都心への住み替えを考える~Iさん家族の場合~(第五話「売りやすく貸しやすい住宅編」)

漫画で見る不動産購入・売却のポイントvol.54

この記事の概要

  •  住宅購入時は自分たちが住むという視点のほか、売却や賃貸に出す場合のことも考えておく必要がある。
  •  立地の良い物件、無難な間取り、管理が行き届いている中古マンションなどは売りやすく貸しやすい傾向にある。
  •  ヴィンテージマンションとは、築年が経過しても価値が大幅に下がらない、もしくはその価値が上昇するマンションのこと。
  •  今の生活を充実させることも大事だが、長い目で見た不動産の価値も視野に入れておくとよい。

第五話「売りやすく貸しやすい住宅編」

【Iさんファミリー】
Iさんは40代半ばの都心に通うサラリーマン。妻と小学生・幼稚園児の娘二人と海に近い一戸建てで暮らしている。第一子が生まれたタイミングで自然に囲まれたところで子育てをしたいと郊外の駅から徒歩20分の所に注文住宅を建築。通勤時間も我慢のできる範囲と考えていた。しかし、最近は責任のある仕事を任せられることが増え、できれば通勤時間を短縮してその分業務時間にあてたいと思うようになってきている。

住宅購入時は、自分たちが住むという視点だけでなく、売却や賃貸に出す場合のことも考えておく

マイホームを購入する際、まず行いたいのが希望条件の整理です。あいまいなまま物件探しを進めると、どの家も一長一短があってなかなか決められない・・・ということになってしまいます。
希望条件は家族で話し合って決めるのがベストですが、そこに住むという視点だけでなく、売却や賃貸に出す場合のことも考えておく必要があります。
今回はどのような条件の不動産が、売りやすく・貸しやすいのかを見ていきましょう。

立地の良い物件は、買いたい人・借りたい人が見つかりやすい

一般的に、立地が良い物件というのは、最寄り駅から近い、商業施設や病院、学校が近隣にあるなど、交通の利便性や周辺環境に恵まれている物件のこと。継続的に資産価値の高さを感じられるほか、買い手や借り手が見つかりやすいというのも特徴です。いくら立派な家を建てても、立地に難のある場合は時が経過するにつれてその建物価値は確実に下がってしまいます。一方立地の良い物件は、価値の下がり方がゆるやか、もしくは物件の供給が少ないエリアであれば、その価値が上がることもあります。住んでいる間に気になることが出てきたら、建物や室内はリフォームやリノベーションをしてガラリと変更することも可能ですが、立地は引越さない限り変えることはできません。購入時には、立地の良さについてもしっかり検討するといいでしょう。

無難な間取りのほうが売却・賃貸時のハードルが低い

夢のマイホームを手に入れたら、さまざまなこだわり条件を取り入れたいというのは当然のことです。当初は4LDKのファミリータイプだったとしても、広々とした空間で暮らしたいという理由から可能な限り壁を取り払っているケースもあるでしょう。しかし、このような間取りは売却や賃貸時に苦戦してしまうこともあります。
例えば、住宅購入時に“子供に部屋を持たせてあげたい”という希望をあげるファミリーは多いもの。家族団らんができるという点では広いLDKは魅力的かもしれませんが、子供部屋を確保するためには新たに壁を取り付ける必要が出てきてしまいます。“このまま住めないならちょっと考えようかな・・・”という理由から、なかなか成約に至らないということが考えられるというわけです。できるだけ多くの人のニーズに応えられるような、無難な間取りのほうが売却・賃貸時のハードルが低いと言えます。

中古マンションは管理状況も重要ポイント

一戸建てと異なり、マンションはその管理状況も価値を左右する大きなポイントとなります。細部まで清掃が行き届いている、設備が適切にメンテナンスされている、というようなマンションは、快適に過ごせるだけでなく建物の寿命の長さにもつながります。
いくら各戸の住民が室内をきれいにしていても、共用部の印象が悪いようでは購入希望者や入居希望者を見つけることが難しいと言えるでしょう。なかなか決まらない場合は、希望額よりも大幅に値下げするなど条件の変更を求められることもあります。

今注目のヴィンテージマンションとは

ヴィンテージマンションとは、築年が経過しても価値が大幅に下がらない、もしくはその価値が上昇するマンションを指します。骨董品や熟成ワインなどに例えると分かりやすいかもしれませんが、その希少価値が評価されているということになります。条件としては、下記のようなものがあげられます。

  • ・需要は多いが新規に物件を建築する余地がない、希少性の高いエリアに立地している
  • ・著名な建築家が手がけたなど、デザイン性の高さが特徴
  • ・管理体制がしっかりしており、日常生活を快適、安心、安全に送ることができる
  • ・設備や各種サービスが充実している

希少性という点で注目が高まっていますが、1981年以前の旧耐震基準に合わせて建てられた物件も多いというのが実情です。検討時には耐震診断が実施されているのかどうかはチェックしておくと安心でしょう。

長い目で見た不動産の価値も視野に

ずっと住み続ける予定で購入しても、急な転勤などで売却や賃貸として貸し出すかどうかを検討しなくてはならない場合もあります。また、相続するケースを考えても、子孫にはできるだけ資産価値の高い不動産を残してあげたいものです。今の生活が充実できるような物件を購入するというのは重視して構いませんが、長い目で見た不動産の価値というのも加味しながらマイホーム探しを進めるといいでしょう。

執筆

橋本 岳子 (はしもと・たかこ)

20年勤めた不動産情報サービスの会社での経験を活かし、住まい探しが初めての方にも分かりやすい、生活者の目線に立った記事の執筆活動を手がける。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2019年9月27日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。