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残された配偶者の充実した暮らしを守るカギは不動産

絶対に“争族”にしない!親子で考える相続(第2回)

公開日:2017年9月29日

この記事の概要

  • ご夫婦の一方が亡くなった際の相続が「一次相続」です。配偶者控除があることなどにより、相続税の納税で困ったり、遺産分割でもめたりするケースはそれほど多くはないようです。そのような中、一番問題になるのは残された配偶者の充実した生活環境の確保です。そして、そのために考えなくてはいけないのが不動産の見直しです。

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連載第1回は、相続税の納税よりも遺産分割の対策が重要になることを解説しました。第2回は、一次相続のポイントを紹介します。一次相続とは、ご夫婦の一方が亡くなった際に起こる相続。残された配偶者が亡くなって起こる相続が二次相続です。

相続対策を専門とする東京シティ税理士事務所の熊田俊樹税理士は、「一次相続では、相続税の納税が問題になるケースはあまり多くありません。配偶者控除があるため多額の相続税を支払わなければならない方は少なくなります」と説明します。

民法で定められた法定相続分の通りに遺産分割をすると、残された配偶者が遺産の半分を受け継ぎ、残りの半分を子どもたちで分割することになります。半分を承継する残された配偶者は、自宅などの不動産を相続したとしても、小規模宅地の特例などにより、相続税評価額が圧縮できることなどで、相続税は配偶者控除の範囲内に収まるケースが多いのです。

また、遺産分割についても、「子供たちで争い事がおきると残された配偶者が悲しむことや、まだ二次相続が控えていることもあり、一次相続の段階で大きくもめることは少ないようです」(熊田税理士)。

相続税納税や遺産分割があまり問題にならないとすれば、一次相続には、対策は必要ないのでしょうか。熊田税理士は「残された配偶者の生活の充実を考えることが、一次相続対策のポイントになります」とアドバイスします。一次相続後、残された配偶者はどのような暮らしを選択するのか。基本的な選択肢は、子どもと同居、一人暮らし、高齢者の場合は、介護付施設などへの入居の3つが考えられます。

この中で増えているのは一人暮らしです。高齢化が進行する中で、65歳以上の高齢者が一人暮らしをするケースが急増しています。高齢社会白書によれば、一人暮らしをする高齢者は1980年には88万1000人に過ぎませんでしたが、2020年には667万9000人にまで増加すると推計されています(下図)。

グラフ

注:2010年までは総務省「国勢調査」、2015年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計」(2013)、「一人暮らし」は、上記の調査・推計における「単独世帯」を指す。

(平成28年 高齢社会白書より作成)

同じく高齢社会白書では、子どもと同居している高齢者が減少傾向にあることも指摘しています。1980年には高齢者の69%が子どもと同居していましたが、2014年には40.6%にまで減ってしまいました(下図)。これは子どもの都合だけではないのかもしれません。核家族化が進み、もともと夫婦だけで暮らしていた高齢者にとって、配偶者を失ったからといって、いまさら子どもと同居するのはハードルが高いのではないでしょうか。

グラフ

注:1985年以前は厚生省「厚生行政基礎調査」、1986年以降は厚生労働省「国民生活基礎調査」(1995年の数値は兵庫県を除いたもの)

(平成28年 高齢社会白書より作成)

こうしたデータを見る限り、一次相続後には、残された配偶者は子どもと同居せずに一人暮らしをすることになる可能性が高くなっています。あるいは、今後は、高齢者施設に入居することを検討する方も増えるかもしれません。こうした傾向を踏まえた上で、残された配偶者が充実した生活を送れるようにご夫婦が元気なときから、子どもと相談しておくことが大切です。

「一次相続は遺産分割でもめることは多くないと説明しましたが、『誰が世話をするのか』といった点で子どもたちがギクシャクすることもあります。二次相続を視野に入れてどうすれば自分に有利で、負担が少ないかを考えるからです」と熊田税理士は指摘します。ご夫婦それぞれが先に亡くなるケースを想定して、一次相続後の生活を相談しておけば、そうした問題は起きにくくなります。

生活の基盤である住まい=不動産がポイントに

配偶者が亡くなれば、生活に大きな影響が出ます。生活を支える収入、掃除・洗濯・料理、買い物、通院、旅行・娯楽などあらゆる面が変わってきます。その変化によって生活に支障が生じることなく、充実した生活を送るにはどういう準備をしておくべきでしょうか。

ポイントになるのは生活の基盤である住まい=不動産です。残された配偶者は一人でどこに住めば、もっとも充実した生活が送れるのでしょうか。まず、第一候補は現状維持です。ただ、亡くなった方の名義の自宅は相続人で分け合う遺産の一部になるので、場合によっては、売却する必要が生じ、残された配偶者が住まいを失う可能性があります。

このリスクを重く見た法務省は民法を改正し、婚姻期間が20年以上のご夫婦のどちらかが死亡した場合には、配偶者に贈与された住居は遺産分割の対象にしないようにする方針を打ち出しています。(その他適用条件あり)

ただ、こうした措置により売却する必要がなくなったからといって、現状維持が残された配偶者にとってベストな選択とは限りません。ご夫婦で暮らしていた住まいの立地や広さ、設備によっては、一人暮らしに必ずしも向いていないケースがあるからです。

例えば立地。公共交通が発達していない場所でも、運転免許を持った配偶者と暮らしていれば、買い物、通院など面でそれほど不便は感じないかもしれません。しかし、自動車を運転できない配偶者だけが残されたらどうでしょうか。また、同居はしないにしても、子どもが近くに住んでいたほうが、安心かもしれません。

広さも、使わない部屋が多い大きな家に一人暮らしするのは高齢者には負担になります。掃除や片付けも大変ですから、荷物をスッキリ整理して、身の丈の住まいに夫婦元気なうちに引っ越すことを考えてもいいでしょう。

高齢者に階段の上り下りはつらいものです。エレベーター完備のマンションの方が2階建ての戸建てよりも屋内の移動は楽です。また、身体能力が衰えた場合、設備面ではバリアフリーを取り入れた住まいの方が暮らしやすいことは確かです。

一次相続対策は、これから自分が亡くなる前まで、そして、自分が亡くなった後、配偶者が一人でも充実した生活を送れるようにすることが重要です。早めの不動産対策が充実した老後につながるでしょう。

協力・監修

東京シティ税理士事務所:不動産を所有する方の相続と不動産税務を専門とする税理士事務所。35年の歴史を持ち、20人以上の税理士が所属。

※本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

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