【シリーズ連載】親子で暮らす?近くに住む?二世帯住宅と近居を考える(第六話「親子が仲良く暮らすためのポイント–近居?同居?編–」)

漫画で見る不動産購入・売却のポイントvol.36

この記事の概要

  •  戦前の日本は親世帯・子世帯の同居が多い傾向にあったが、戦後は核家族化が進んでいる。また2000年以降は、専業主婦世帯よりも共働き世帯が多い傾向にある。
  •  共働き世帯は、子どもの急な発熱など仕事と子育ての両立に悩むことも多い。
  •  近居と同居という視点から見ると、親も子もそれぞれの生活を尊重しながら、いざというときに助け合える“近居”を選択したり望んだりする人が目立つ傾向。いずれにしても、互いを理解しながら生活することが大切と言える。

第六話「親子が仲良く暮らすためのポイント–近居?同居?編–」

【Aさん・Bさん親子】
親のこれからについて、心配するようになってきた共働き夫婦のAさん。結婚後は電話やメールで連絡を取り合っていたが、最近子どもができたことで親との同居や近居を検討中。親世帯のBさんは、子育てがひと段落して夫婦水入らずの生活を送っていたものの、息子夫婦のこれからを考えて、できる限り協力したいと考えている。

戦前~現代と、大きく変わった家族形態

戦前までは、“長男が跡継ぎとして家を存続させる”という考え方が一般的で、長男夫婦は親と同居して互いに助け合いながら生活を送っている姿が多く見られました。戦後、高度経済成長を迎えた日本は、その働き方や生活スタイルの変化などで核家族化が広がっていきます。全国転勤も珍しくなくなり、親との同居を続けながら転勤を繰り返すというのも現実的ではないといった考えから、子世帯だけ・親世帯だけという暮らし方が主流となっていったのです。また、父親は外で働き、母親は子供が生まれたら家庭に入り、子育てをしながら家を守るという専業主婦世帯が共働き世帯よりも多い時代が続いていました。
その後、男女雇用機会均等法の施行によって女性の社会進出が進み、2000年ごろには共働き世帯の数が専業主婦世帯を上回るようになります。保育園の待機児童やマタニティハラスメントなどが社会的な問題となるなど、共働き世帯の増加に伴って、新たな課題が生まれる時代となりました。

共働き夫婦が直面する、子育てと仕事を両立させることの難しさ

産前・産後休暇と育児休暇をとり、無事保育園が決まったと安心していても、子どもは急に発熱したりするものです。業務中に保育園から電話がかかってきて急遽お迎えにいかなくてはならないなど、不測の事態が起きるということも常に考えておく必要があります。また、集団生活の中では伝染病が流行ることも多く、法定伝染病に罹った場合は一定期間通園停止となります。病児保育を取り入れている保育園もありますが、その受け入れ数は十分とはいえないのが実情です。
病気が治るまで寄り添ってあげたいものですが、重要な商談や会議を控えていることもあるでしょう。夫婦のどちらが休むかのと頭を悩ませた経験がある方も多いのではないでしょうか。

ゆるやかにつながれる“近居”を望む人が増えている

子育て世帯が増えている昨今、 “近居”という住まい方を選択したり望んだりする方が目立つようになりました。本シリーズの第一話「二世帯住宅の基本編」で紹介した東京で住む長男を持つ親(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県以外に居住)が対象のアンケートで、“同居したいと思わない”人に“近居”をしたいかを聞いたところ、43.8%の人が“したい”という回答としたという結果からも、同居までは望まなくても近居ならしたいという層がいることが分かります。
近居の特徴は、お互いの生活スタイルは尊重しつつ、必要なときにすぐに助け合えるという“ゆるやかにつながっていられる親子関係が構築できる”という点です。子世帯は、保育園のお迎えが間に合わないときは親にサポートしてもらう、親世帯は買い物を手伝ってもらったり、通院に付き添ってもらったりするなど、何かのときに頼りにしあえるでしょう。

同居をする場合、子世帯は育児だけでなく炊事・洗濯なども親に助けてもらうことが多くなる傾向にあります。子世帯はその分仕事に取り組めることがメリットですが、頼りすぎてしまうといつの間にか親の負担が大きくなり、ストレスにつながってしまうケースもあります。同じ屋根の下で暮らすからこそ、日々の気遣いを忘れないことが大切です。

近居、同居とも互いを理解しながら生活することが大切

第一話~第六話まで、さまざまな視点から近居と同居について見てきましたが、どちらを選択するにしても、互いを理解しながら生活することが仲良く暮らすためのポイントです。まずはしっかりと話し合い、全員が納得したうえで新しい生活をスタートさせてください。

執筆

橋本 岳子 (はしもと・たかこ)

20年勤めた不動産情報サービスの会社での経験を活かし、住まい探しが初めての方にも分かりやすい、生活者の目線に立った記事の執筆活動を手がける。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※  2018年10月31日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合があります。

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