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東京圏、大阪圏における新築分譲マンションの市場動向New

みずほ不動産販売 不動産市況レポート 12月号

この記事の概要

  • 新築分譲マンション発売戸数は、東京圏※1では2023年度上期に前年度同期から4.6%減少、大阪圏※1では同15.9%減少した。
  • 同発売平均価格は、東京圏では港区や千代田区での高額物件の発売により大きく上昇した。大阪圏ではコロナ下の2020年度からの上昇基調が続いている。
  • 発売戸数の先行指標である同着工戸数は、東京圏、大阪圏ともに減少傾向であり、発売戸数は今後も低水準が続くとみられる。

1)東京圏、大阪圏における新築分譲マンションの発売戸数や平均価格等の動向

2023年度上期(2023年4月から2023年9月)の新築分譲マンション発売戸数は、不動産経済研究所の調べによると、東京圏では11,712戸で、埼玉県や神奈川県の減少率が大きく、前年度同期から4.6%減少した[図表1]。大阪圏では6,352戸で、和歌山県や神戸市部の減少率が大きく、同15.9%減少した。東京圏、大阪圏ともに近年の年度上期では新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年度に次ぐ低水準となった。資材高や工事現場の人手不足で建設コストが膨らみ、郊外を中心に事業の採算が合わないケースが増えたといわれている。

新築分譲マンションの発売平均価格※2は、東京圏では港区や千代田区で平均坪単価が1,000万円を超える物件が複数発売されたことにより、2023年3月以降、大きく上昇しており、2023年9月(12カ月後方移動平均値)は7,688万円であった[図表2]。大阪圏ではコロナ下の2020年度から上昇基調が続き、同4,802万円であった。

2020年度頃から上昇基調であった新築戸建て住宅価格※2については、2023年度上期は東京圏、大阪圏ともに上昇に一服感がみられた[図表2]。東京圏では、新築分譲マンション価格の大きな上昇もあり、前年度まで縮小していた新築分譲マンションと新築戸建て住宅の価格差が再拡大した。新築戸建て住宅は、在宅勤務の拡大に伴う特需が価格の高騰等により終焉し売れ行きが悪くなったといわれているが、相対的な値頃感から需要低迷が底打ちする可能性がある。

  • ※1:東京圏は、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県。大阪圏は、大阪府、兵庫県、京都府、奈良県、滋賀県、和歌山県
  • ※2:月次の推移。季節要因を含め短期変動を除き、傾向を分かりやすくするため12カ月後方移動平均にしている。

[図表1]新築分譲マンションの発売戸数 東京圏(左)、大阪圏(右)

[図表1]新築分譲マンションの発売戸数 東京圏(左)、大阪圏(右)

データ出所:不動産経済研究所「首都圏・近畿圏新築分譲マンション市場動向」

[図表2]新築分譲マンションの発売平均価格等 東京圏(左)、大阪圏(右)

[図表2]新築分譲マンションの発売戸数 東京圏(左)、大阪圏(右)

データ出所:不動産経済研究所「首都圏・近畿圏新築分譲マンション市場動向」、
東日本不動産流通機構「Market Watch」、近畿圏不動産流通機構「マンスリーレポート」

2)東京圏、大阪圏における分譲マンション着工戸数等の動向

発売戸数の先行指標である分譲マンションの着工戸数※3は、東京圏では2013年度以降の減少基調が続いており、超高層マンション等の一部タイプを除き※4、発売戸数全体は今後も低水準が続くとみられる[図表3]。大阪圏では2012年度以降1,700戸から2,300戸程度のレンジで増減してきたが、直近は2,000戸前後で頭打ちとなっており、今後の発売戸数の動向は東京圏と同様と考えられる。

一方、賃貸マンションの着工戸数※5は増加基調で、2021年度中から東京圏、大阪圏ともに分譲マンションを上回っている[図表3]。価格の高騰により分譲マンションの購入を見送ったファミリー層が増え、賃貸マンションの賃貸需要が高まっているといわれている。また、用地費・建築費が上昇、開発素地が不足する中、賃貸マンションは相対的に販売コストがかからず、開発用地の選択肢が多いこと※6から、分譲から賃貸へマンションの開発がシフトしているとみられる。

  • ※3:12カ月後方移動平均値による月次の推移。住宅着工統計の分譲住宅、共同住宅、RC造、SRC造、S造と定義した。
  • ※4:下記のコラム参照
  • ※5:12カ月後方移動平均値による月次の推移。住宅着工統計の貸家、共同住宅、RC造、SRC造と定義した。木造やS造等のいわゆるアパートは含めない。
  • ※6:規模が小さいことや線路に隣接している等の立地条件等から分譲マンションでは開発が難しい土地でも賃貸マンションなら開発が可能な場合があるといわれている。

[図表3]分譲マンションと賃貸マンションの着工戸数 東京圏(左)、大阪圏(右)

[図表3]分譲マンションと賃貸マンションの着工戸数 東京圏(左)、大阪圏(右)

データ出所:国土交通省「住宅着工統計」

東京圏における超高層マンション供給の長期推移

東京圏における超高層マンション※7の完成戸数の長期推移をみると、供給が本格化するのは2000年以降で[図表4]、東京都区部における定住人口の回復(都心回帰)の手段として、行政が容積率の緩和をインセンティブにした民間住宅の開発促進策を講じたことや建設技術の進歩(高強度コンクリートの開発)等が増加要因といわれている。供給のピークは2007年の23,313戸で、その後は減少基調だが、2025年には東京オリンピック・パラリンピック選手村跡地での地上50階の分譲マンション2棟(1,455戸)の完成等で計19,386戸の完成が予定されており、2008年に次ぐ過去3番目の水準の供給が見込まれている。

  • ※7:20階以上の分譲もしくは賃貸マンション。ただし、2001年以降の分譲比率(分譲マンション戸数/全体戸数)は7割以上で、2012年以降は概ね9割以上で推移しており、2022年に完成した物件は全てが分譲マンションであった。

[図表4]東京圏の超高層マンション完成(予定)戸数の推移

[図表4]東京圏の超高層マンション完成(予定)戸数の推移

データ出所:不動産経済研究所「超高層マンション動向2023」(2023年3月末時点判明分)

発    行:みずほ不動産販売株式会社 営業統括部

〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル

レポート作成協力:株式会社都市未来総合研究所 研究部

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