付額の決定といった税務だけではなく、遺言、法定相続、遺留分などの諸条件を踏まえて、関係者全員が納得する財産分割が必要です。
相続の対象となる財産は現金のほか、不動産、動産、有価証券等さまざまな形で残されています。中には換金や評価がしにくいものもあるため、公平な分割ができにくい場合があります。不動産は分割しにくいうえに、価値が明確でないなどトラブルの元となりやすい財産の代表といえるでしょう。ですから、実家をどのように取り扱うのかは、相続の話し合いの中でも、かなりのウエートを占めることになります。
実家の処分も含めて相続トラブルを避けるためには、税理士や弁護士、司法書士などの専門家に相談することがポイントです。プロに依頼することで、一度取り決めた分割内容に不満が出て再び揉めるなどのリスクも抑えることできます。プロの力を借りて、トラブルのない相続を実現してください。
相続に関する相談・依頼先
依頼先 |
主な業務範囲 |
司法書士 |
相続登記、遺言書の検認 など |
税理士 |
相続財産の評価、相続税の申告 など |
弁護士 |
相続トラブルの相談、問題解決、調停等における弁護 など |