リスク許容度を考えるのがローン選びのポイント
—今後、住宅ローンを借りる方へのアドバイスをお願いします。
平井:まずは、返済能力を過信しないことが大切です。金融機関から融資を受ける際、物件価格や年収等のデータを知らせて審査してもらいます。その際、「審査を通ったということは、返済できるということ」などと安易に考えるべきではありません。最近、金融機関は住宅ローンの獲得競争に陥っていて、審査において個別の事情などをきちんと反映せずに甘くなっているケースがあるのです。こうした審査に通り購入できても、実際には返済ができなくなり苦しむことになります。ライフプランや将来の収入見込みを考えて、ローン返済が可能かどうかをシビアに試算することが重要です。物件価格が上がった時期には無理なローンを組みがちなので気をつけてください。
賃貸から持ち家に変える一次取得者が陥りがちなのは、「現在の家賃=月々のローン返済額なら大丈夫」という思い込みです。持家になると固定資産税や都市計画税といった税金など、賃貸にはない出費が必要なことを忘れてはいけません。
マンション購入者ならでは注意点として、修繕積立金の問題があります。以前から修繕積立金不足が社会問題となっていたために、最近の新築マンションは、将来の値上げを決めて管理規約等に盛り込むケースも増えています。購入当初は数千円だった修繕積立金がしばらくすると数倍に上昇する規定があるケースも珍しくありません。こうした確実に予想される出費は盛り込んで返済計画を立てないと後で後悔するかも知れません。
—住宅ローンを選ぶときのポイントをアドバイスしてください。
平井:以前は、住宅ローンの種類は少なくあまり選択の余地はありませんでした。最近は、各金融機関が多様な住宅ローンを用意しているので、自分にマッチしたものを選ばないと損をします。ローン金利も決して横並びではありません。金融機関の体力や戦略によって設定にはばらつきがあります。ほんの僅かの金利の違いでも総返済額は大きく変わってきますから、手間をかけて選ぶ意味は大きいのです。
大きな選択のポイントとして、固定金利にすべきか、変動金利にすべきかということが挙げられます。これについては、私はリスク許容度によると考えています。
基本的には、金利が上がらなければ変動金利を選んだほうが総返済額は少なくなります。金利が上がれば固定金利ローンのほうが総返済額は少なくなります。変動金利ローンは、金利が上昇するリスクを許容したハイリスク・ハイリターン選択ということになるのです。収入や預貯金が多く、万一金利が上がったときにも返済に支障がなく、場合によっては繰り上げ返済で金利上昇のダメージを減らせるなら、変動金利という選択肢もありでしょう。
しかし、現実には住宅ローンの負担は重く、それほど家計に余裕がないケースが多いでしょうからこうしたリスクは取れない方が多いと思います。そのため、低金利である現在はなおさら固定金利をお勧めしています。
固定金利といっても金利の固定期間を選ぶことも可能です。35年間すべてを固定するのではなく、当初の5年、10年、20年といった期間だけ固定するタイプが用意されています。2016年から2017年にかけて、基本的には35年固定タイプを第一候補に挙げてきましたが、借入開始時期や、定年や退職金の予定などによっては20年固定タイプを推奨するケースもありました。35年と20年では金利に違いがあり負担はそれなりに小さくなります。購入後20年程度で定年を迎えて、ローン残高が退職金で賄えるケースならリスクも少なくメリットがあると判断したためです。