働き方改革とこれからの住まいの関係性を考える(第一話「働き方改革で変わっていくこれからの暮らし編」)

漫画で見る不動産購入・売却のポイントvol.39

この記事の概要

  • 近年の日本では、投資や技術革新で生産性上げるだけではなく、就業機会を拡大したり、どんな人でも働きやすい環境を整備したりすることが課題となっている。
  • 課題を改善するために働き方改革が提唱され、2018年7月6日「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が成立した。
  • テレワークとは場所や時間を選ばない働き方のこと。通勤の負担が減るため、今までよりも自分のライフスタイルに合わせた住まい選びができるようになることが予想される。

第一話「働き方改革で変わっていくこれからの暮らし編」
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【Eさんファミリー】
Eさんは東京駅近くのオフィスで働く30代のサラリーマン。結婚して5年が経ち、元気いっぱいの息子(2歳)と専業主婦の妻と一緒に、オフィスからドア・ツー・ドアで30分のところにある都内の賃貸マンションで暮らしている。勤務先は働き方改革の流れをくんで、必ずしもオフィスで仕事をしなくてもいいという方針に。息子を伸び伸びとした環境で育てたい、趣味のサーフィンをもっと気軽に楽しみたいと考えているEさんは、郊外でのマイホーム購入を検討中。

多様な働き方が実現できる、働き方改革。提唱された経緯とその概要

近年日本は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立などの労働者のニーズの多様化」などに直面しています。このような背景の中、投資や技術革新で生産性を上げるのはもちろんのこと、就業機会を拡大したり、どんな人でも働きやすい環境を整備したりすることが課題となってきました。
働き方改革は、これらの課題を改善していくために提唱された改革です。安倍晋三首相は2016年9月に「働き方改革実現推進室」を設置。労働界と産業界のトップや有識者が集まった「働き方改革実現会議」において、「非正規雇用の処遇改善」「賃金引き上げと労働生産性向上」「長時間労働の是正」「転職・再就職支援」「柔軟な働き方」「女性・若者の人材育成や環境整備」「高齢者の就業促進」「子育て・介護と仕事の両立」「外国人材の受け入れ」といった【9つの分野】について話し合いを進め、2018年7月6日「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が成立しました。

【9つの分野】とそれぞれの方向性

  1. ①非正規雇用の処遇改善
    能力が適正に評価されるよう、雇用形態に関わらず同一労働同一賃金を導入する。
  2. ②賃金引き上げと労働生産性向上
    最低賃金の全国平均1,000円を目指す。生産性向上支援や取引条件の改善。
  3. ③長時間労働の是正
    時間外労働の上限違反に罰則を設ける。勤務間インターバル制度導入の努力義務を課す。
  4. ④転職・再就職支援
    転職者を採用した企業への優遇措置を拡大する。
  5. ⑤柔軟な働き方
    テレワーク普及に向けてガイドラインを改定。理由なく副業や兼業を制限できないことを明確にする。
  6. ⑥女性・若者の人材育成や環境整備
    人材育成のために学び直しの機会を拡充。
  7. ⑦高齢者の就業促進
    企業の受入れ体制を整備。病気と仕事が両立できるようなサポート体制を構築。
  8. ⑧子育て・介護と仕事の両立
    保育士・介護職員の賃金や待遇を改善。男性の育児参加を促進。
  9. ⑨外国人材の受け入れ
    生産性向上を目指し、外国人を積極的に受入れて育成する。

働き方改革と住まい選びの関係性とは

日々忙しく残業も多いビジネスマンにとって、職住近居は理想のスタイルでした。しかし、働き方改革の考え方が広まっていく中で、今までよりも通勤時間を気にせず住まいを選ぶことができる時代がやってくるのはそう遠い話ではありません。 【9つの分野】で見てみると、③の長時間労働の是正が進めば、残業などの時間外労働が抑制されるだけでなく、勤務間インターバル制度の導入で、勤務終了後一定時間以上の「休息時間」を取ることができるようになります。この考え方が平準化されれば、自分の時間や睡眠時間が確保できるので、会社の近くに住まなくても無理なく生活を送れるようになるでしょう。

また、テレワークなどの⑤の柔軟な働き方が進めば、毎日出社しなくても仕事が進められるようになります。テレワークは、「tele=離れた所」と「work=働く」を組み合わせた造語。場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことで、導入している企業は増加傾向にあります。自宅での作業も可能なため、⑧の子育て・介護と仕事の両立などとも合わせて今後スタンダードな働き方になっていくことが考えられます。趣味や家族との時間を充実させたいかたにとっても、テレワークは理想的なワークスタイルといえるでしょう。
国土交通省は「テレワークの普及にむけて」というガイドラインを発表。総務省も「テレワークセキュリティガイドライン」を発表し、安全にテレワークが遂行できる環境づくりについて提言するなど、各所でさまざな整備が進んでいます。

今までよりも、柔軟な住まい選びが可能に

かつては「働きバチ」「モーレツ社員」とも言われた日本人ですが、国だけでなく雇用者や被雇用者も労働に対する意識を変えていく必要がある時代になってきました。
このような働き方改革が進む中、住まい選びは今までより柔軟にできるようになることが期待できるでしょう。ご家族でもどのような暮らし方を希望しているのかを改めて話し合い、理想のマイホームを手に入れてください。

執筆

橋本 岳子 (はしもと・たかこ)

20年勤めた不動産情報サービスの会社での経験を活かし、住まい探しが初めての方にも分かりやすい、生活者の目線に立った記事の執筆活動を手がける。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2018年11月30日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。