売却時に悩む「売却期間」と「売却額」
今やマイホームは一度買ったり建てたら終わりでなく、年齢や家族構成、ライフステージなどに応じて適切な住まいに住み替えることも当たり前になってきています。そのため、持ち家を売却するというシーンも珍しくありません。また、高齢になって持ち家を現金化して施設へ入所したり、子どもに相続させたり、逆に相続した親の実家を処分するなど「住まいの終活」を検討される方もいらっしゃるかと思います。そんな売却の検討に際し、売却にかかる「期間」と「金額」は、皆さんの大きな関心事かと思います。
(表1)マンション/一戸建て売却経験者の「売却で困った点」(上位5位)

- 出典:LIFULL HOME'S「不動産売却に関する調査」(2022年)
いざ不動産を売りに出しても、すぐに売れるものなのか。また、希望額で売れるものなのか。これらは売却のモチベーションにも大きく関係しますので、不動産売却の流れの説明の中から確認していきましょう。
希望額で売るためには時間が必要
不動産の売却は、おおよそ以下のような流れで整理できます(以下、住宅の売却を想定)。
- 1.売却に伴う意向の整理(目的、希望額、売却時期などの設定)
- 2.不動産仲介業者への問い合わせ
- 3.不動産仲介業者との媒介契約の締結
- 4.不動産仲介業者による、買い主を見つける活動(広告掲載、営業、内見など)
- 5.買い主の確定⇒売買契約の締結
- 6.精算、引き渡し
この流れを見ると分かるかと思いますが、一般的に住宅の売却は、住宅会社や不動産仲介業者が自社で買い取るのでなく、不動産仲介業者に新たな買い主を見つけてもらうことが一般的です。なお、前述の「買取」はスピーディーな精算が期待できる半面、売却額は「仲介」より低いものとなり、一般的には「仲介」による売却が多いようです。
不動産仲介業者に売却を依頼する際は、通常複数社に問い合わせ、希望の条件にかなう1社と媒介契約する流れが一般的です(複数の仲介業者に依頼する方法もあります)。ただ仲介業者の中には自社に媒介契約してもらいたいことから、「うちなら○カ月以内に買い主を見つけます」「○千万円で売ってみせます!」などと根拠のない大げさな営業トークで契約を迫るところもあるようです。それらは努力目標であって義務ではありませんから、売却実績を多く持つなど信頼の置ける不動産仲介業者に依頼することが大切です。
不動産仲介業者への売却依頼に際しては、いくつかの契約方法があり、大きく「専任媒介契約」と「一般媒介契約」とに分けられます。専任媒介契約は1社に任せるケース、一般媒介契約は複数社に依頼可能な方法になります。
(表2)不動産売却の際の仲介業者との契約形態例

一見、複数の不動産仲介業者に依頼できる一般媒介契約の方が早期に買い主が見つかりそうな気もしますが、この契約は自社で必ず仲介手数料を獲得できるとは限らないため、仲介業者によってはモチベーションが上がりにくいともいえます。その点1社に任せる専任媒介契約だと、不動産仲介業者が責任を持って買い主を探す活動を行うことに繋がりやすいといえます。
媒介契約を取り交わすと、不動産仲介業者は買い主を見つける活動を開始します。不動産業界のデータベース「レインズ(REINS)*」に物件登録し、自社で直接顧客を見つける活動のほか、他の不動産仲介業者を通じての買い主を見つける両面からの活動になるのが一般的です。
- *「レインズ(REINS)」:国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステム
売却期間についてですが、エリアや物件価格、コンディション、購入ニーズなど条件によって相当な差異がありますが、おおむね3カ月を1区切りとして買い主を見つけていくというのが一般的です。というのも、不動産仲介業者との専任媒介契約期間が最長3カ月と国土交通省によって定められているからです。この3カ月で買い主が見つからなかった場合、更新したり契約先や契約方法、売却条件などを変えて再度買い主を見つけていくことになります。
(表3)レインズ登録から成約に至る日数(2024年 首都圏)

- 出典:(公財)東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向」
ただ実際の成約については、売却する物件の地域ニーズによって大きく異なるというのが実情かと思います。住環境や利便性などから居住ニーズの高いエリアであったり、建物の築年が浅い、あるいは希少性のある物件であれば比較的早く買い手が見つかるでしょう。半面、駅から遠かったり建物の築年が古いなど何らかのハンディがあると、それなりに時間がかかります。また、入進学や就職、転勤などのシーズンや、正月を新居で迎えたいといった時期的な購入ニーズによる、住宅市場の繁忙期(春・秋)もあります。媒介契約した不動産仲介業者の担当者のアドバイスを受けながら、合理的な売却活動を行っていくことが大切です。
売り出し価格と成約価格のギャップに要注意
次いで、売却したい土地や建物の価格について考えてみましょう。建物については経年とともに価値が下がっていくため、新築より取引額が下がってしまうのは致し方ありませんが、人気のエリアであれば中古でも高額な取引がなされますし、建物のコンディションなどによっても価格は上下します。
一般に、中古住宅の価格は「エリア」「建物の状態」「土地の価値」「市場動向」などの要因によって決まっていきます。もう少しかみ砕くと、以下のような要因が売買価格を左右していきます。
- ・エリアの開発状況、住宅地としての人気度
- ・ロケーション(周辺の自然環境、交通アクセスなどの利便性、公共施設の有無など)
- ・土地・建物の広さ、用途地域、建ぺい率・容積率、接道状況
- ・建物の築年、住宅性能(耐久・耐震・省エネ性など)、コンディション、設備更新やリフォームの状況
- など
とくに、立地と市場の需給バランスは価格に大きく影響するため、売却時には近隣エリアの相場や流通量などを確認することが大切です。
近隣の相場を確かめる手近な方法としては、不動産仲介業者のWEBページや不動産ポータルサイトなどで、広さや間取り、築年数が近い物件の売り出し価格を確認することです。現在のおよその流通量の把握にもつながります。
周辺売り出し相場の検索メニュー例(みずほ不動産販売)

注意点としては、掲載価格は売り出し価格であって、成約価格でないことには注意が必要です。実際の不動産取引においては値引き交渉が入ることもあり、実際の成約価格は売り出し価格より多少低くなります。売却希望額がはっきりしている場合は、売り出し価格をいったんそれよりやや高額にしておき、値引き交渉の余地を残しておくことも大切です。
また「レインズ(REINS)マーケットインフォメーション」では、これまでに取引された住宅の成約価格が閲覧・検索できます。マンション・一戸建て住宅別に加えて、最寄り駅や専有面積、築年、工法、成約時期などでソートできますので、似た条件で検索することで取引情報や成約価格を把握していきましょう。
「レインズマーケットインフォメーション」のトップページ

なお、より高額に売却するために、リフォームやリノベーションによって付加価値をつける方法もありますが、時間がかかることや事前に費用が持ち出しになることから、さほど一般的ではありません。ただ、生活感の払拭のために、内装を替えたり古い設備を更新するなど最小の投資で内見時の印象や見栄えを良くするのは必要なコストともいえます。インテリアコーディネートによるホームステージングも、内見時の印象をよいものにし、早期売却につなげられます。
優先順位が売却戦略を左右する
不動産売買における時間とおカネの概要について説明してきましたが、何より重要なのは「早期売却」と「高額売却」は相反する関係にあるということです。
早期に売却したいのであれば、周辺価格より低く設定することで反響が高まるでしょうし、「価格は気にしないから早く売却したい」というのであれば、「仲介」でなく「買取」による売却の方がスピーディーです。ただし「買取」はエリアや物件特性などによって難しい場合があります。また、より高額の売買を希望するのであれば、じっくりと時間をかけて買い主を探すゆとりも必要です。希望の売却期間や売却額を設定しつつも、優先順位をつけるなど柔軟な対応によって売却に臨むべきでしょう。
実際の売却実施者へのアンケートを見ると、時期と価格、どちらを優先するかは拮抗しているものの、時期を優先する方がやや多いようです。恐らくですが、売却期間が想定以上にかかる場合、価格を多少諦めてでも最終的に売却することを優先させるためのようにも思います。
(図1)時期と価格どちらを重視するか
- *過去1年間の売却検討者+以下いずれかの具体的行動をした人ベース(情報収集、仲介会社へ問い合わせ、訪問査定、媒介・代理契約)

- 出典:「2023年12月『住まいの売却検討者&実施者』調査(首都圏)(株式会社リクルート)」
できるだけスピーディー、かつ高額で売却するためには、不動産仲介業者ネットワークや営業力、担当者の力量や熱意が必要になります。また、売却益の処理や子どもへの贈与など、税金関連に関する知識なども必要ですので、信頼できる業者・担当者との二人三脚が納得のいく売却につながるかと思います。
みずほ不動産販売の査定/売却相談はこちら