マンション価格急上昇で中古一戸建てに注目が!

不動産市況関連トピックス

キービジュアル

近年、マンションの建設コストが上昇し、新築マンションの販売価格の上昇が続いています。地価の高騰に加え、震災復興や2020東京オリンピック・パラリンピック関連工事等による建設費高止まりの影響もあり、しばらくの間、価格が下落する可能性はそれほど高くはなさそうです。

新築マンションの価格高騰に伴って、中古マンションの価格も大幅にアップしています。公益財団法人東日本不動産流通機構のまとめたデータを例に見てみましょう。

2016年の首都圏成約価格はマンションが戸建を上回る

同機構に2016年、新規登録された首都圏の中古マンションの平均価格は3,095万円。前年よりも7.3%も上昇しています。さらにその前年には8.3%も上がっています。平米単価でみると価格高騰はより顕著で、2015年は11.9%、2016年は9.3%も上がりました。

こうした値上がりにもかかわらず中古マンションの成約状況は悪くありません。2014年は3万3798件でしたが、2015年は3万4776件、2016年は3万7189件と増加しています。成約価格も上昇し、平均成約価格は2014年が2,727万円、2015年が2,892万円、2016年は3,049万円となっています。

こうした中で注目されるのが、同じ中古住宅でも一戸建てはマンションと異なる傾向を見せていることです。下のグラフをご覧ください。首都圏の中古一戸建ての成約価格の平均は2009年以降ほとんど変わっていません。

キービジュアル

*公益財団法人東日本不動産流通機構のデータより作成

その結果、2016年には成約価格の平均に関して、中古マンション(3,049万円)が中古一戸建て(3,030万円)を上回ることになりました。2006年の時点の成約価格の平均は、中古マンションが2,236万円で、中古一戸建ては3,145万円でしたから900万円近い差を逆転したことになります。

マンションと一戸建ては立地、設備、構造など異なる要素も多いので、単純に比較はできませんが、首都圏における価格面では両者が拮抗していることを示しています。こうした価格動向を見ると、中古一戸建てに買い得感が感じられるのではないでしょうか。

「建物状況調査」と「既存住宅売買かし保険」で一戸建に潜むリスクを払拭

マンションと一戸建てはともに立地や設備に関しては目で見て確認することができます。しかし、一戸建てはマンションよりも建物の構造やコンディションについては把握しづらいという問題があります。

マンションには、ほとんどの場合管理組合がありますから、そこから設計図や維持管理の履歴の情報を得ることが可能な場合が多いはずです。一方、一戸建ては持ち主が設計図を保管していなかったり、維持管理の履歴を残していなかったりするケースも珍しくありません。こうした情報は、購入後の維持管理コストの判断に不可欠です。

柱や梁等の構造部や基礎、あるいは屋上や外壁の防水等は、通常目視で確認することが難しいポイントです。ただ、マンションの場合、これらについても管理組合などのチェックが行われていることも多いのでリスクは小さくなります。一方、一戸建ては所有者がこうしたポイントをチェックしているケースは多くはないのでリスクは大きくなるという問題があります。

こうした一戸建てのリスクを回避するために、今注目されているのが「建物状況調査」と「既存住宅売買かし保険」です。建物状況調査とは、建物の欠陥や劣化具合について、建築士等のプロが診断する住宅検査です。建物のコンディションに関して通常は目視できない部位までチェックするので、建物の状況が明確になるメリットがあります。

インスペクションの主な検査項目例(中古一戸建て住宅の場合)

キービジュアル

*みずほ不動産販売資料から引用

「既存住宅売買かし保険」は、中古住宅の購入・引渡後、基本性能に万一何らかの瑕疵が見つかった場合、補修費用をカバーしてくれるもの。対象となるのは基礎や柱、梁等構造耐力上主要な部分や屋根や外壁等、雨水の浸入を防止する部分等で、建物状況調査後に一定の要件を満たした場合、申込み可能となります。

建物状況調査や既存住宅売買かし保険を利用することは、買主だけでなく売主にとってもメリットがあります。建物状況調査を実施すると、第三者がチェックした「検査済み物件」としてPRでき、セールスポイントになります。

このように、メリットの多い仕組みですが、まだそれほど普及していないのが実態です。しかし早晩、一般化していくことが考えられます。例えば、建物状況調査に関する規定が盛り込まれた宅地建物取引業法(宅建業法)が2018年4月1日に施行され、制度の認知や普及に弾みが付く見込みです。

現状では、買主、売主のどちらが建物状況調査費用を負担するかはっきりしない中で、仲介業者が負担するようなサービスも登場し始めました。例えば、みずほ不動産販売では「〈みずほ〉の建物状況調査サービス」として、一定の要件を満たした場合に建物状況調査費用を負担するサービスを開始しました。さらに、建物状況調査の結果、「既存住宅売買かし保険」への加入が「可」と判定された場合には、買主に対する「既存住宅売買かし保険」の加入費用も負担するサービスも提供しています。

<みずほ>の建物状況調査サービスの詳細はこちらから
建物状況調査サービス 建物状況調査サービス

公益財団法人東日本不動産流通機構によると、2016年首都圏の中古一戸建ての新規登録数は6万1788件と中古マンション(19万4336件)の3分の1にすぎません。空き家問題が注目される中で、今後こうした建物状況調査や既存住宅売買かし保険の活用によって、これまで流通していなかった一戸建てストックも市場に多く出回ってくることが期待できます。価格面でも割安感が出つつある中古一戸建てに目を向けると、住宅購入チョイスも大きく広がっていくでしょう。

執筆

谷内 信彦 (たにうち・のぶひこ)

建築&不動産ライター。主に住宅を舞台に、暮らしや資産価値の向上をテーマとしている。近年は空き家活用や地域コミュニティにも領域を広げている。『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP社・共著)

  • ※本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。