【シリーズ連載】30代、40代のうちからしっかり準備を!「後悔しない終活を親子で実現」(第三話「具体的な対応編」)

漫画で見る不動産購入・売却のポイントvol.18

この記事の概要

  •  不動産を売却して現金化すると、相続が発生した時に分配しやすい点がメリット。相続人が複数いるのに自宅しか資産がない、古くてコストがかさむ不動産、空室が多いなど所有しているだけでマイナスになる不動産を所有している場合は売却して現金化しておくことが適しているケースも。
  •  将来を見据えて賃貸住宅への転換なども方法のひとつだが、立地なども加味して建築する必要がある。
  •  売却後の住まいについても早めに検討しておくとよい。特に親が高齢者施設への入所を希望している場合は、どんな手続きが必要でどのくらい時間がかかるのかを知っておくことが大切。

第3話 具体的な対応編

【Cさんファミリー】
夫43歳会社員、妻38歳の共働き夫婦で、日々仕事と10歳と8歳の娘の子育てに奮闘中。5年前に庭付きの一戸建てを35年ローンで購入。

売却して現金化するメリットや適しているケースは?

現金化すると、相続が発生した時に分配しやすいというのがメリットです。いくら親御さんに資産があっても、それが相続人どうしのもめごとの原因になっては残念なこと。例えば、子供3人が相続人の場合で考えてみましょう。被相続人の資産が、『郊外にある自宅』『半分以上が空室の賃貸アパート一棟』『築年数が30年を超える区分所有のマンション』だった場合、「3つあるからそれぞれ好きなものを選べばいい」と言われても全員が納得するわけではありません。評価額が異なればその差額を現金で支払うように言いたくなるでしょうし、半分以上が空室のアパートを相続してもその経営や維持に頭を悩ませてしまう結果にもなりかねません。自分より少しでも条件の良い資産を相続した人をうらやむようになるなど、骨肉の争いに発展してしまう事例も多く、相続が原因でそれまで仲の良かった兄弟が決別してしまうこともあります。
相続人が複数いるのに自宅しか資産がない、古くてメンテナンス費などコストがかかる不動産、所有しているだけでマイナスとなる不動産を所有している場合は、元気なうちに売却を検討し現金化しておくといいでしょう。その現金が、のちのち相続税の支払いなどにもあてられるということもメリットと言えます。

資産を組み換えるという方法

自宅のままではなく、家賃収入の得られる賃貸住宅に資産を組み換えるなども有効な方法と言えます。ただし、賃貸住宅に適していないエリアの場合は、むやみに建築しないということは覚えておきましょう。ニーズがなければ空室が続き、資金繰りが苦しくなってしまうこともあります。親御さんが子や孫の将来を見据えて賃貸経営を考えるなら、売却して適地での経営をすすめるといいでしょう。
不動産が地方にある場合は、ニーズが高く、利便性の高い都心エリアや子供の住まいに近いところにマンションを構え、将来的に賃貸として貸し出すという方法もあります。駐車場などへの組み換えも立地によっては向いていると言えますので、土地の有効活用という面でも検討してみるといいでしょう。

自宅を売却することにした場合。それからの住まいについて

さまざまな対応策について理解はしたものの、まだまだ親は元気だし、先の話と考えていらっしゃる方も多いかもしれません。でも、親が年をとるにつれて、いままで通りの暮らしができなくなる可能性も高くなっているのは事実です。相続でもめたくはないものの、それ以前に親には幸せな人生を送ってもらいたい・・・そんな視点で親御さんが元気なうちに、相続の話と一緒にこれからの暮らし方についても話し合っておきましょう。
もし親御さんがゆくゆくは高齢者向けの施設に入所したいと考えている場合は、元気なうちから情報を集めておくことが必要です。いざというときに施設に空きがないという心配もありますが、手続きなどにも時間がかかるため、希望どおりの施設に入れない可能性も出てきます。どんな手続きが必要でどのくらい時間がかかるのかを知っておくことで、動き始めるタイミングも図れるというもの。一般住宅への住み替えを希望している場合は、資産価値だけでなく、バリアフリーにどれだけ対応しているか、スーパーや医療機関が近隣にあるかなども一緒に確認しておくといいでしょう。

将来を見据えて、早めの行動を

相続というと「揉めないためには」ということがテーマとなりがちですが、親御さんの幸せについてもしっかりと考えていく必要があります。なかなか切り出しにくいテーマではありますが、将来を見据えて、早いうちから取り組んでおくといいでしょう。

執筆

橋本 岳子 (はしもと・たかこ)

20年勤めた不動産情報サービスの会社での経験を活かし、住まい探しが初めての方にも分かりやすい、生活者の目線に立った記事の執筆活動を手がける。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。