閉じる

ページの先頭です

二次相続は時間との闘い。不動産の取り扱いをどうする?

絶対に“争族”にしない!親子で考える相続(第3回)

公開日:2017年10月31日

この記事の概要

  • ご夫婦の一方が亡くなった後、残されたもう一方も亡くなった際の相続が「二次相続」です。最終的な相続になりますから、遺産分割でトラブルが発生しがちです。相続税の納付は被相続人が亡くなられたことを知った日の翌日から10カ月以内が期限です。それまでに分割協議を済ませて、納税資金を用意する必要があります。時間がない中で高いハードルなのが不動産の取り扱いです。

イメージ

ご夫婦(ご両親)の一方が亡くなり、その後、残されたもう一方も亡くなった際に「二次相続」が発生します。連載第1回でも紹介したように相続では遺産分割によるトラブルが少なくありません。そして、その舞台になるのは一次相続よりも二次相続のほうが多いのです。

相続対策を専門とする東京シティ税理士事務所の熊田俊樹税理士は、「一次相続では、『まだ二次相続があるので、その時に帳尻を合わせればいい』と考えて主張を控えたり、残された親の『兄弟でケンカをしないでほしい』といった感情に配慮したりするケースがあります。そうした意識がなくなる二次相続時に対立が表面化しやすいのです」と説明します。

「トラブルになったケースの多くは、分割案に対しての『これでは納得がいかない』という感情のぶつかりあいです。『私は長男で親の面倒を見てきたのだから、ほかの兄弟とこの程度の差では納得できない』、『同じ兄弟なのにここまで差が付くのは納得できない』といったそれぞれの主張が衝突するのです」(熊田税理士)。

相続税納付にはタイムリミットがある

このように遺産分割でトラブルが発生した際にあわてることになるのは、相続の手続きにはタイムリミットがあるからです。相続手続きの簡単な流れを紹介します。

まず、遺言書の有無を確認、法定相続人も調査します。次に遺産の調査と評価を行い分割の対象となる「財産目録」を作成します。次にそれをどう分けるのか協議して「遺産分割協議書」を作成します。これで相続人それぞれが納税すべき相続税額が決まります。そして、相続人それぞれが相続税額を用意し、相続税申告を行い納付して手続きは一段落です。ここまでを基本的には、相続人が被相続人が亡くなられたことを知った日の翌日から10カ月以内に行う必要があります。

上記の手続きすべてに多くのの時間がかかります。法定相続人の調査や財産目録の作成まででも大変な作業が必要になります。その後に控える遺産分割協議書の作成でもめてしまえば、あっという間に10カ月の期間は過ぎてしまうことになります。

遺産分割協議が完了しない場合には、法定相続分で暫定的な申告を行い協議完了後に修正申告を行ったりすることもできます。ただ、こうした手続きには専門家の手を借りる必要がでてきますから、そのための費用を覚悟しなくてはなりません。

遺産分割のポイントが不動産である4つの理由

遺産分割協議をスムーズに済ませ、相続手続きを期間内で済ませるにはどのようにすればいいのでしょうか。「なによりも事前の準備が大切です」と熊田税理士はアドバイスします。被相続人が生前に専門家(弁護士など)に相談して財産を調査して、分割に関して遺言を作成しておくのです。「遺言を作って相続人に示して同意を得ていても、分割協議のトラブルを完全に防ぐことはできませんが、もめる可能性は低くなります」(同)。

こうした事前準備のメリットは、相続発生後の遺産分割トラブル防止だけではありません。納税資金を用意したりすることなどにとりかかれるというメリットもあります。被相続人の財産額や、遺言による分割案で仮の納税額が分かれば、いろいろな対策が考えられるからです。

事前準備としての、遺言の財産分割案、および相続時の「遺産分割協議書」の作成でもポイントになるのは不動産の取り扱いです。その理由として熊田税理士は4つを上げます。「1つ目は相続財産の中で不動産の占める比率が高いこと。2つ目は不動産は現金や株などと違って価値が明確でないこと。3つ目は分割しにくいこと。4つ目は現金化するには時間も手間もかかることです」。

確かに国税庁の資料によると相続財産の金額別比率で見ると「土地」と「家屋」の合計で43.3%を占めています(平成27年度)。

グラフ

相続財産の金額の構成比の推移(国税庁の資料より作成)

相続財産の不動産の金額は、路線価や固定資産税評価額をもとにしたものであり、かならずしも実勢価格とは一致しません。現金や株券の金額と比較できる現時点の本当の市場価格は売却してみないと分からないのです。

しかも、それなりに大きな土地でなければ分割したら使い勝手は悪くなりますし、家屋は一戸建ても、マンションの一戸も基本的には分割できません。分割協議の対象とはいえ、容易に分けられる資産ではありません。

さらに相続税の納税に当たっては、物納という手段もありますが基本的には現金による納付になります。不動産で相続した場合には納税資金に困ることもあります。納税のためには不動産を売却することも考えられますが、適切な価格で売るには手間も時間もかかります。

実勢価格の把握のために不動産専門家に相談

こうした数々の理由があるのですから、遺言の遺産分割案や遺産分割協議書の作成のポイントは不動産の取り扱いにあることがお分かりいただけたかと思います。それでは実際にどのような行動をとるべきでしょうか。

大切なのは、信頼のおける不動産仲介会社など不動産の専門家に意見を求めることです。税理士や弁護士は前にも説明した通り、路線価や固定資産税評価額を調べることはできますが、実勢価格は分かりません。分割の際には相続税評価額による形式的な平等では相続人は納得しないことも考えられます。実質的に平等な分割をするには実勢価格を確認する必要があります。その際には不動産の専門家の意見が不可欠です。さらに、売却による納税資金作りを考える際にも不動産の専門家のアドバイスは必要です。

不動産のままで相続したほうが、納税額が少なくなるケースがありますが、価値が分かりにくい不動産を、現金や株券などと合わせて分割するのは非常に難しく、トラブルのもととなりかねないことを覚えておいてください。
 熊田税理士は、「相続人全員がもっとも分かりやすく、納得しやすいのは、不動産など現金以外の資産も、すべて現金化して分けてしまう方法です」とアドバイスします。

不動産を含んだ相続で、遺言を作った場合には毎年、見直すといったメンテナンスが必要です。不動産の価値はかなり変動し、税制改正の影響なども受けやすいので、せっかく作った遺言もいざ相続の際には実情を反映していないものになっていて、逆にトラブルを招くことになりかねないからです。自分が死んだ後は関係ないと思わず、相続人のことを考えてメンテナンスを忘れないことが、子孫を幸せにする二次相続につながります。

協力・監修

東京シティ税理士事務所:不動産を所有する方の相続と不動産税務を専門とする税理士事務所。35年の歴史を持ち、20人以上の税理士が所属。

※本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

おすすめ・関連記事
閉じる×
ページの先頭へ