
「住宅ローンの基礎知識Vol.2 ローンを組む時のポイントを整理しよう」で住宅ローンのポイントとして、借入額、返済期間、金利の3点を挙げました。それに加えて、もう1つ考慮するポイントが返済方式です。金融機関や住宅ローンの種類によっては、元利均等返済方式と元金均等返済方式を選択できる場合があるからです。
元利の「元」は「元金」、「利」は「利息」です。元金とは借入額。利息とは借入残高に金利を掛けたものです。住宅ローンの毎月の返済額は元金の返済に充てる分と、利息の返済に充てる分の2つの要素で構成されています。
2種類の返済方式を具体的に見ていきましょう。
元利均等・元金均等、それぞれのメリット・デメリット
まず元利均等です。これは、元金返済に充てる分と利息返済に充てる分の合計額が一定の返済方式を指します。変動金利の適用で金利が変動する場合を除き、返済額が一定ですから、家計の収支に対する影響を見通しやすいメリットがあります。
ただ、借り入れ当初は借入残高が多いので、利息も多くなり、返済額のうち利息返済に充てる分の割合が多くならざるを得ません。そのため元金の返済が進みにくく、その分、利息の支払総額が多くなるのがデメリットといえます。
これに対して元金均等は、元金返済分が一定なので元金の返済は一定のスピードで進みます。それに伴って借入残高も減っていきますから、利息分の支払総額は元利均等に比べ少なく済みます。
ただし、借り入れ当初は借入残高が多く、利息分の返済額も多くなるうえに、元金返済に充てる分に加わるので、借り入れ当初は返済額が多くなるのがデメリットといえます。
元利均等返済方式と元金均等返済方式の違い
左右スクロールで表全体を閲覧できます
これら2つの返済方式は金利タイプのように、途中で切り替えたり組み合わせたりすることはできないのが一般的なようです。金利タイプもさることながら、こちらもその違いを具体的に試算しながら検討することが求められます。
では、同じ借り入れ条件で元利均等と元金均等の2つの返済方式を比べた場合、毎月の返済額や総返済額にどの程度の違いが生じるのでしょうか。住宅金融支援機構がインターネット上で提供するシミュレーションシステムを用いて試算してみます。
返済方式のシミュレーション
【試算条件】
- 物件価格/4000万円
- 自己資金/800万円
- 借入額/3200万円
- 借入期間/30年
- 適用金利/変動0.625%
※計算の都合上、変動金利の場合も、適用金利は返済期間中変わらないと仮定する
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元利均等返済方式 |
元金均等返済方式 |
年次 |
返済額 |
返済額 |
初回 |
9万7505円 |
10万5554円 |
2年目 |
9万7505円 |
10万5508円 |
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29年目 |
9万7505円 |
8万9490円 |
最終回 |
9万7528円 |
8万9254円 |
総返済額 |
3510万1823円 |
3500万8185円 |
うち利息分310万1823円 |
うち利息分300万8185円 |
試算結果では元利均等と元金均等の返済額の違いは初回で8000円程度。ただし、この差は返済が進むにつれて縮まって返済15年目で逆転します。以降、返済額は元金均等のほうが安くなって、最終回では逆に8000円程度の差を付けます。
ライフプランで返済方式を選ぶ
総返済額は、元利均等が元金分3200万円と利息分310万1823円の合計3510万1823円であるのに対して、元金均等は元金分3200万円と利息分300万8185円の合計3500万8185円。現在の低金利で試算しているのでこの程度の違いですが、金利が上昇すれば差は大きくなります。
返済方式を選ぶ1つの視点は、ライフプランとの兼ね合いです。毎月の返済負担は返済期間を通じて一定のほうがいいか、それとも、借り入れ当初は重くても次第に軽くなるほうがいいか、という選択といえます。住宅を購入するタイミングでは、子育ての最中で金がかかる割に、所得はまだそれほど多くなっていないとケースもあります。そうした場合には、多少、総返済額が多くなっても、当初の負担が軽いほうを選んだ方が得策でしょう。
ここで見てきた返済額や総返済額の試算結果は、借り入れ条件によって大きく変わってきます。返済方式を元利均等と元金均等のどちらにするかを選択する場合は、自分の条件で試算を繰り返して、ご検討する必要があるでしょう。
大手出版社で住宅雑誌の編集業務に携わった後、フリーランスで著述業を開始。「住宅・建設・不動産」「まちづくり」「医療・介護」「経営」の各分野で、雑誌・Web記事や書籍などの企画・取材・執筆・編集を手がける。
本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。
住宅ローンに関する内容については、商品や金融機関によりお借り入れ条件などが異なるため、詳しくは各金融機関にご確認頂けますようお願い致します。
2016年6月30日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編内容が変更となる場合がございます。