不動産売却時に結ぶ3種類の媒介契約。選び方のポイント

住み替えと売却の前に知っておきたいことVol.5

不動産の売却を不動産会社に依頼する場合は、「媒介契約」を結ぶことになります。媒介契約といってもその種類は3つあり、物件の条件や売却したいタイミングなどによって選び方は変わってきます。ここではそれぞれの特徴を確認しながらポイントを考えていきましょう。

媒介契約って何のために結ぶの?

何かしらのきっかけで、自宅や相続した土地などの不動産を売却する時に、買主が決まっているケースは少ないのではないでしょうか。そこで不動産会社に買主を探してもらうことを、依頼する契約が媒介契約となります。依頼を受けた不動産会社は、依頼主に対し、「宅地建物取引業法第34条の2」に基づいて媒介契約書面を交付します。

媒介契約には、専属専任媒介契約・専任媒介契約・一般媒介契約がある

媒介契約は、1社の不動産会社に任せて売却を依頼する専属専任媒介契約、1社の不動産会社に任せて、売却を依頼するが、買主を自分で探した場合にその相手と契約できる専任媒介契約、依頼する不動産会社の数に制限のない一般媒介契約があります。リンク先にそれぞれの特徴が掲載されていますので、参照してください。

「不動産売却のためのガイドブック」STEP3媒介契約のご締結

では、これらの媒介契約をどのように使い分けたら良いのでしょうか?
不動産の売却を複数の不動産会社に依頼するか、1社に任せた方がいいのかについて、まずは悩まれる点ではないでしょうか。複数の不動産会社に依頼する「一般媒介契約」では、それぞれ特徴の異なる不動産会社にて販売活動をしてもらえるため、メリットでもあると言えるでしょう。しかし、注意したい点もあります。実際に不動産の売却を開始し、買主の候補となる方が物件を内覧したいとそれぞれの不動産会社から案内希望の連絡が入ります。この時に、ご自身が居住中の場合には、日程の段取りやその後の交渉事なども各社と行うので、相応に気を使います。

また、空室である場合には、買主をスムーズに案内するために不動産会社に鍵を預けるケースも少なくありません。何社に依頼するかにもよりますが、鍵の本数の確保はもちろん、複数の不動産会社の案内があった場合など、戸締りの管理なども少し心配になります。

それでは、1社に不動産の売却を依頼する「専属専任媒介契約」または「専任媒介契約」はどうでしょうか。この二つの媒介契約には、共通して不動産会社に次の義務があります。一つ目は、販売活動状況の報告義務です。媒介契約の締結後、不動産会社は、その活動状況や反響状況について、それぞれ定められた頻度において、依頼主(売主)に報告する義務があります。2つ目は指定流通機構(レインズ)への物件情報の登録義務です。媒介契約を依頼してから、それぞれ定められた期間内に登録されることにより、物件情報を幅広く他の不動産会社も確認することができます。

不動産の売却を考え始めた時、なるべく早く売却したいという希望条件や、ご自身がとても忙しい状況にあるなど、その状況はさまざまだと思います。例えば転勤で住み替えるときに売却を希望するケースで考えてみましょう。引越し会社へ見積り依頼をする、住み替え先を探す、引越しまでのスケジュールを考える、仕事の引き継ぎ、お子さんの転校の手配など、限られた期間内にやらなくてはならないことは山ほどあります。落ち着いてから売却を考えるのが一番ですが、近くに居るうちに相談だけはしておきたい、インターネットを通じて依頼することもできるけど、会社の雰囲気を知っておきたいなど、遠方ではなかなか大変な場合もあります。必ずしも3種類のうちどれが良いとは言い切れませんが、信頼できる不動産会社1社に絞り、売却の進捗を把握できることもメリットではないでしょうか。

信頼できる不動産会社を選ぶために

「媒介契約」を締結する前に、不動産会社に相談から始め、価格査定や、売却するために必要な事項の確認、販売活動や売却に向けた提案など、分からないことは遠慮なく質問し、十分に納得した上で媒介契約を結びましょう。安心して任せられる、ここの会社に任せたいと思えることが重要です。

執筆

橋本 岳子 (はしもと・たかこ)

20年勤めた不動産情報サービスの会社での経験を活かし、住まい探しが初めての方にも分かりやすい、生活者の目線に立った記事の執筆活動を手がける。

※本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。