省エネリフォームで快適性アップと光熱費削減を目指そう

中古+αで住まいの満足度アップ(第3回)

この記事の概要

  •  中古住宅が新築住宅に劣っている点として、「省エネ性能」があります。「省エネ性能」が低い住宅に暮らしていると、生活の満足度は低くなり、水道光熱費も高くなるようです。省エネ性能を高めるポイントは「断熱性の向上」と「高効率設備」の導入です。開口部のリフォームや住宅設備機器の更新で「省エネ性能」を向上させ、日々の暮らしの質を向上させてください。

前回取り上げた耐震性能とともに、住まいの基本性能として欠かせないのが省エネルギー性能(以下「省エネ性能」)です。「省エネ性能」を高めれば、住まう方の日々の快適性も高まるものといえます。

「省エネ性能」が低めの住宅に暮らすと以下のような様々な我慢や不便を強いられるようです。壁紙を貼り替えたり、塗装をやり直したりして見た目はきれいにしても、毎日このような問題を感じていては満足度が非常に低くなります。

「省エネ性能」が低い住宅に暮らした際の問題点の例

  • 部屋が夏場暑い、冬場寒い
  • 冷暖房機器の効きが悪い
  • 壁が湿ったり、カビが生えたりする
  • 窓の内側付近に水滴がつく(結露)
  • 部屋ごとに温度差がある
  • トイレや浴室、廊下などが寒い
  • 夜、寝苦しい
  • 毎月の水道光熱費が高めになる

室内の温度調整にはエアコンやストーブなどの冷暖房装置を用いることが多いかと思いますが、これらは電力などのエネルギーを使用し、光熱費というコストがかかります。この費用を抑えるためには、建物本体がエネルギー消費を抑えるための性能を持ち合わせていることが必要です。

実は、国は省エネ法(正式名称:エネルギーの使用の合理化に関する法律)という法律の「住宅の省エネルギー基準」によって、新築住宅について一定基準以上の省エネ性能付与をつくり手に要請しています。しかしこれらはあくまで努力目標に過ぎず(2020年からは義務化)、現状では、全ての住宅が高い「省エネ性能」を備えているわけではありません。

住まいの省エネ基準はこれまで数度にわたって改正されてきました。国土交通省の推計によると省エネ基準別の既存住宅の比率は下のグラフのようになっています。それなりに省エネレベルが高い平成11年基準の住宅は5%しかありません。ある程度の省エネを取り入れている平成4年基準や昭和55年基準がそれぞれ19%と37%。それ以前の「省エネ性能」の非常に低い建物が4割もあるのです。つまり、中古住宅の多くは現在の基準から見れば十分な「省エネ性能」を満たしていないことになります。

省エネ基準から見た既存住宅の比率

省エネ基準から見た既存住宅の比率

(総務省「平成20年住宅・土地統計調査」をもとに、国土交通省推計)

「省エネ性能」を高めるためのリフォームには、住まう方の日々の快適性を高めたり、ランニングコストを低く抑えたりといった、多くのメリットがあります。湿気の排除は建物構造部の劣化を少なくすることにもつながります。快適な新生活を送り、建物の寿命を延ばすためにも、中古住宅購入の際にはぜひ「省エネ性能」を高めたいものです。

では、「省エネ性能」を高めるためには、どのようなリフォームが必要なのでしょう。さまざまな方法がありますが、中でも重要なのは「建物の断熱性能を高める」ことと「高効率な設備機器を導入する」ことです。これらについてご説明していきましょう。

「断熱性の向上」のポイントは窓のリフォーム

まずは「建物の断熱性能を高める」。断熱性能の向上は、建物内を外気の暑さ・寒さから守り、最小限の冷暖房機器で快適な室温を保持するために必須です。いわば、「夏涼しく冬暖かい家」にするための必要性能です。「家のつくりやうは夏を旨とすべし(徒然草)」とあるように、高温多湿の日本では古来から通風性を重視して住宅設計されてきました。しかし、近年の住宅は断熱性を高める方法が一般的になっています。

既存住宅の断熱性能を高めるためには、屋根や壁、天井や床下など、室内を断熱材などでくるむのが一般的です。中でもとりわけ効果的なのが、窓(開口部)の断熱性能を高めることです。一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会の資料によると、開口部から、冬の暖房時は58%の割合で熱が流出し、夏の冷房時(昼)は73%の割合で熱が入ってきます。家の中で、熱の出入りが一番大きいのが窓なのです。

窓のリフォームとしては、「既存の窓をサッシ枠ごと更新する方法」、「サッシ枠を生かして機能性の高いガラスに更新する方法」、そして「現在の窓はそのまま、内側に新たに窓を追加する方法」などがあります。

1番目の「既存の窓をサッシ枠ごと更新する方法」は、省エネ効果の高いサッシ枠に複層ガラスを入れた、断熱性能の高い窓への交換になります。サッシ枠は熱伝導率の低い樹脂製や木製を採用し、ガラスも複層(ペア)になりますから、他の方法より高い断熱性能が期待できます。

2番目の「サッシ枠を生かして機能性の高いガラスに更新する方法」は、既存の窓枠に機能ガラスを取り付け、断熱性能を高める方式。現状は単板ガラスの窓枠でも、アタッチメントを取り付けることで複層ガラスへの交換も可能です。サッシがそのままの分、まるごと交換よりも断熱性能は低めですが、スピーディに工事でき、コストも低めです。

最後の「現在の窓はそのまま、内側に新たに窓を追加する方法」は、マンションでよく行われるリフォームです。というのは、分譲マンションの開口部は一般的に「共用部」として取り扱われ、勝手に交換やリフォームできません。そこで、既存の開口部の内側に新たに窓を設ける「インナーサッシ」の増設が有効なのです。ちなみに、管理組合規約で開口部の交換を認めている(許可、届け出など)マンションもありますので、確認しましょう。

断熱性能とセットで考えたいのが気密性能の向上です。気密性能は「すき間の少なさ」で、熱の流入・流出を最小化するために欠かせない性能です。部屋が密閉されていく分、換気対策と併せてのリフォームが効果的です。

水回りに高効率な設備機器を導入する

住まいの構造部に手をかけず設備機器の更新によって「省エネ性能」を高めることもできます。「省エネ性能」を高める設備機器の代表が給湯器ですが、こちらは「ガス?電気?ハイブリッド?最新給湯器でエネルギー節約」がありますのでご参照ください。

水まわりの設備機器には、ほかにも「省エネ性能」を高めるものが続々登場しています。例えば、近年のシステムバス(ユニットバス)は保温性に優れ、バスタブに張ったお湯が冷めにくかったり、冬場でも洗い場でのひんやり感を緩和させたりするつくりになっています。お風呂場の省エネ機器としてはシャワーもかなり進歩しています。空気を混入しながら吹き出すようにすることなどで、水の使用量を減らしているのです。

最近のトイレ(便器)は、洗浄に使う水量が少ない節水タイプが主流です。以前の便器の数分の1で済むようになっていますから、水道の利用料はかなりの削減が期待できます。

水栓金具(蛇口)の交換も省エネになります。最近のキッチンにつける混合水栓(お湯と水をミックスする蛇口)は、吐水レバーの操作位置が従来と違ったタイプが販売されています。従来のタイプはレバーをもっとも端に動かすと水だけが出て、逆の端に動かすとお湯だけが出るようになっていて、その中間で温度調節をするような仕組みでした。

これでは使いやすい真ん中付近でレバーを操作する際、湯沸し器が作動してしまい、必ずしもお湯が必要のない時でもガスを使っていたのです。それに対して、最近のキッチン用混合水栓はレバーを真ん中で操作すると水が出て、端に動かすとお湯になるように設計されています。これによりガスの使用は大幅に少なくなります。見た目は変わらなくても、自然に省エネができるようになっているのです。

水回り以外では、照明機器でも省エネができます。最近のLED電球は、電気の使用量が減りランニングコストが削減できるだけでなく、価格が低くなり、調光にも対応するなど導入しやすくなっています。照明器具を変えないでもLED電球への交換だけでも省エネになりますが、その器具がLED電球に対応していることを確認しないと事故の可能性がありますから注意しましょう。

エアコンの交換も、「省エネ性能」の高いリフォームとなります。機器の「省エネ性能」は年々向上していますから、最新型のエアコンに取り換えれば電気の使用量を減らすことができます。最近は、部屋ごとに機器を取り付けるのではなく、機器を1台設置してダクト等を通じて各部屋の空調を行うタイプもリフォームで導入できるようになっています。

以上、省エネリフォームの一般的な方法をご紹介しました。省エネリフォームは、住まう方の日々の暮らしの質を向上させる意義の高いリフォームといえます。ぜひ「省エネ性能」を充実させてください。

執筆

谷内信彦 (たにうち・のぶひこ)

建築&不動産ライター。主に住宅を舞台に、暮らしや資産価値の向上をテーマとしている。近年は空き家活用や地域コミュニティにも領域を広げている。『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP社・共著)

※ 2017年9月29日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。
※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

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