- 相続税を申告した人のうち1割以上に税務調査が入っている。
- 相続税申告後、数年経ってから連絡がくることもあり、税務調査の入った件数の8割以上の人が修正申告をしている。無申告の人への調査も積極的に行われている。
- 実地調査では、調査官から質問を受けるだけでなく、財産にかかわる資料の提示を求められる。事前に税理士等に相談してしっかり準備しておくことが重要。
50代の売却。~親から相続した不動産を売却するまでのステップ~
第八話「相続税の税務調査について知る編」
【Gさん】
Gさんの父親は30年前に他界。母親は20年前まで都内の中心部にある一戸建てで暮らしていましたが、整備計画により売却。そこで得た現金で、都内に区分所有マンションを三戸(一戸は自宅、二戸は賃貸)購入し、所有していました。そのような中、母親が室内で転倒し骨折。入院生活で次第に体力が低下し、他界してしまいます。遺言書はなく、慌てる2人兄弟のGさんとGさんのお兄さん。遺言書があればな・・・、不動産の組み換えをすすめておけばよかったな・・・など後悔しながら、売却へ向けて動き出しているところです。
相続税申告後、数年経ってから連絡がくることもある税務調査
税務調査というと、会社や個人事業主など何かしらの事業を経営している人が対象、と思っている方も多いようですが、相続税を支払った個人も調査を受けることがあります。全員が必ず受ける調査ではありませんが、申告した人のうち1割以上に税務調査が入っています。
税務調査は、相続税を申告してすぐに入るというわけではありません。例えば、「平成30事務年度における相続税の実地調査(自宅に調査官がくること)の状況」で見てみると、平成28年に発生した相続を中心に、申告書に申告漏れが見られるものや、申告義務があるのに無申告だったケースなどで実施されています。実施件数は12,463件、このうち申告漏れなどの非違があった件数は10,684件で、申告漏れ課税価格は3,538億円(1件当たり2,838万円)となっています。この数値からも分かるように、実施件数のうち非違のあった割合は85.7%となっており、実に8割以上の人が修正申告をしている、ということになります。
ちなみに、申告漏れ相続財産の金額の内訳は、現金・預貯金等が1,268億円と最も多く、次いで土地422億円、有価証券388億円、家屋69億円となっています。
税務署では、無申告の人への調査を徹底して実施
自分は課税対象外と勘違いするなど、無申告の人が増加傾向にある点も否めません。無申告の疑いがある実地調査は1,380件(前年比113.5%)実施され、申告漏れの非違があったものは1,232件(前年比120.2%)、追徴税額の総額は101億円(前年比115%)となっています。勘違いも含まれているとはいえ、無申告の人を放っておくのは納税義務をしっかり果たしている人がいる中では公平さを欠いてしまうことになってしまいます。そういった視点から、税務署では資料情報の収集や活用などをしっかり行い、無申告の人を積極的に調査しています。
実地調査はどのように実施されるのか
いきなり調査官が自宅にやってくるというのは稀なケースで、一般的には税務署から電話などで事前連絡が入ります。そこで日程調整を行い、調査日が決定します。当日は、調査官・相続人の代表者のほか、税理士等が立ち会って調査が進んでいきます。その間、相続人はいくつかの質問を受けることになりますが、聞かれる質問には下記のようなものがあります。
- ●被相続人の入院期間:入院期間中に預金を下ろした人を把握するため
- ●相続人の勤務先:年収と預金残高の妥当性を確認するため
- ●申告した以外の銀行情報:すでに把握している場合もあり
通常は、朝の10時から17時ぐらいまでで、終わらない場合は翌日等にもち越されることもあります。
調査前はしっかり準備を
実地調査では、質問を受けるだけでなく、財産にかかわる資料の提示を要求されます。例えば、銀行の通帳・生命保険証書・不動産の全部事項証明書・固定資産評価証明書などになりますが、過去にさかのぼって詳細を聞かれることもあるので幅広く用意しておく必要があります。調査というと緊張してしまうかもしれませんが、質問に正しく答え、資料をしっかり用意しておけば問題ありません。調査が入ることになったら、立ち会ってもらう税理士等に早めに連絡し、しっかり準備をしておくようにしましょう。