住宅・非住宅を問わず、近年は新築の建築物の価格が大幅に上昇しています。新築一棟物件についても、記録的な上昇が継続しており、購入検討の際の大きなハードルとなりつつあります。不動産市況を俯瞰する指数の1つである「不動産価格指数」からも、近年の急激な上昇ぶりが見て取れます。
(表2)不動産価格指数(商業用不動産、全国平均)
出典:国土交通省「不動産価格指数(住宅および商業用不動産)」(2022年第4四半期分・季節調整値)
「不動産価格指数」とは、2010年平均を基準(100)に設定し、不動産の種類別に月々の価格推移について国土交通省が公表するものです。商業用不動産(店舗、オフィス、倉庫、工場、マンション・アパート(一棟)、商業地、工業地)の中でも、「マンション・アパート(一棟)」は2022年第4四半世紀分(10-12月)において、全国平均で157.7と最も高い指数を示しています。
(表3)地域別不動産価格指数(マンション・アパート(一棟))*2022年第4四半期分
地域 |
全国平均 |
三大都市圏
平均 |
三大都市圏
以外平均 |
南関東圏
(東京・神奈川・千葉・埼玉) |
東京都 |
大阪府 |
愛知県 |
不動産価格指数 |
157.7 |
155.8 |
163.8 |
154.3 |
158.4 |
165.5 |
145.7 |
地域 |
不動産価格指数 |
全国平均 |
157.7 |
三大都市圏
平均 |
155.8 |
三大都市圏
以外平均 |
163.8 |
南関東圏
(東京・神奈川・千葉・埼玉) |
154.3 |
東京都 |
158.4 |
大阪府 |
165.5 |
愛知県 |
145.7 |
出典:国土交通省「不動産価格指数(住宅および商業用不動産)」(2022年第4四半期分・季節調整値)
こうした数字は、大都市に限った傾向ではないようです。上記の「157.7」という数値は全国平均ですが、三大都市圏平均(155.8)より、それ以外の平均(168.3)の方が高いことからも、全国的な傾向と言えそうです。2023年3月に国土交通省が発表した「令和5年地価公示」でも、コロナ禍で落ち込んでいた地価が全国的に上昇していることが確認できます。
賃貸物件の家賃も同様に上昇すればいいのですが、2010年から賃料平均は1.5倍にまではアップしていません。つまり、投資物件の調達コストの大幅上昇が利回りの低下につながり、投資計画に大きく影響しているのです。
優位点、課題、投資計画…中古一棟マンションは多面的に検討できる
新築物件が価格高騰していく中、その存在価値を高めているのが中古一棟投資マンションです。新築より価格が低く、将来の売却価格差も新築より少ないなど、新築物件にはないさまざまなメリットがクローズアップされています。
中古一棟投資マンションの優位点(例)
・価格面で新築物件より割安である
・既に一定の入居が付いている⇒稼働率や目標利回などが検討しやすい
・収益改善コストが具体的(テコ入れコストが見える)
・売却価格(キャピタルゲイン)が購入価格と大きく変わらない
|
中古物件の優位点は、既に各戸が賃貸物件として賃貸市場に流通しており、地域における需要が可視化されていること。つまり、中古一棟投資マンションは現状の優位性や課題が明確になっているわけです。新築物件の場合、各戸の賃料も一棟全体での入居率も「想定」でしかありませんが、中古物件は実際の数字イコール成績なので、販売価格が妥当か、期待通りの利回りが確保できそうかなど、投資運用におけるシミュレーションが具体的になります。これは新築物件にはない大きなアドバンテージです。
中古物件は、同じ築年や似た仕様であっても、メンテナンスなどによってコンディションや価格、表面利回りが大きく異なります。それだけに自分の投資スタイルにフィットした物件を調達することで、運用の面白さ、やり甲斐、利回りの高さなどにつなげられます。
克服すべき課題はありますが、修繕、模様替え、DIY、設備交換、本格リフォームなど、さまざまな方法による各戸の魅力付けやグレードアップが可能です。投資額についても、少額から本格的な資金投入までバリエーションが多く、その自在性ゆえ、想定利回りを高くも低くもコントロール可能です。
新築は確かに魅力的です。それに対して、中古一棟投資マンションは購入時のコンディションチェックや、地域の賃貸事情に合わせて最適化するための取り組みが欠かせません。しかし、手間をかける分、物件の優位性を磨き、課題の克服によって、より高い利回りの獲得が期待できます。それは、一棟マンション投資の本来の妙味とも言えるのではないでしょうか。