スッキリ!実家の生前整理を成功させる極意

絶対に“争族”にしない!親子で考える相続(第6回)

この記事の概要

  • 相続は何よりも事前の備えが大切です。事前準備の一つに親の家の整理があります。親が生きているうちに、自分の意志で行ってもらったほうが納得のいく整理ができます。生前整理の極意を、幸せ住空間セラピストの古堅さんにアドバイスしてもらいました。

実家の生前整理のイメージ画像

親が元気なうちに実家の片付けを行えば、後々の悔いも減ります。ただし、生前整理を成功させるには、親子の良好なコミュニケーションを図ることが大前提です。親も納得する、生前整理の極意を紹介します。

「家に帰るたびに家が雑然としてモノが増えてきた。」そう感じたときが、生前整理に取りかかるタイミングです。不要なモノが床や廊下に放置されていると、つまずいて転倒し、骨折の恐れすらあり、親に健康で長生きしてもらいたいなら、親子で力を合わせて実家の片付けに取り組むべきです。

親の家が片付かない構図

親の家が片付かない構図

年を重ねるにつれ、親の家が片付かなくなるのにはさまざまな理由があります。例えば、「体力の衰えで片付けが苦痛になる」、「お年寄りに多い『もったいない』精神を抱き続け、モノが捨てられない」、「認知症のために片付け、掃除ができなくなる」などです。なかでも目立つのが、「寂しさを紛らわすためにモノを集めてしまう」という行動です。「子供も独立し、家には誰も訪れない。孤独だからモノに執着し、家がモノであふれてしまうのです」と、2000軒以上の家を片付けてきた整理・収納・掃除のプロ、古堅さんは言います。(下コラム参照)。

コラム

親が70歳を超えたら要チェック

なぜ親の家は片付かないのか?その5つの理由とは

理由① 孤独からモノを集める

モノを増やしてしまう心理的要因で深刻なのは「孤独」だ。子供が独立し、家に来る人もない寂しさを紛らわすために、知らず知らずにモノに執着し、家にモノがあふれてしまう。

理由② もったいない精神

親世代は、1940年代、戦後復興期の貧しい時代を体験している。そのため、豊かな時代になっても「もったいない精神」を持ち続ける人が多く、モノが増えても捨てられない。

理由③ 安物買いに走る

限られた年金収入で、高くて良いモノはもったいないから買えない。でも、安いモノならいいかと、ついつい安物買いに走るのが高齢者の心理。こうしてモノが増えていく。

理由④ 筋力低下・要介護状態

筋力が低下すると戸棚の上に手を伸ばしたりすることがつらくなり、片付けがおっくうになる。また、要介護状態になると手の届く範囲で生活するため周辺にモノが置かれたままになる。

理由⑤ 認知症の問題

認知機能が衰えてくると、同じ日用品を繰り返し購入するとか、卓上に飲みかけの茶碗を何客も放置したままなどの兆候が見えてくる。放っておくと、ゴミ屋敷になりかねない。

親を納得させる魔法のことばをかけよう

こうした親世代に、たまにしか実家に顔を出さない子供が「早く片付けてよ」と切り出せば、親は反発し、片付かない悪循環に陥ってしまいます。

片付かない悪循環の構図

そんな失敗を避けたいなら、まず、親子のコミュニケーションをしっかりと取ることが肝要です。「マメに実家に通って親と頻繁に会話をし、親の言い分も聞いてあげる。子供にじっくり話を聞いてもらえるだけで、親は心を開いてくれるものです」。

親と一緒に生前整理を進める際には、親を納得させる言葉がとても大切になってくる。前述の「片付けてよ」といった、高圧的な命令口調は避け、「片付けてみようよ」「~してみない」と言い換えて、親子一緒の作業に誘うのが効果的です。

また、「捨てる」「捨てろ!」は最大の禁句と心得てください。「もったいない」という考え方が染みついている親たちには、「誰かに使ってもらおう」「これ私にちょうだい」といった言葉が心に響きます。そして、自分(子供)の家に引き取ってから、そっと処分すればよいのです。同じことを伝えるにも、言葉の掛け方ひとつで親を納得させることができます。最後に上手に片付けを導くワードをご参考までに紹介します(下図)。次回は生前整理を成功させる上手な進め方を、具体的に紹介していく予定です。

親を納得させる魔法のことば

親を納得させる魔法のことば

解説

古堅 純子

幸せ住空間セラピスト。1998年老舗の家事代行サービス会社に入社。約20年間、現場第一主義を貫き、お客様の元に通っている。2000軒以上のお宅に伺いサービスを重ね、整理収納のメソッドと技術を取得する。整理収納アドバイザー1級。企業内整理収納マネージャー。個人宅や企業内での整理収納コンサルティング、収納サービスを提供する傍ら、大手住宅機器メーカーの収納開発に協力した実績あり。テレビ・ラジオ雑誌などのメディアの取材協力も多数。『定年前にはじめる生前整理』(講談社)ほか著書多数

執筆

文:礒部 道生

イラスト:エイイチ

協力:『日経おとなのOFF』(日経BP社)

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。