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この記事の概要
住まいを手に入れる際、新築にするか、中古にするかは悩みどころです。これまでは新築にこだわるケースも少なくありませんでしたが、最近は物件の豊富さや価格面などから、中古という選択も魅力を増しています。
政府は現在、新築や建替えだけでなく、既存住宅(中古住宅)の利活用による豊かな住環境づくりを支援しています。10年間の住宅施策の指針となる「住生活基本計画」が2016年に改定され、「建替えやリフォームによる安全で質の高い住宅ストックへの更新」を盛り込みました。
ただ、中古住宅は築年や工法、住まい方や維持管理状況も違い、同じコンディションのものが2つとありません。新築住宅に比べると、耐震性能やランニングコスト面で劣っていたり、間取りが現在の暮らし方とマッチしていなかったりする場合もあり、そのままでは暮らしにくさを感じるケースもあることでしょう。多くの消費者は中古住宅に対して「性能が劣る」「内装や設備が汚い」「状態が不明」といった不安を抱えています。
【メリット】
【デメリット】
中古住宅のデメリットを解消するのがリフォームです。とりわけ、内装の更新や設備機器の交換で新築時に戻す機能回復型のリフォームよりも、新築時の性能以上に機能や室内イメージを刷新する「性能向上リフォーム」の方がデメリット解消に有効です。中古住宅購入と同時に性能向上リフォームを実施したり、性能向上済みの中古住宅を購入したりすれば、「住宅ローンの金利優遇」、「補助金受給」、「税金の控除」を受けることも可能です。
こうした消費者のリフォームニーズに、金融機関も敏感です。多くの金融機関が、中古住宅購入費用とリフォーム費用を一体化した住宅ローンを揃えています。中古住宅購入と同時に室内外をリフォームすればリフレッシュした空間で新生活を始められるだけでなく、金銭的なメリットも享受できるのでお勧めです。金融機関はリフォームローンと呼ばれる商品も用意して融資を行っていますが、その金利は住宅ローンより高くなっています。金利の低い住宅ローンでリフォーム費用も賄えば、個別に実施するより返済総額は抑えられます。
住宅購入を検討している方なら、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供する全期間固定金利住宅ローン【フラット35】をご存じでしょう。こちらにも購入資金とリフォーム工事の代金を一括で借り入れることができる【フラット35(リフォーム一体型)】があります。
【フラット35】を利用するには、住宅金融支援機構が定めた技術基準=一定の住宅性能を満たす必要があります。耐久性や断熱性などの基準を満たさないため、そのままでは借り入れができない中古住宅でもリフォーム工事で基準を満たせば、その費用とともに【フラット35(リフォーム一体型)】を利用できます。
さらに、リフォーム工事でより高い住宅性能を有する住宅に改装した場合、金利優遇が受けられる【フラット35】Sが利用できる可能性もあります。耐久性や断熱性に加え、耐震性やバリアフリー性などが求められるので、工事費用は高めになりますが、【フラット35】よりも0.3%も低い金利が適用されるのでメリットは大きいでしょう(金利の優遇期間は当初5年または10年。2017年10月以降の優遇金利は0.25%)。
【フラット35】には、昨年から、さらに大きな金利優遇がある【フラット35】リノベも用意されています。【フラット35】リノベを利用するには、性能向上の一定の技術基準を満たすだけでなく、インスペクション(建物現況調査)の実施などの維持保全に係る措置を実施する必要がありますから、ハードルはかなり高くなります。その分、金利優遇も大きく、【フラット35】より0.6%も低くなります(金利の優遇期間は当初5年または10年)。
【フラット35】の金利は(2017年6月時点)、融資率が9割以下の場合で年1.090%~年1.640%の範囲(金融機関による)ですから、当初、5年あるいは10年とはいえ、0.3%や0.6%の優遇がいかにお得かは分かるでしょう。不動産事業者が中古住宅をあらかじめ性能向上させ、「【フラット35】リノベ」を使用可能にした「リノベーション済み中古住宅」を販売するケースも出て来ているようです。
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住宅金融支援機構の資料を基に作成。詳しくは【フラット35】WEBサイトをご参照ください。
こうした金利優遇が受けられるかどうかは、不動産仲介会社の担当者だけでは判断できないこともあります。リフォーム事業者にも相談して、見積もりをとるといった事前の準備が必要です。どの程度の費用をかけて、どのくらいの性能を目指すのか、それによってローン金利がどの水準になるのか、こうしたことを考慮して試算を行い、慎重に検討してください。
金利優遇でなく、現金が直接支給される補助金制度もあります(支払った代金が後日還付される形です)。
現在、国は「住宅ストック循環支援事業」として、40歳未満の若者への中古住宅購入支援策を実施しています。中古住宅購入時にインスペクション(建物現況調査)や省エネリフォームを行った場合、最大50万円(耐震改修を行う場合は65万円)の補助金が受けられます。
同支援事業には、持ち家をリフォームした場合の補助制度も用意されています。省エネ性能を向上させる「エコリフォーム」がそれで、一戸あたり最大30万円、耐震改修を行う場合は45万円までの補助金が受けられます。こちらは年齢制限はありません。購入時ではなく、購入後にリフォームする際に覚えておきたい制度です。
次いで、高性能住宅を購入や、性能向上リフォームによる、税金の控除の仕組みについてご紹介しましょう。
最もポピュラーなのが「住宅ローン減税制度」です。現行の耐震基準を満たすなど、一定性能を有する住宅は、購入後に確定申告することで住宅ローン控除が使え、最大10年にわたって所得税や住民税の一部が還付されます。控除額は、毎年のローン残高の1%となります。新築だけでなく、高い性能の中古住宅を購入することで、税金の控除を受けられるわけです。ただし、床面積、借入期間、年収等の要件があります。
住宅の取得後でも、性能向上リフォーム行うことによって、さまざまな優遇措置が受けられます。「耐震性」「省エネルギー性」「バリアフリー性」の性能向上のほか、二世帯住宅等にする「同居対応リフォーム」も優遇措置の対象です。
一定の要件を満たしたこうしたリフォームを行った場合、支払額やローン残高などによって所得税の控除や固定資産税の減額が受けられます。リフォームローンの利用有無に関わらず、現金で支払った場合も対象になります(これを「投資型」と呼びます)。
固定資産税の減額については、耐震リフォームの場合、工事完了年の翌年分の固定資産税額(120㎡相当分まで)が1年の間、1/2減額されます。省エネやバリアフリーは、工事完了年の翌年分の固定資産税額(100㎡相当分まで)が1/3減額されます。同居対応リフォームについては、固定資産税の減額措置はありません。
リフォームの減税制度については、住宅リフォーム推進協議会のWEBサイトでくわしく説明しています。ご参照ください。
耐震改修やバリアフリー改修など、住宅の性能向上リフォームに対しては、国だけなく各自治体が独自の補助や融資制度を設けています。住宅を購入する地域にはどのような制度があるのか、住宅リフォーム推進協議会のWEBサイトから確認できますので、ぜひアクセスください。
谷内信彦 (たにうち・のぶひこ)
建築&不動産ライター。主に住宅を舞台に、暮らしや資産価値の向上をテーマとしている。近年は空き家活用や地域コミュニティにも領域を広げている。『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP社・共著)
※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。 2017年6月30日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編内容が変更となる場合がございます。
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