50代の売却。~親から相続した不動産を売却するまでのステップ~第二話「名義変更せず、放置していた場合のリスク編」

漫画で見る不動産購入・売却のポイントvol.66

この記事の概要

  •  不動産の名義変更とは、対象となる不動産の所有者を変更すること。法務局へ所有権移転登記を申請する必要がある。
  •  相続に伴う不動産の名義変更には、期限や法的なしばりがないこともあってか、手続きがされていないケースも散見される。
  •  遺産分割協議や名義変更を終える前に相続人の誰かが亡くなってしまうと、相続人が増えて手続きがより煩雑になることもある。次世代に負担をかけないためにも、早めに手続きをしておいたほうがよい。

50代の売却。~親から相続した不動産を売却するまでのステップ~第二話「名義変更せず、放置していた場合のリスク編」
50代の売却。~親から相続した不動産を売却するまでのステップ~第二話「名義変更せず、放置していた場合のリスク編」

【Gさん】
Gさんの父親は30年前に他界。母親は20年前まで都内の中心部にある一戸建てで暮らしていましたが、整備計画により売却。そこで得た現金で、都内に区分所有マンションを三戸(一戸は自宅、二戸は賃貸)購入し、所有していました。そのような中、母親が室内で転倒し骨折。入院生活で次第に体力が低下し、他界してしまいます。遺言書はなく、慌てる2人兄弟のGさんとGさんのお兄さん。遺言書があればな・・・、不動産の組み換えをすすめておけばよかったな・・・など後悔しながら、売却へ向けて動き出しているところです。

期限や法的なしばりはないが…

名義変更をしないと不動産売却ができませんが、名義変更をしていないからといって法的に罰せられることはなく、いつまでに手続きを済ませなくてはならない、などの決まりはありません。このように法的なしばりがないため、名義変更をしないで空家のまま放置しているというケースが増え、最近では社会問題ともなっています。特にあまりメリットを感じないような物件の場合は、面倒な手続きをし、登記費用を支払ってまで相続したくないという声が多く出ているようです。

名義変更をしないまま住み続けているというケースも多いようで、親が亡くなって相続の手続きをはじめたところ、不動産の名義が祖父や祖母のものになっていて慌ててしまった、というようなお話を聞くこともあります。

不動産の名義変更をするには

“だれが所有している不動産か”というのは法務局の登記簿で管理され、一般公開されています。不動産の名義変更とは、対象となる不動産の所有者を変更すること。名義を変更するためには、法務局へ所有権移転登記(相続登記)を申請する必要があります。準備する書類は遺言の有無などでケースバイケースですが、主なものは以下のとおりです。

●被相続人(亡くなった方で不動産の所有者)の書類

・出生から死亡までの経緯を確認できる戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍
または、
・登記簿上の住所および本籍地の記載がある住民票の除票もしくは戸籍の附票

●相続人

・戸籍謄本または抄本/相続人全員分
・住民票/新しい名義人のもの

●その他

・名義変更をする年度の固定資産評価証明書
・相続関係説明図/被相続人と相続人の関係が分かる図
・遺産分割協議書
・印鑑証明書 など

など。

提出書類に不備があると時間や労力が思った以上にかかってしまいます。不動産の名義変更は司法書士が請け負っているので、手続きが面倒だなと感じたり、忙しくて時間を取れそうにないと思ったりした場合は、依頼すると安心でしょう。また、名義変更だけでなく売却を考えている場合は、司法書士とつながりのある不動産会社に相談してもよいでしょう。

名義変更をしていない場合に考えられるリスク

法的なしばりはないとは言っても、名義変更をしないままでいると、いざその不動産を売却する際にスムーズに売却できずに大変な労力をかけることになってしまいます。例えば、自分の代で名義変更せず、次世代の相続人(子供)が名義変更をするケースの場合、自然と相続人の数も増えてしまっていることが多く、もしかすると相続人が見つからず遺産分割協議が進められないという事態も。揃った人だけで進めればいいのでは?と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、遺産分割協議による名義変更の場合、現状のルールでは遺産分割協議書に相続人全員の署名・捺印が必要です。

また、何世代も持ち越されてしまった場合には、証明書の保管期限が過ぎてしまい、必要書類が揃わないというケースが起こることもあります。書類に不備があると手続きが進まないだけでなく、申請を通すための特別な手続きが必要となるため、手間や費用がかさんでしまうでしょう。

自分たちが手続きを先延ばしにしたために、次世代が多くの時間を取られてしまうのは残念なこと。亡くなった直後はさまざまな手続きや税金の支払いなどが発生し、どうしても期限付きのものを優先させがちですが、不動産の名義変更も忘れずに行うようにしましょう。

執筆

橋本 岳子 (はしもと・たかこ)

20年勤めた不動産情報サービスの会社での経験を活かし、住まい探しが初めての方にも分かりやすい、生活者の目線に立った記事の執筆活動を手がける。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2020年6月30日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。