- 賃貸用住宅の経営を親から引き継いだ場合は、入居者を募るために、設備のトレンドを把握したり適切な修繕を実施したりする。また、各種トラブルにも対応することが必要。
- 賃貸用住宅の管理には、管理会社に委託するパターンと自主管理がある。
- 親が元気なうちから賃貸経営に関わり、さまざまなトラブル対応について学んでおくことが重要。不動産が負動産にならないよう、生前にできることはやっておいてもらうのもポイント。
- 賃貸経営をしていく上で想定される問題点には、空室期間が長い・入居者トラブルなどがある。それぞれの対策を把握しておくようにする。
50代の売却。~親から相続した不動産を売却するまでのステップ~第六話「親が賃貸用住宅を所有。生前から経営に関わることが重要編」
【Gさん】
Gさんの父親は30年前に他界。母親は20年前まで都内の中心部にある一戸建てで暮らしていましたが、整備計画により売却。そこで得た現金で、都内に区分所有マンションを三戸(一戸は自宅、二戸は賃貸)購入し、所有していました。そのような中、母親が室内で転倒し骨折。入院生活で次第に体力が低下し、他界してしまいます。遺言書はなく、慌てる2人兄弟のGさんとGさんのお兄さん。遺言書があればな・・・、不動産の組み換えをすすめておけばよかったな・・・など後悔しながら、売却へ向けて動き出しているところです。
賃貸経営の基本を知っておきましょう
賃貸経営は、部屋を用意して終わりではありません。すでに入居者がいる物件であれば、退去しない限りは家賃収入が得られるので安心感はありますが、入居者がいない場合は、入居希望者を募る必要があります。最近のお部屋探しはインターネットで検索してから・・・というのがほとんど。まずはインターネット上の物件情報でお部屋の状態がチェックされることになるので、募集の際には室内の見せ方が重要なポイントとなります。また、設備情報なども掲載されるので、人気設備のトレンドを意識することも必要です。“ニーズに応えられる物件が入居につながる”という点を常に念頭に置くことが、安定経営の第一歩と言えるでしょう。
入居者が決まってもやることは多岐に渡ります。入居者の故意によるものではない設備故障等が発生してしまったときには、補修などに対応。また、家賃滞納、入居者同士のトラブルなどについても関わることになります。退去後はそのままでも構いませんが、汚れや破損がある場合は、募集をかけてもなかなか入居者が決まらない可能性があります。そうなると、思うように家賃収入が得られないばかりか、劣化が進めば資産価値が低下してしまいます。こまめにメンテナンスをして、良い状態をできるだけ長くキープできるようにし、空室期間を短くするというのが賃貸経営の基本スタンスです。ただし、メンテナンスにはお金もかかります。内容によって金額は異なりますが、例えば壁紙を1室張り替えたらいくら、水回りを取り替えたらいくらなど、おおよその相場は把握しておくようにしましょう。
管理については、管理会社に委託するか自主管理をするか、いずれかの方法をとることになります。前者は、募集、トラブル対応、管理全般、空室対策の提案など、賃貸経営に関することをトータルでサポートしてもらえるのがポイント。忙しい現代人にとってはうれしい存在といえますが、その分委託費がかかるという点は覚えておきましょう。一方自主管理は、管理業務すべてを自分で行うだけでなく、トラブルや空室対策にも対応しなくてはなりません。管理会社に委託するのに比べて、時間と労力がかかるという点を認識しておく必要があります。
親が元気なうちから賃貸経営に関わっておくことで、
承継後もスムーズに
賃貸経営で引き起こるさまざまなトラブル。長年関わっていればスムーズに対応できるかもしれませんが、経験値がない場合は戸惑ってしまうものです。中にはなかなか解決しないものや精神的に参ってしまうケースもあります。親が経営しているからと傍観するのではなく、親が元気なうちに賃貸経営に携わり、経験値を上げておくことが大切です。時には、具体的な対応方法を質問したり、アドバイスを受けたりするなど、物件だけでなく親が蓄積したノウハウも承継し、今後に備えておくようにしましょう。
親にお願いしておきたいポイント
賃貸経営に参加しながら、相続した後に不動産が負動産とならないよう“親ができることはやっておいてもらう”というのも重要です。そのまま賃貸経営を続けるにしても、売却するにしても、入居者がいるかいないかでその価値が大きく変わってきます。まずは、入居者がいる状態をキープするために、日ごろのメンテナンスをしっかりしてもらうようにし、退去が決まったら適切なリフォームやリノベーションを実施してもらうようにしましょう。また、いくら補修しても建物自体の老朽化や立地など、自分では改善できないことが理由で入居者が見込めない場合は、売却という選択肢もあります。
賃貸経営のよくある問題点と一般的な対策
親が元気なうちに賃貸経営に参加することで、注意すべき点や対処法などが見えてきます。ただ、想定されるすべての問題点に直面できるというわけではありません。ここでは、賃貸経営をしていく上で想定される問題点とその対策について説明します。
●空室期間が長く、なかなか決まらない
→空室期間中は家賃収入がないので、賃貸経営が計画通りにいかない可能性がある。下記対策を実施しても効果が期待できない場合は売却という選択も。
<主な原因と対策>
- ・設備がニーズに合致していない:不動産会社に相談し、トレンド情報を収集したりアドバイスをもらったりする。検討後、設備交換を実施する。
- ・建物が古い。メンテナンスが行き届いていない:汚れや破損部分を確認し、リフォームやリノベーションを実施する。
- ・近隣相場よりも家賃が高い:家賃の見直しが簡単な方法だが、固定収入が減るのは経営上のネガティブポイントにも。敷金・礼金の見直しやフリーレント※期間を設けるなどし、初期費用を抑えるというのもひとつの方法。
※入居時から一定期間家賃を無料にすること
●入居者トラブル
→しっかり対応しないと、退去につながってしまうことがある。トラブルに発展してしまう可能性もあるため、不動産会社等に相談しながら進めるのが望ましい。
<主な原因と対策>
- ・物件に瑕疵(かし)がある:日常生活に不便を感じてしまうと、入居者の満足度が下がってしまう。瑕疵部分を確認し、できるだけ早く対処する。
- ・家賃滞納:理由や状況を把握する。督促しても支払ってもらえない場合は、契約解除を。
- ・生活マナーの欠如:文書や口頭などで問題点を入居者に伝える。改善されない場合は、契約解除という選択も。自己物件の入居者だけでなく、隣室や上下階の入居者の騒音などについては、その部屋の管理者と連携をとりながら対処する。
賃貸用住宅は、“自分が住むための不動産とは違う”という目線でとらえること
賃貸用住宅を引き継ぐ場合は、安定した賃貸経営を模索したり売り時・買い替え時などを見極めたりする必要があります。想像以上に労力がかかることになるので、早いうちから関心を持って、改善点や疑問点などはクリアにしておくようにしましょう。また、一戸しか所有していない場合は、リスクヘッジができないという懸念点があります。安定経営を継続していきたいのであれば、効果が期待できる物件を増やすというのも選択肢のひとつ。あらゆるパターンを模索していくようにしましょう。
20年勤めた不動産情報サービスの会社での経験を活かし、住まい探しが初めての方にも分かりやすい、生活者の目線に立った記事の執筆活動を手がける。
※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。
※ 2020年10月30日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。