不動産にまつわる税制、2024年度も比較的手厚くNew

税制改正大綱に関するトピックス

この記事の概要

  • 2023年12月14日、2024年度の税制改正大綱が発表されました。大綱は2024年2月に国会に提出され、3月末日までに成立し、新年度の24年4月より実施される予定です。1人あたり4万円の定額減税が盛り込まれたことでも注目されていますが、住宅購入や住み替えを検討している方にとってどのようなメリットがあるのか、改正の主なポイントについて東京シティ税理士事務所の村岡清樹氏にうかがいました。
    *法案成立(2024年3月)の際、改正内容について変更になる場合があることをお含み置きください。

不動産にまつわる税制、2024年度も比較的手厚く

2023年度の優遇制度の多くを延長しつつ、細部は改正も

2023年12月14日に発表された、2024年度の税制改正大綱。個人を対象とした不動産売買や、相続、贈与などに関連する項目について、当初2023年度で終了する税制も噂されていましたが、概ね2023年度の内容を踏襲していると東京シティ税理士事務所の村岡氏は解説します。

「住宅の取得に関する税の軽減措置については廃止になったものはありませんでした。ただし、軽減措置を受けるための要件が変更され、2023年度より厳しくなったものもあります」(村岡氏、以下同)

2024年度の税制改正大綱の大きな特徴として、村岡氏は『子育て世帯・若者夫婦世帯への優遇』と『省エネ性能の高い住宅づくりへの誘導』の2点を挙げました。これらは、2022年の『こどもみらい住宅支援事業』や2023年の『こどもエコすまい支援事業』などの施策を踏襲したものともいえます。

「子育て世帯・若者夫婦世帯への支援については、2024年度の目玉となる所得税などの定額減税をはじめ、生命保険料控除の優遇などに加えて、住宅購入や住宅改修などについても手厚く拡充されています。また、国は2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、家庭部門のCO2排出量削減を掲げており、省エネ性能の高い住宅に対する優遇が2023年以上に明確になっています」

では、住宅購入や、持ち家のリフォーム等による性能向上などに対する減税のポイントについて見ていきましょう。

【住宅ローン減税】借入限度額引き締めも、若者世帯に配慮

住宅購入資金として、多くの方が利用する住宅ローン。この住宅ローンを借り入れて住宅の新築や取得、また持ち家のリフォームなどを行った場合、年末のローン残高の0.7%を所得税(一部、翌年の個人住民税)から最大13年間控除するというのが基本的な仕組みです。ローン金利の負担を軽減してくれる支援制度のため、住宅取得意欲の喚起につながっており、2025年度までの延長が決まっていますが、2024年度は新築住宅や買取再販物件の借入限度額について前年度より低くなってしまいました。

長期優良住宅や低炭素住宅は限度額が5,000万円までだったものが4,500万円に、ZEH水準の省エネ住宅は4,500万円から3,500万円に、省エネ適合住宅は4,000万円から3,000万円に引き下げられました。その他の住宅については、2023年度まで3,000万円だったものが、2024年度はゼロと減税の恩恵を受けられません(ただし2023年中に新築の建築確認を受けていた場合又は2024年6月30日以前に建築された場合は2,000万円まで)。新築でありながら、省エネ性能の足りない住宅については支援していかないと明確に打ち出しています」

ただし、これらの限度額について緩和されるケースもあります。それが、『子育て世帯・若者夫婦世帯』に対する限度額の緩和です。『子育て世帯』とは『19歳未満の子どもをもつ世帯』、『若者夫婦世帯』は『夫婦のいずれかが40歳未満の世帯』と規定されています。

(表1)住宅ローン控除の住宅ローン借入限度額(2024年入居の場合)

住宅の種類 一般 子育て世帯・
若者夫婦世帯
控除期間
新築住宅 長期優良住宅・低炭素住宅 4,500万円 5,000万円 13年
ZEH水準省エネ住宅 3,500万円 4,500万円
省エネ基準適合住宅 3,000万円 4,000万円
その他の住宅 0円
(2023年までに新築の建築確認:2,000万円)
10年
既存住宅 長期優良住宅・低炭素住宅
ZEH水準省エネ住宅
省エネ基準適合住宅
3,000万円 3,000万円 10年
その他の住宅 2,000万円 2,000万円

「子育て世帯や若者夫婦世帯が新築住宅を取得する場合、2023年度と同様の限度額となっており、一般の方より限度額が500〜1,000万円高くなっています。控除期間は13年ですが、新築でも『その他の住宅』には適用されません。また、既存(中古)住宅についても適用されません」

村岡氏はまた、床面積要件が、これまで50㎡以上だったものが、今回2024年中に建築確認を受けたものについては40㎡以上に緩和され、より多くの住宅で適用されやすくなったことも大きなトピックと語ります。

「都市部で駅近のマンションなど、比較的コンパクトな物件だと専有面積50㎡を切る物件も多くありますが、ファミリー向け物件でなくても恩恵を受けられるようになります。所得要件として1,000万円以下であることとしており、こうした緩和措置は、若者・子育て世帯に向けての支援にもなるものと言えそうです」

【贈与税】非課税枠が延長されるも、要件は厳しめに

住宅価格の高騰や、物価の上昇、年収の低下など住宅取得環境が悪化する中、住宅取得のための負担を軽減し、良質な住宅の普及を促進するため、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置等が3年間延長されました。ただ、ここでも省エネ性能の高い住宅と一般住宅とでは、非課税限度枠に差が付けられています。

(表2)住宅取得等資金に係る贈与税の非課税限度枠

質の高い住宅 一般住宅
非課税限度額 1,000万円 500万円
床面積要件 50㎡以上
*ただし合計所得金額が1,000万円以下の受贈者に限り、40㎡以上50㎡未満の住宅についても適用

こうした差は2023年度も付けられていましたが、2024年度は、この『質の高い住宅』という規定について、新築については2023年度より厳しくなっています。

(表3)「質の高い住宅」の要件

新築住宅 既存住宅・増改築
  1. ①断熱等性能等級5以上かつ
    一次エネルギー消費量等級6以上(注)
  2. ②耐震等級2以上又は免震建築物
  3. ③高齢者等配慮対策等級3以上
  1. ①断熱等性能等級4又は
    一次エネルギー消費量等級4以上
  2. ②耐震等級2以上又は免震建築物
  3. ③高齢者等配慮対策等級3以上

(注)2023年中に新築の建築確認を受けていたとき又は2024年6月30日以前に建築されたものであるときは断熱等性能等級4以上又は一次エネルギー消費量等級4以上(従来通りの基準)

「2024年度は新築と既存住宅とで、対象となるマンションの住宅性能に差が付けられました。実は、2024年度の既存住宅の規定が、2023年度は新築・既存住宅双方の適用条件だったのですが、新築については1〜2ランク高くなりました。これも新築住宅について、カーボンニュートラルを意識した高い省エネ性能への誘導と言えるかと思います」

制度活用で高品位な住宅を上手に手に入れたい

その他、住宅の取得や持ち家のリフォームなどに活用できそうな減税制度を一覧としてご紹介します。

(表4)税別に見た、住宅購入・改修に関する2024年度税制改正の主なポイント例

対象となる税 項目 2024年度のトピック 対象となる住宅
新築
住宅
既存
住宅
持ち家
所得税・
個人住民税
住宅ローン控除
  • ・控除限度額の変更(一部引き下げ)
  • ・床面積要件の緩和(50㎡⇒40㎡以上)
既存住宅の耐震改修等に係る税額控除
  • ・子育て対応改修の追加
  • ・耐震・省エネ・バリアフリー改修等の税額控除
特定の居住用財産の買換え等に係る特例措置
  • ・適用期限の延長
居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
  • ・適用期限の延長
認定住宅等の新築をした場合の所得税額の特別控除
  • ・適用対象者の合計所得要件の引き下げ
    (2000万円以下)
贈与税 住宅取得等資金の贈与税非課税
  • ・新築の「質の高い住宅」となる対象住宅について、省エネ等級の引き上げ
住宅取得等資金の贈与税の相続時精算課税の特例
  • ・適用期限の延長
印紙税 工事請負契約書及び不動産譲渡契約書の印紙税の軽減措置
  • ・適用期限の延長
登録免許税 登録免許税の軽減
  • ・以下についての適用期限の延長
  • *住宅用家屋の所有権の保存登記等の税率軽減
  • *個人が買取再販住宅を取得した場合の税率軽減
  • *認定低炭素住宅の所有権の保存登記の税率軽減
  • *認定長期優良住宅の所有権の保存登記の税率軽減
不動産取得税 不動産取得税の軽減
  • ・以下についての適用期限の延長
  • *宅地の課税標準を1/2にする特例
  • *土地及び家屋の取得に係る税率軽減
  • *住宅用土地の先行取得に係る新築期間の特例
  • *認定長期優良住宅の新築等の軽減
固定資産税・
都市計画税
固定資産税の軽減
  • ・以下についての適用期限の延長
  • *住宅の新築の軽減
  • *認定長期優良住宅の新築の軽減
  • *耐震改修等の軽減
固定資産税・都市計画税の軽減
  • ・現行の負担調整措置の継続

住宅の購入はもちろん、買い替えや持ち家のリフォームなど、多岐にわたる減税制度は、住宅ストック市場全体の性能向上につながっていくものでもあると村岡氏は語ります。

「住宅の取得に伴う登録免許税や不動産取得税、固定資産税の税額軽減や税率軽減は、住宅購入検討者にとってありがたいもので、持ち家の取得者を増やすための誘導施策と言えるかと思います。ただ、省エネ性能の要件がアップしたことで、ハードルが高い方向に振られているかな、という気もします。高い性能のためには当然コストがかかりますから、住まいがより高額なものになったりもします。その分ローン控除の恩恵も大きいとはいえますが、とくに若い世帯など、年収と返済のバランスをよく考えて、上手な家選びをしてほしいと思います」

協力・監修

東京シティ税理士事務所:不動産を所有する方の相続と不動産税務を専門とする多数の税理士が所属する税理士事務所。

取材

谷内 信彦 (たにうち・のぶひこ)

建築・不動産ライター / 編集者。主に住宅を中心に、事業者や住まい手に向けて暮らしや住宅性能、資産価値の向上をテーマに展開している。近年は空き家活用や地域コミュニティーにも領域を広げる。著書に『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP・共著)

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2024年1月31日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。