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この記事の概要
平井:2018年7月末に日銀金融政策決定会合が行われました。そこで当面は現状の金融緩和政策を継続するものの、長期金利のある程度の変動幅を容認することになったのです。具体的には誘導する幅をこれまでのプラスマイナス0.1%からプラスマイナス0.2%に拡大したのです。これが長期金利上昇の容認するサインとして受け取られ、住宅ローンの金利が上昇しました。
ただ、上昇したといっても、一部の金融機関で固定型が0.05%上がった程度に過ぎません。この程度の変動はここ数年の範囲でも何回かありましたから、それほど特別なことではありません。現状の住宅ローンの金利水準は、依然として過去最低レベルです。そして、私は、今後、継続して住宅ローン金利が上昇していく可能性はかなり低いと考えています。
平井:日銀は今回の金融政策決定会合で、「フォワードガイダンス」と呼ばれる将来の金融政策を事前に約束する手法を新たに導入しました。そして「当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持する」ことを約束したのです。したがって、今回の金融政策の変更は、直ちに金利が上昇することを意味するわけではありません。
また、2019年は消費税率のアップが予定されています。それによって景気に悪影響が及ばないようにするためにも、しばらくは政策金利を上げることはできないのは明らかです。10年単位で考えるならともかく、当面は政策金利の急上昇はないと考えるのが自然でしょう。
平井:あくまで、過敏になる必要はないということで、ローンを抱える以上、金利の動きはしっかりウオッチしているべきです。その際には重要なのは、金利の動きではなく、それによって自分の返済にどのような影響があるのかを把握しておくことです。
例えば、今回の全期間固定型ローンを選択した場合、0.05%の上昇によって、ローンの総返済額と月々のローン返済額にどの程度の影響があるのか試算してみました。借り入れが4000万円で、30年ローンの場合、毎月の返済額が949円増加し、返済総額は34万円増加することになります。同じく0.1%上昇、0.25%上昇、1%上昇したケースも試算してみましたから参考にしてください。
変動型の場合、0.25%単位で変更されることが多いので、0.25%と1%の2通りのケースで試算してみました。1%上昇するとかなりのインパクトがあることはわかっていただけると思います。
借入額:4,000万円 返済期間:30年
返済方法:元利均等返済・月々返済のみ(ボーナス加算なし)
※金利変動の可能性があるため実際の返済額は未定だが、ローン期間中変動がないものとして試算
平井:今年、6月に住宅金融支援機構が発表した調査結果では、2017年10月~2018年3月の住宅ローン利用者のうち、56.5%が変動型を選択しています。前回調査の50.4%から大幅に増加しています。ちなみに固定期間選択型が30.1%で、全期間固定型が13.3%でした。
平井:しばらくは低金利が継続すると考える方が増えたことが一因でしょう。2018年8月時点の都市銀行の変動型の金利は0.625%程度です。一方、全期間固定型であるフラット35の金利は1.34%ですから、変動との差が0.7%程度あります。これによる毎月の返済額の違いは、4000万円を30年で借りた場合では1万3千円ぐらいになってしまいます。低金利が続くこと前提として考えれば、この金額の違いは非常に魅力的だと思います。
平井:資金に余裕がありリスクをとれる方が変動型、資金に余裕がなくリスクがとれない方が固定型というのが原則なのですが、実際には逆になっているケースが多いのが心配です。資金に余裕がなく毎月の返済額を抑えるために、金利の低い変動型を選んでしまうのが問題です。そうすると、金利が上昇すると返済が行き詰る可能性が高くなります。
もっとも、変動型を元利均等型で借り入れたケースでは、多くの金融機関は「5年ルール」と「125%ルール」を導入することによって、住宅ローン破たんの可能性を下げていることがあります。「5年ルール」や「125%ルール」の詳細は、お借入予定の金融機関でお確かめください。
最後となりますが、変動型を選ぶなら、金利上昇局面になったら繰り上げ返済をして残債を減らせるように、貯金をしておくことをお勧めします。
平井美穂さんのプロフィール
大学卒業後、マンション販売会社に勤務。その後、金融機関に転職をし、都市銀行およびモーゲージバンクにて融資業務および資産運用相談を専門とする企業系ファイナンシャルプランナーの仕事に携わる。出産を機に退職し、独立系ファイナンシャルプランナーとして住宅ローンのアドバイスを中心に活動。
※ 2018年8月31日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。 ※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。
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