50代の売却。~親から相続した不動産を売却するまでのステップ~第一話「相続の基礎編」

漫画で見る不動産購入・売却のポイントvol.65

この記事の概要

  •  いきなり独断で専門家に依頼したりせず、まずは相続人を集めて今後の方針について話し合うことが必要。
  •  相続する不動産があり売却を考えているなら、各種士業とのネットワークが確立している不動産会社に相談するというのもひとつの方法。
  •  まずは相続人の調査が必要。相続人が確定したら相続財産の調査をし、だれにどのように分割するのかを遺産分割協議で話し合う。まとまったら、遺産分割協議書を作成する。
  •  不動産の相続登記は必須ではないが、手続きをしないと売却できない。

50代の売却。~親から相続した不動産を売却するまでのステップ~第一話「相続の基礎編」
50代の売却。~親から相続した不動産を売却するまでのステップ~第一話「相続の基礎編」

【Gさん】
Gさんの父親は30年前に他界。母親は20年前まで都内の中心部にある一戸建てで暮らしていましたが、整備計画により売却。そこで得た現金で、都内に区分所有マンションを三戸(一戸は自宅、二戸は賃貸)購入し、所有していました。そのような中、母親が室内で転倒し骨折。入院生活で次第に体力が低下し、他界してしまいます。遺言書はなく、慌てる2人兄弟のGさんとGさんのお兄さん。遺言書があればな・・・、不動産の組み換えをすすめておけばよかったな・・・など後悔しながら、売却へ向けて動き出しているところです。

人生に何度とない相続手続き。注意点や知っておきたいポイントは?

相続の手続きは手間がかかるだけでなく、きちんと進めないとトラブルに発展してしまうこともあります。まず相談すべきは兄弟姉妹など他の相続人です。最初から専門家に頼むほうがスムーズなのでは?と考えるかもしれませんが、独断で専門家に頼んでしまうと、気分を害してしまう相続人もいるかもしれません。段取りはみんなで話し合って決め、自分たちで解決できること・できないことを整理したら、専門家に頼むという流れが好ましいと言えます。

専門家といっても内容によって依頼先は異なります。基本的な手続きは行政書士、不動産の名義変更(以下、相続登記)は司法書士が請け負っています。ただ、個人が専門家それぞれに頼むのは大変なもの。例えば相続する不動産があり、売却を考えているなら、各種士業とのネットワークが確立している不動産会社に相談するというのもひとつの方法です。名義変更から売却までワンストップでお願いできるので、スムーズに進められるでしょう。

相続手続きの流れ

最初に確認するのは、遺言書の有無です。遺言書が複数見つかるケースもありますが、最新の年月日が記載されているものが有効となります。一般的に自筆証書遺言の場合は家庭裁判所の検認が必要となりますが、公正証書遺言では検認の手続きは不要です。

自宅に封がしてある遺言書があった場合は、絶対に開封しないこと。この行為は民法第1004条に違反することとなり、過料(金銭を徴収する制裁の一つ。罰金や科料と異なり刑罰にはあたらない)を科せられることもあります。封は開けずに、家庭裁判所で検認してもらうようにしましょう。

次に、相続人の調査が必要になります。この調査をしっかりせずに進めてしまうと、後々面倒なことになりかねません。例えば、被相続人の戸籍を取り寄せてみたら、離婚歴があってほかにも子どもいたという事例。分割が決まったあとで新たに相続人が出てきた場合は、最初からやり直しになってしまうので注意が必要です。

相続人が確定したら相続財産の調査をし、だれにどのように分配するのかを遺産分割協議で話し合うことになります。遺産分割協議で話がまとまったら、全員が署名・捺印した遺産分割協議書を作成して文書に残します。

遺産分割協議はスムーズにいく場合ばかりではありません。相続税の納税は相続の開始があったことを知った日(通常、被相続人が亡くなった日)の翌日から10カ月以内に済ませなくてはなりませんので、できるだけ早く取り掛かるのが賢明でしょう。

不動産は相続登記をしないと売却できない

不動産を相続した場合は、早めに相続登記をすることがポイントです。相続登記は必須ではありませんが、手続きをしないと売却できません。また、相続登記をしない状態で自分にもしものことがあった場合は、子世代が手続きをしなくてはなりません。自分の代より相続人が増えてしまうこともあるため、相続人の総意を得るのがより煩雑になるだけでなく、手続きのステップも増えてしまいます。次世代に負担をかけないためにも、自分の代で相続登記は済ませておくようにしましょう。

また、被相続人が不動産を賃貸していたなど所得があり、かつ年度の途中で亡くなった場合は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内に、相続人が準確定申告の手続きと納税をする必要があります。

資産より負債のほうが多い場合は

相続するといっても、プラスの資産ばかりとは限りません。もし、相続したくないと判断した場合は『相続放棄』を選択することが可能です。その際、被相続人の住所地にある家庭裁判所へ相続放棄申述書、被相続人の戸籍附票、相続放棄する相続人の戸籍謄本を提出する必要があります。申請期限は、相続を知った時から3カ月以内となっていますので、遅延のないように注意しましょう。また、後から巨額の資産が出てきて相続したいとなっても、相続放棄は取り消すことはできないという点も覚えておきましょう。

放棄した分は、別の相続人に権利が移るということになります。ただし、自分の手続きが済んだからといって該当する相続人へ役所から連絡がいくということはありません。親族同士のトラブルに発展しないよう、相続放棄した旨や負債状況などを自ら伝え、あわせて相続放棄してもらうなどの配慮が必要でしょう。

執筆

橋本 岳子 (はしもと・たかこ)

20年勤めた不動産情報サービスの会社での経験を活かし、住まい探しが初めての方にも分かりやすい、生活者の目線に立った記事の執筆活動を手がける。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2020年5月29日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。

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