住み始めてから起きるトラブルのダメージを減らそう

思わぬ落とし穴に注意!住宅売買トラブルに注意(第2回)

この記事の概要

  •  立地や間取り、内装、価格など、納得して購入したはずの新居。しかし、いざ住み始めると、思わぬところに雨漏りがしたり、住宅機器が動かなかったりするなど、様々なトラブルに遭遇することがあります。「こんなはずではなかった…」と後悔するだけでなく、修繕には費用もかかります。今回はそのような住み始めてから起こるトラブルへの対策をご紹介します。

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住宅購入トラブルを防ぐためのポイント、前回は「重要事項説明」の大切さについて紹介し、物件概要や契約条件等の各項目について理解することや、そのためにも懇切丁寧な説明や対応をしてくれる不動産会社を選ぶことの大切さを取り上げました。

今回は、住宅購入した方が、住み始めてから気づくことが多い不満や不具合から生じるトラブルを紹介して、そのリスクを減らす対策を考えていきます。

売主の「瑕疵担保責任」は期間が短いことがほとんど

建物の目に見えない部位の傷みや機器の故障、使い勝手の悪さ…。購入前の内見時にどんなに念入りなチェックを行っても、住み始めてみないと気づかない不満や不具合は必ずといっていいほど出てきます。

これらの問題は、全て買主の自己責任として、自費で対応しなくてはならないのでしょうか。そうではありません。売主に責任があると考えられる原因に起因するもののなかには、補修の請求等が可能なケースが多々あります。

「瑕疵担保責任」という言葉をご存じでしょうか。瑕疵とは、本来備わっているべき性能や品質等がきちんと備わっていないこと。中古住宅における瑕疵としては、基礎や柱、梁など建物の構造上重要部分や、室内に雨水侵入を防止する屋根や外壁などに重大な欠陥があることなどが挙げられます。例えば、天井裏の雨漏りや床の傾きなどは、売主に無償での修繕を求めることができる可能性の高い瑕疵です。

ただし、瑕疵担保責任の期間は、物件ごとに違っているのが実情です。「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」により、新築住宅は事業者が引き渡し後10年間「瑕疵担保責任」を負っています。ところが中古住宅は品確法の対象になっていないのです。

民法の規定では、その瑕疵を知った時から1年以内であれば損害賠償請求等が可能とされているため、中古住宅でもこの適用が原則的には可能ですが、実際は契約上に期限が定められていることがほとんどです。特約事項として、瑕疵担保責任について「引き渡し後数カ月以内」となっていたり、時に「免責」となっていたりするケースも見られます(ただし、宅建業者が自ら売主となっている場合、2年以上の瑕疵担保責任期間が義務付けられています)。

なお、瑕疵担保特約においても、対象となる部位が限定されていることも多いようです。雨漏りや構造部・給排水管の不具合といった、建物の基本性能については多くの場合瑕疵担保責任の範囲とされますが、設備や内装の不具合等については免責=買い主の自己負担となっているケースも多いので、契約書を確認いただくと共に、内見時に念入りにチェックして自衛しましょう。

「かし保険」は売主・買主双方のリスクを軽減する

中古住宅の瑕疵担保による保護が不十分であれば、購入に及び腰になる可能性があります。また売主側にしても、売却後時間が経ってから「瑕疵があった!」と補修や損害賠償等の請求を求められる可能性があれば、売却する気持ちが萎えてしまいかねません。こうして中古住宅が市場に出回りにくくなることは、売主・買主双方にとってメリットがありません。

そこで現在、中古住宅購入の際には、国の認可を受けた保険法人が万一の不具合を補償してくれる「瑕疵担保責任保険(かし保険)」への加入が注目されています。かし保険の対象となる部位は以下になります。

既存住宅向けかし保険の主な保険対象部分 *個人間売買(売主が個人の場合)

保険対象部分 保険支払いの対象となるケース
標準付帯 構造部 構造上重要な部分が基本的な耐力性能を満たさない場合
防水(雨漏り) 雨水の浸入を防止する部分が防水性能を満たさない場合
オプションまたは保険商品ごとに取り扱いが違う(特約) 給排水管路 給排水管路が通常有すべき性能や機能を満たさない場合
引き渡し前のリフォーム工事 引き渡し前に行ったリフォーム工事の全ての部位について、社会通念上必要とされる性能を満たさない場合
給排水管路+引き渡し前のリフォーム工事 給排水管路が通常有すべき性能や機能を満たさない場合+引き渡し前に行ったリフォーム工事の全ての部位について、社会通念上必要とされる性能を満たさない場合

かし保険に加入することで、対象部位に万一トラブルが発生した場合、一定額の保険金(選択する保険のコースによって上限があります)が支払われます。また、トラブルの際、(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターが運営する「住まいるダイヤル」への相談でも、かし保険の対象住宅として適切なアドバイスが受けられます。

かし保険は保険法人に直接申し込むのでなく、保険法人が指定する「検査事業者」に依頼します。検査事業者が引き渡し前に検査を行ったうえで保険法人と保険契約を結びます。つまり検査事業者が保障者となり、不具合が見つかったら補修や損害賠償等の請求も検査事業者に行います。万一契約後に検査事業者が倒産した場合は、保険法人に直接請求できます。

インスペクションで入念な事前チェックを

かし保険に頼らず、事前の建物チェックを建築のプロに依頼し、入念なコンディションチェックを行う方法も、後々のトラブル防止に有効です。かし保険加入時にも検査事業者が中古住宅の建物検査を行いますが、あくまで保険のための検査ですから、検査内容は限定されています。

そこで有効なのが購入前のホームインスペクションです。建築士など建物に精通した診断士に、第三者的な立場から建物の劣化状況や欠陥の有無等をチェックすることを依頼します。その際に改修すべき箇所があれば、部位やおおよその費用目安も示してくれます。

ホームインスペクションは天井裏や床下など、住まい手がチェックできない箇所も検査しますので、購入しようとする建物の現状性能を正しく判断できます。最近は売主や仲介役の不動産会社が費用負担してインスペクションを行った中古物件も徐々に増え始めています。ただ、後々のトラブルを避けるためには、買主が自費でインスペクションを依頼するくらいの気持ちが必要です。特に一戸建ては、マンションと違って構造部も自分たちだけでの維持管理が必要になりますから、正確なコンディションチェックのためのインスペクションをおすすめします。

以上、中古住宅を購入し、住んでからのトラブル対応についてまとめると、以下のようになります。

  • 購入後に見つかった隠れた瑕疵については、「瑕疵担保責任」として売主に請求が可能。
    (当事者間の調整で契約内容が変わる場合あり。)
  • ただし中古住宅の場合、請求期限は短いので、不安であれば「かし保険」の利用も検討したい。
  • そもそも事前に住まいの欠陥がないか、購入前にホームインスペクションの実施も有効。

住宅は、実際に暮らしてみて初めて気づく不満や不具合が多々あります。それがリフォームした内装のイメージの思い違いなどではなく、安心、安全や家族の健康に関係することだったら大変です。そのすべて買主の責任になり、解消するための費用を負担することになれば、ローンの返済にも影響してしまいます。そのようなことにならないように、かし保険やインスペクションでリスクを軽減しておくことを考えておきましょう。

執筆

谷内信彦 (たにうち・のぶひこ)

建築&不動産ライター。主に住宅を舞台に、暮らしや資産価値の向上をテーマとしている。近年は空き家活用や地域コミュニティにも領域を広げている。『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP社・共著)

※ 2017年11月30日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。

※本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

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