相続の際に「換価分割」を実施する
2番目は、被相続人がなくなり相続が発生したタイミングです。この場合、相続に関する優遇税制が使える可能性があることがメリットとして考えられます。また、相続後、すぐに現金が手に入ることが決まっているので、納税資金がなくても一時的に借りてすぐに返済することで対応できます。一方、デメリットは、基本的に限られた時間の中で買い手を探す必要があるため、理想的な価格で売却することができない可能性があることが挙げられます。
「この時点で売却して、相続人で分けること『換価分割』と呼びます。最近はこの方法が非常に増えています」(村岡税理士)。もちろん被相続人の名義のままでは売却できません。ですから、名義変更の手間などを考えて、相続人の中から代表者を決めて相続し、その名義で登記してから売却します。その代金から売却にかかった手数料や税金などを除き、遺産分割で決めておいた比率に応じて分割します。
3番目のタイミングは、相続人が不動産として承継した後です。被相続人が複数の不動産を持つ場合、相続人それぞれが不動産プラス現預金を受け取る形で、納得のいく分割が実施できる可能性があります。そんな場合などには相続の時点では不動産として承継することも一つの考え方です。
この場合のメリットは、時間をかけて売却先を探すことができることです。最近は、東京都心だけでなく、地方中核都市、さらにはインバウンド需要で盛り上がる観光地などでも、地価の急激な上昇が見られます。そうした地域に実家があれば、時間をかけて値上がりを待ってから売却したいと考えるケースも多いでしょう。デメリットは管理の手間やコストがかかることです。売るタイミングを計って使わない不動産を持ち続けることはリスクになることも覚悟しておくべきでしょう。
最後に、実家の売却についてのポイントとして、村岡税理士は次のようにアドバイスをします。「まずは、相続に詳しい税理士や弁護士とよく相談してタイミングや方法を考え、被相続人、相続人の意志を統一することです。ただ、被相続人が元気なうちは、実家の売却を切り出すのは実際には非常に難しいのが現実です。それでも最近は早めにエンディングノートや遺言の作成に取り掛かるケースも見られますので、そういう際に話し合うといいでしょう」。
「そして、もう一つ大切なのは信頼のおける不動産会社によく相談することです。税理士や弁護士には、その不動産の時価はよく分かりません。しかし、それが分からなければ話は進まないのです。不動産に関する情報は、その地域の不動産会社でなければよく分からないケースが多いのですが、実家が遠ければ、地場の不動産会社にいちいち相談するのは大変です。そうした場合には全国的にネットワークを持つ不動産会社に相談するのも一つの手だと思います」