- 50代で住まいを替える場合は、老後に向けたことも考え、慎重にすすめることが大切。
- 将来、自宅を賃貸マンションとして貸し出して毎月賃料を得ようと考えている場合は、空室リスクをできるだけ回避するために、借り手がつきやすい物件を購入しておくことが大きなポイント。
- 自宅マンションを売却し、現金を得て老後資金に充てたいと考えている場合は、資産性の高い物件を購入しておく必要があることはもちろん、売却時には適正な販売価格を設定することが重要。
- リースバックとは、自宅を売却して現金を手に入れながら、そのまま住み続けられるという方法のこと。マイホームを活用した資金調達方法のひとつとなるが、注意点も把握しておく必要がある。
50代の売却。~自己所有する一戸建てを売却し、都心マンションへ住み替え~第十話「老後のマイホーム活用方法編」
【Hさん】
娘2人が独立してほっと一息している50代のHさん夫婦。子育てに適していると購入した都内郊外の庭・駐車場付き一戸建ては6LDKあり、鉄筋コンクリート造3階建てのこだわりある注文住宅。夜は人通りが少ないとあって、セキュリティにも配慮した物件です。土地面積は300㎡以上あり、夫婦2人では広すぎる上に駅から遠い点をネックに感じてきました。コンパクトな広さや便利さが売りの都心にあるマンションに興味が出てきたため、住み替えを検討することになりました。
若いころは、主に生活費や子どもの学費などにお金を費やしてきたものが、50代になると、医療費の負担も増えてくるなど支出の内容にも変化が出てくることになります。また、就労で収入を得るという考えではなく、年金、これまでの積み立て、就労以外の方法で得た収入で今後の生活を送っていくという視点が必要です。
今回は、このような50代の老後に向けた「住まい選びと資産形成」における3つのケースのポイントを考えてみます。
ケース1.自宅を賃貸マンションとして貸し出し、毎月賃料を得る
年を重ねると、住まいの選択肢として高齢者向けの住宅などが加わってきます。そういった住宅へご夫婦2人で引越して生活することになった場合、これまで暮らしていた自宅をどうするのかというのが課題となります。そのひとつとして考えられるのが、自宅マンションを賃貸マンションとして貸し出すという方法です。月々の賃料は、生活費や医療費に充ててもいいですし、貯蓄にまわしてもいいでしょう。なお、管理会社に賃料の集金や入居者の募集などの管理業務を委託する場合には、一般的に賃料の何パーセントかを支払うことになります。賃料がそのまま手元に残るわけではないので、注意が必要です。
また、借り手がつかないと家賃収入はゼロになってしまうというリスクは把握しておくことが重要です。購入時には将来貸し出すことになる可能性があることも視野に入れ、借り手がつきやすい条件を備えたマンションを選択するようにしましょう。具体的には、広さや間取りが近隣のニーズに合っているか、駅・商業施設・病院・役所に近いなどの利便性の高さはどうか、管理や修繕がしっかりなされているか、などが目安となります。
借り手のつきやすいマンションとは、資産性の高いマンションとも言えます。相続することになっても、子や孫にはプラスの資産となるので、その点もメリットとなるでしょう。
ケース2.自宅マンションを売却し、現金を得る
賃貸同様、売却時にできるだけ希望価格で早く売却するためには、買い手のつきやすい資産価値が高いマンションを購入しておくことが重要です。特に、売却して得た現金を次の住宅への入居費用や生活費に充てようとしているのであれば、ここは大きなポイント。物件購入時の条件としては、賃貸に出す場合と似たようなものになります。
将来の売却時には、売却価格なども適切なものに設定する必要があります。高い価格で売れることが理想ではありますが、相場と大きく乖離している場合は何度も販売価格を見直し、その分販売期間が長期に渡ってしまうことも考えられますので注意しましょう。まずはいくつかの不動産会社で査定をしてもらうことになりますが、査定価格が高い=依頼先という考え方は正しい判断方法とは言えません。なぜなら、査定価格と現実的に売却できる価格は別だからです。これまでの販売実績や売却者の声のほか、他社の提示価格と大きく離れていないかをチェックし、総合的に納得できる不動産会社に依頼するようにしましょう。
ケース.3リースバックで自宅マンションに住み続けながら、現金を得る
リースバックとは、自宅を売却して現金を手に入れながら、買主と賃貸借契約を結んで、そのまま住み続けられるという方法のことです。売却後、所有権は次のオーナーに移ることになりますが、家賃を支払えばこれまでと変わらない生活が送れます。引越す手間がないだけでなく、所有していることでかかってくる固定資産税、建物の修繕費などが不要となる点もメリットと言えるでしょう。
一方注意点としては、新しいオーナーとの契約内容に則って暮らす必要があることで、更新拒否、更新料の発生、賃料の値上げなどがあげられます。特に更新拒否が発生してしまった場合は、慌てて次の住まいを探さなければならないだけでなく、リタイヤ後で収入がないために賃貸住宅がなかなか借りられないなど、困った事態にもなりかねません。売却前にはリースバックの条件を確認し、不都合なことが発生しそうな場合はしっかりと交渉しておく必要があります。
将来リースバックをする可能性がある場合は、管理しやすい物件を購入しておくことが無難です。例えば、組み込み式エアコンなどの修理費用が割高で修理の手間がかかるような設備は、新しいオーナーが敬遠する可能性があります。
今回のポイントを考慮した住まい選びを
老後の資金がどれくらい必要かなどによっても、適した方法は異なりますが、50代で住まいを替える場合は、今回お伝えしたポイントを考慮しながら慎重にすすめることが大切です。
20年勤めた不動産情報サービスの会社での経験を活かし、住まい探しが初めての方にも分かりやすい、生活者の目線に立った記事の執筆活動を手がける。
※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。
※ 2022年4月26日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。