ローン金利の低さや支援制度の充実から、2024年は依然買い時
——さて、曹さんとしては、マンションの買い時としての2024年をどうお考えでしょうか。
曹:確かに現在は価格上昇の局面ではありますが、住宅ローン金利のまだまだ低い2024年は、依然住宅購入のタイミングとしてはいい時期かと思います。
金融緩和政策の継続によって、国が引き続き住宅市場を下支えしていることはほとんどの方が認識しているかと思います。一般需要者の借入住宅ローンの金利を見ると、フラット35の金利は2016年に最低水準となった後、若干上昇したものの、全体的には低い水準を維持しています。22年後半からは最低1.5%、最高3%前後の幅で推移しました。23年12月現在のフラット35の最低金利を調べると、返済期間:15年~20年では1.430%、21年~35年:1.910%となっています。この最低金利はフラット35を提供する取扱金融機関各行の最頻金利でもあります。
(図4)【フラット35】借入金利(最低)の推移
出典:(独)住宅金融支援機構「【フラット35】借入金利の推移」
「住宅ローン利用者の実態調査(23年4月)」では、住宅ローンの金利タイプは変動金利が約7割、固定金利が約2割、全期間固定金利が約1割で20年から推移していることから、固定金利より変動金利の変化が住宅市場への影響が大きいことが分かります。なお、主な金融機関の変動金利は0.3%~0.6%を維持しているところが多く、バブル期の8%台の金利と比べると低水準です。今後、金融緩和政策の見直しとともに住宅ローン固定金利はさらに上昇する可能性がありますが、しばらく変動金利は低位に推移すると予想されており、2024年も超低金利が一定の下支えになるでしょう。
住宅ローン減税など、持ち家取得のための支援制度も2024年は引き続き用意されています。また、ダブルインカムの共働きカップルは、女性が出産で休む時期があるかもしれませんが、産休・育休後に会社に戻りやすい仕組みができつつあり、こういう制度が住宅取得の後押しになっていきそうです。今ではペアローン商品も充実しています。
——上手なマンションの選び方があればアドバイスをお願いします。
曹:先程から申し上げていますが、新築は価格が相当高く、その割に専有面積は少し狭めになっており、割高な状況が続きそうです。開発コストの上昇もあって、デベロッパーが値下げしてまで売る要素は今のところ見当たりません。
ただ、中古住宅は、売り主の多くが個人であり、場合によっては早めに現金を手にしたい事情などもありますし、新築と比べて値下げ交渉の余地があります。新築より価格が安いことや、物件選びのエリアから価格まで選択肢が多いことから、中古マンションは引き続き狙い目かと思っています。
また、持ち家の購入は、結婚や子育てなど、自分たちの人生のライフイベントというタイミングに合わせて手に入れるものでしょうから、あまり値下げのタイミングを待つのでなく、必要な時期にできるだけよい条件で手に入れればよいのではないでしょうか。ただ、高い買い物ですし、ローンの返済も何十年にわたるわけですから、ご自分たちの生活をきちんと見つめて、条件に合ったマンションを購入していただきたいですね。
——市況に一喜一憂せず、必要な時に必要な住まいを手に入れようということですね。
曹:ただ、資産性は意識してください。マンションは戸建てより市場流通性が高く、将来売却しやすいストックともいえます。したがって、自分たちが暮らすための消費財にせず、耐久財としての資産価値の部分も意識してほしいですね。
室内はリフォームなどでグレードアップできますが、駅からの距離などは物理的に変えられません。利便性はご自分たちの暮らしやすさにもつながっていきます。将来住み替えのための売却の可能性もあるわけですから、ただ安いだけでなく、価値ある物件を選んでほしいと思います。