働き方改革とこれからの住まいの関係性を考える(第三話「労働条件を加味した住み替え編」)

漫画で見る不動産購入・売却のポイントvol.42

この記事の概要

  • 約63%の企業が働き方改革に前向きという結果に。
  • 働き方改革に前向きな企業に最も重視する目的を聞いたところ、1番多かったのが「従業員のモチベーション向上」。
  • テレワークには、技術者、事務職、営業職、管理職など多様な導入例があるが企業によっても異なる。従来の就業規則やテレワーク勤務規則などを見ながら企業側と話をし、認識に相違がないかを確認することは重要。
  • 「月数回の出勤であっても、通勤手当や通勤経路については必ずチェックし、負担の少ない住環境や就労環境を整えることが大切。

第三話「労働条件を加味した住み替え編」

【Eさんファミリー】
Eさんは東京駅近くのオフィスで働く30代のサラリーマン。結婚して5年が経ち、元気いっぱいの息子(2歳)と専業主婦の妻と一緒に、オフィスからドア・ツー・ドアで30分のところにある都内の賃貸マンションで暮らしている。勤務先は働き方改革の流れをくんで、必ずしもオフィスで仕事をしなくてもいいという方針に。息子を伸び伸びとした環境で育てたい、趣味のサーフィンをもっと気軽に楽しみたいと考えているEさんは、郊外でのマイホーム購入を検討中。

生産年齢人口の減少や仕事を続けながら育児や介護をする人が増えている昨今、現代のニーズに合った労働環境を整えることは企業にとって大きな課題となっています。そのような中、“働き方改革”という言葉を耳にする機会が増えたという方も多いと思いますが、その対応や認識は企業によってさまざまというのが現実です。
住宅購入時には、間取りや設備などのほか立地の希望条件を挙げることになりますが、会社に所属しながら無理なく仕事に向き合える場所であるかかどうかも、しっかり検討しておくことが大切と言えます。
※生産活動の中心を担っている、15歳以上65歳未満の人口のこと

働き方改革への取り組み状況。企業の37.5%が「取り組んでいる」という結果に

(株)帝国データバンクが2018年に実施した“働き方改革に対する企業の意識調査”(調査期間は2018年8月20日~8月31日、調査対象は全国2万3,099社で、有効回答企業数は9,918社回答率 42.9%)では、「取り組んでいる」(37.5%)、「現在は取り組んでいないが、今後取り組む予定」(25.6%)となり、約63%の企業が働き方改革に前向きという結果となりました。一方、「取り組む予定はない」という企業は15.1%、「以前取り組んでいたが、現在は取り組んでいない」が 2.6%となっています。

働き方改革への取り組み状況

働き方改革への取り組み状況 注:母数は有効回答企業9,918社(出典)
株式会社帝国データバンク「特別企画:働き方改革に対する企業の意識調査」(2018年)

働き方改革に前向きな企業に最も重視する目的を聞いたところ、1番多かったのが「従業員のモチベーション向上」(25.6%)となりました。次いで、「人材の定着」(19.8%)、「生産性向上」(15.9%)、「従業員の心身の健康(健康経営)」(15.4%)、「円滑な人材採用」(8.9%)となり、主に従業員が働きやすい環境作りに注力したい企業が多いことが分かります。
「取り組む予定はない」、「以前取り組んでいたが、現在は取り組んでいない」と回答した企業の主な理由は、「必要性を感じない」(37.6%)、「効果を期待できない」(34.1%)となり、導入自体に必要性や得られる効果を感じていないということが見受けられました。

働き方改革への取り組みで最も重視する目的※上位5項目

働き方改革への取り組みで最も重視する目的 注:母数は、取り組み状況について「取り組んでいる」または「現在は取り組んでいないが、今後取り組む予定」のいずれかを回答した企業6,259社
株式会社帝国データバンク「特別企画:働き方改革に対する企業の意識調査」(2018年)

2018年6月に「働き方改革関連法案」が可決・成立し、2019年4月1日に施行されることになりましたが、企業によってその意識に差があるのが現状のようです。

テレワークをする場合は、就業規則の確認を

働き方改革で注目すべきは、情報通信技術(ICT)を活用することで、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方が可能となるテレワークです。技術者、事務職、営業職、管理職など多様な導入例がありますが、製造現場に携わっている人などは導入が難しいなど、職種によっても実現可能かどうかが違ってきます。
また、テレワークという働き方を導入している企業であっても、それぞれ導入事例や考え方は異なります。“テレワークで働きたい”と考えた場合は、従来の就業規則やテレワーク勤務規則などを見ながら企業側としっかり話をして、認識の違いがないかを確認することは重要なポイントとなります。特に、光熱費等の費用負担、労働災害、人事評価制度などは曖昧になりがちなので、テレワークによって就業条件が不利にならないかという点には注意が必要です。

テレワークであっても、通勤手当や通勤経路のチェックは必須

例えば“子どもを自然豊かな環境で育てたい”という理由から、都心から郊外に住み替えて、テレワークで働くことを選択するとします。この場合、意外と盲点になりがちなのが通勤手当についてです。交通費に上限を定めている、通勤で有料の特急や新幹線などを利用した場合は会社負担としないなどの規定があるかどうかは確認しておきましょう。また、月に数回の通勤でも、乗り換えが多い、通勤時間が長すぎる上に座れない、車内が思った以上に混雑している、ちょうどいい時間帯に電車がこない、という点で負担を感じてしまうこともあります。平日の通勤時間帯に通勤経路をたどって状況をチェックするのはもちろんのこと、始発や終電の確認もするようにしましょう。自家用車や自転車で最寄駅までアクセスするのであれば、駐車場や駐輪場の空き状況、利用料金なども調べておくことが大切です。

住環境を重視することはもちろん大切ですが、生活の基盤を支える就労とのバランスをとることは必須です。テレワークのメリットを十分に感じるにはどうしたらいいのかをしっかり考えた上で、住み替え先について検討していくといいでしょう。

執筆

橋本 岳子 (はしもと・たかこ)

20年勤めた不動産情報サービスの会社での経験を活かし、住まい探しが初めての方にも分かりやすい、生活者の目線に立った記事の執筆活動を手がける。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2019年2月28日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。