- 長い間、人が住んでいなかった空き家を売却した場合は、把握していない瑕疵(かし)が見つかることも多く、買主とのトラブルが発生する可能性がある。
- 瑕疵とは、欠陥や欠点・傷などを意味する言葉。民法では「隠れたる瑕疵」が見つかった場合、「瑕疵担保責任」といって売主が買主に対して損害賠償を負う責任がある。(当事者間の調整で契約内容も変わる場合あり)
- 屋根の欠陥による雨漏りやシロアリの被害などの「隠れたる瑕疵」以外にも住宅機器の不具合などの報告も多い。売却後にトラブルに見舞われては残念なこと。既存住宅のインスペクションをしてくれたり、住宅設備を修理してくれたりなど、さまざまなサービスが受けられる不動産会社であれば安心感が得られる。
第5話 不動産会社選択編
【Bさんファミリー】
夫55歳会社員、妻54歳専業主婦。2人の息子(29歳、24歳)はそれぞれ独立したため、1年前に家族で過ごした住まいは売却し、夫婦2人暮らしに合ったコンパクトで利便性の高い住まいに住み替え。
空き家売却時におきやすいトラブル
長い間、人が住んでいなかった空き家を、相続してそのまま中古住宅として売却する場合は、「隠れたる瑕疵(かし)」が見つかることも多く、買主とのトラブルが発生する可能性があります。瑕疵とは、欠陥や欠点・傷などを意味する言葉。民法では「隠れたる瑕疵」が見つかった場合、「瑕疵担保責任」といって売主が買主に対して損害賠償を負う責任があります。(当事者間の調整で契約内容も変わる場合あり)
「隠れたる瑕疵」とは、売買契約時に買主が知らなかった・把握していなかった瑕疵を指します。例えば売買契約を済ませた後、「建物の傾きを感じたので調べてみると、土台がシロアリによってボロボロになっていた」「引っ越してから雨漏りに気付いたので調べてみたところ、屋根に欠陥があった」などのケース。これらが売買契約時に存在していた「隠れたる瑕疵」と認められれば、売主は買主に対して「瑕疵担保責任」を負うことになり、買主は売主に損賠賠償を請求したり、売買契約の解除を申し出たりすることができます。瑕疵発覚後、買主が1年以内に申し出なければ無効となる旨は民法によって定められていますが、売主が責任を負うべき期間は契約によって異なるので注意が必要です。
また、住宅設備の故障なども起こりやすいトラブルのひとつです。引き渡し後、ガス給湯器が備わっているのにお湯が出ない、浴室乾燥機が作動しないなど、設備があるにもかかわらず使えなかったというような事例もあります。売主は、引き渡し後から7日間は主要となる住宅設備の修復義務※があります。引き渡し時に使用可能だったとしても、7日以内に動かなくなった場合はこういった責任を追う必要があることは覚えておきましょう。
※住宅設備の修復義務は、(一社)不動産流通経営協会作成の標準書式にて定められています
さまざまなサービスがあると“万が一の場合”でも安心
売却できたとしても「隠れたる瑕疵」などのトラブルが発生し、金銭的な負担が増えてしまっては残念なことです。そんな時は、既存住宅のインスペクション(住宅検査)を紹介してくれる不動産会社であれば、シロアリの害や屋根の欠陥などの瑕疵があったとしても事前に把握できるケースが多いので安心です。「中古住宅は、どんな瑕疵が隠れているかわからない。購入後にいろいろと不具合がでてくると困る」というような理由から敬遠される購入希望者もいらっしゃいますが、検査済み物件であれば安心感の提供が可能。引き渡し後のトラブルも少なくなるので、「売主」「買主」いずれにもメリットがあります。耐震診断では一定の要件を満たせば耐震適合証明書が発行され、減税を受けることが可能なケースもあるので、このようなサービスがあるかどうかもチェックしてみるといいでしょう。
媒介契約後に売主が建物状況調査を実施し、瑕疵保証への加入が可能と判定された場合、買主の瑕疵保証への加入費用を負担してくれる不動産会社もあります。一定の要件を満たす必要はありますが、こういったサービスが受けられるというのも不動産会社選びのポイントと言えるでしょう。
住宅設備に不備が生じた場合、新品に交換するとなると給湯器や温水便座ではそれぞれで30万円前後かかることもあります。空き家の売却後であれば、すでに新たな住宅購入資金に充てていたり、自宅の繰り上げ返済に充てていたりなど、現金が手元に残っていないケースも想定されますので、住宅設備を修理してもらえるサービスがあるかどうかも確認しておきたい点です。
空き家の売却では、サービスの多さも重要ポイント
不動産売買でのトラブルは、なかなか収束できないこともあります。特に長い間空き家だった場合は、想定外のことが起こるケースも多々見受けられます。もしもの時に困らないためにも、サービスを多く揃えている不動産会社に頼むことが不動産会社選びの重要なポイントと言えるでしょう。
20年勤めた不動産情報サービスの会社での経験を活かし、住まい探しが初めての方にも分かりやすい、生活者の目線に立った記事の執筆活動を手がける。
※ 2017年10月31日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。
※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。
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