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この記事の概要
2022年度は、新築または既存住宅を取得する際の税制について特に大きな変化は見られませんでした。しかし、現行の住宅取得支援として欠かせない「住宅ローン減税」と「贈与税の非課税枠」が引き続き延長されたことは、持ち家の取得を検討されている方にとって朗報かと思います。
持ち家の確保を促進するため、住宅ローンを借り入れて住宅を取得した場合、年末時点のローン残高について、その0.7%を所得税(一部、翌年の住民税)から控除する制度です。新築住宅は13年間、既存(中古)住宅は10年間控除されます。住宅ローンを利用して持ち家を手に入れた方にとっては、ローン金利を相殺するかたちになるありがたい制度で、この適用期限が4年間延長されました。2025年12月31日までに入居した方が対象となります。
(表)住宅ローン減税の控除内容
(1)宅地建物取引業者により一定の増改築等が行われた一定の居住用家屋。
(2)省エネ基準を満たさない住宅。2024年以降に新築の建築確認を受けた場合、原則住宅ローン減税の対象外。(2023年末までに新築の建築確認を受けた住宅に2024・2025年に入居する場合は、借入限度額2,000万円・控除期間10年間)
出典:国土交通省
持ち家を手に入れる際に両親や祖父母から一定額以上の資金援助を受けた場合は、贈与税がかかります。通常、年間110万円超の贈与は、超過分について贈与税が発生します。贈与税は、課税金額によって10〜最大55%と、かなり高い税率です。ただし、これが両親や祖父母からの住宅購入やリフォームのための資金援助の場合、要件を満たせば最大1000万円まで非課税として取り扱われます。
(表)住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税枠
「省エネ等住宅」の具体的な性能数値については、①断熱等性能等級4以上もしくは一次エネルギー消費量等級4以上であること。②耐震等級2以上(もしくは免震建築物であること)。③高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上であること。この3つのいずれかを満たしていることが条件になります。住宅性能証明書や建築住宅性能評価書などで証明することになります。
タワーマンションは購入価格に比べて相続税評価額が低めに設定されており、相続前準備としても利用されてきました。国や政府は課税の不公平感緩和のため、当初は2023年の税制改正大綱に盛り込むことを検討していました。結局、2023年度の税制改正大綱には盛り込まれませんでしたが、引き続き検討されることになりました。
この点について東京シティ税理士事務所の村岡氏は、「かねて国はマンションの相続税評価額と実勢価格の乖離について気にかけており、評価額が近く引き上げられることは間違いないものと思われる」と話しています。自宅使用でなく、相続前準備としてタワーマンション購入を検討されている方は、2024年度以降に評価額の算出ルールについて変更が生じるリスクがあることを気にかけておきましょう。
1960~1970年代に建てられた分譲マンションは老朽化が進み、その多くで建て替えや大規模なリニューアルの必要性が生じていますが、所有者の高齢化や工事費の急激な上昇などにより、適切な長寿命化工事に必要な修繕積立金が不足しているという状況が見受けられます。そこで、特例措置として「長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する特例措置」が創設されました。
一定の要件を満たすマンションについて、長寿命化に資する大規模修繕工事を行った場合、翌年度に課される建物部分の固定資産税額が減額されます。減額割合は1/6~1/2の範囲内(参酌基準:1/3)で、市町村が条例で定めます。期間は2023年4月1日~2025年3月31日までの2年間の予定です。
(図)対象となるマンションの要件
長寿命化工事が適切に行われないマンションは、耐用年数が短くなる、日々の生活に不便をきたす、外壁剥落など近隣や地域にも大きな悪影響をもたらすなど多くのデメリットをもたらします。住民の高齢化や修繕積立金不足に悩む管理組合にとって、活動の立て直しのきっかけになることが期待されます。
「遠方の親の実家を相続したが、使い道がなく、無管理のまま放置している」。このような空き家数はこの30年間で2倍以上に増加しており、社会問題化しています。そこで、相続した家屋や敷地などを不動産会社など第三者に譲渡した場合、一定要件を満たせば、所得税や個人住民税について、譲渡所得から3000万円までが控除されるという特例措置が2019年度に設けられました。
適用条件としては、これまでは「所有者が建物について耐震改修を実施する」または「除却(解体)する」必要がありましたが、2023年度から制度が拡充され、建物が譲渡後に耐震改修する場合も控除が受けられるようになりました。所有者が売却を予定するのに、わざわざ耐震改修をする必要がなくなったため、制度が使いやすくなったといえます。
(図)制度概要
前出の村岡氏は、「親御さんなどの被相続人が老人ホームなどの施設に入居していた場合でも適用が受けられる」と、実際の相続直前でもこの制度が使えることのメリットを呼びかけています。
この空き家の特別控除の改正内容は、2024年1月1日以後に行われる譲渡からの適用となります。それぞれの制度には諸条件がありますので、詳細についてはお客さまご自身でお確かめください。
東京シティ税理士事務所:不動産を所有する方の相続と不動産税務を専門とする多数の税理士が所属する税理士事務所。
谷内 信彦 (たにうち・のぶひこ)
建築・不動産ライター。主に住宅を中心に、事業者や住まい手に向けて暮らしや住宅性能、資産価値の向上をテーマとして執筆活動を展開している。近年は空き家活用や地域コミュニティーにも領域を広げる。著書に『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP社・共著)
※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。
※ 2023年3月29日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。
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