低層マンションと高層マンション、違いを知って選ぼう

マンションの購入に関するトピックス

この記事の概要

  • マンションを購入する際の物件選びでは、立地条件や部屋の間取りや広さのほか、「低層マンション」か「高層マンション」かというマンションのタイプも検討事項のひとつです。低層マンションと高層マンションでは、得られる住環境などに違いが出る場合があります。今回は、タイプ別の特性の違いについて説明します。

低層マンションと高層マンション、違いを知って選ぼう

マンションの「低層」「高層」について明確な定義や区分はありません。一般的には2~3階建てを「低層マンション」、4〜5階建てを「中層マンション」、6階建て以上を「高層マンション(20階建て以上:超高層マンション)」と呼ぶことが多いようです。ちなみに超高層マンションの区分は建築基準法第20条により、高さ60mを超える建築物には構造に関する規定が設けられていることによります。

今回は違いが分かりやすいように、低層マンションと高層マンションについての違いについて比較していきます。4〜5階建ての中層マンションについては、低層マンションと高層マンションの中間的な位置づけになります。したがって、中層マンションは、低層マンションと似た点と、高層マンションに似た点があります。低層と高層の違いが理解できれば、中層のメリット、デメリットも判断できるようになり、マンション選びの参考にできるかと思います。

建築場所の用途地域で建物の高さは決まる

一般的に、マンションデベロッパーの多くは収益性を高めるため、建ぺい率・容積率を最大限に活かして供給戸数や面積を増やし、分譲しようとします。ではなぜ低層のマンションがあったりするのでしょう。それらの多くはあえて低層にしているのではなく、低層でないと建てられないエリアに計画したからです。

国や自治体は都市計画法に基づき、土地の利用方法について制限する「用途地域」を定め、エリアごとに指定しています(一部「未指定」の区域もあります)。住宅の隣に工場が建つといった、用途の混在による住環境低下等を極力排除し、エリアごとに最適な用途と生産効率を高めるためのルールです。

用途地域は大きく「住居地域」「商業地域」「工業地域」に分けられます。とはいっても住居地域だけに住宅が建てられるわけではありません。用途地域は全部で13種類の用途が定められており、住宅はうち12種類の区域で建てることが可能です。つまり商業地域や工業地域にも建てられますが、唯一建てられないのが工業地域の中の「工業専用地域」だけです。

用途地域によって、建てられる建物の種類や建ぺい率、容積率、高さなどに制限がかけられています。分譲マンションのボリューム=建物規模(高さや面積)については、この用途地域による制限と土地面積によって決まります。多くの場合、低層マンションと高層マンションでは、建築される場所の用途地域が異なるのです。そうした影響で住居特性が異なりメリットやデメリットが生じます(表1参照)。くわしく説明しましょう。

(表1)マンションの高層・低層のメリットとデメリットの例

(表1)マンションの高層・低層のメリットとデメリットの例

*一般的な傾向です、全てのマンションに適用されるものではありません

高い住環境が魅力の低層マンション

低層マンションの魅力は、ズバリ、エリアを含めた高級感と希少性です。低層マンションは用途地域の中でも「第一種低層住居専用地域(一種低層)」や「第二種低層住居専用地域(二種低層)」に建設されているケースが多くみられます。この2つの用途地域である「低層住居専用地域」は基本、2階建て程度の戸建て住宅やマンション等しか建てられません。住居地域の中でも建築可能な建物の高さや種類が厳しく制限されており、住環境のよいエリアといえます。

下表を見てください。低層住居専用地域は住宅以外、ほとんどと言っていいほど他の建築物を建てられません。エリア内に工場や大型施設はおろか、店舗や商業施設がつくられないため、閑静な住環境が保証されているといえます。

(表2)用途地域における建築物の可否(抜粋)

(表2)用途地域における建築物の可否(抜粋)

特に低層住居専用地域では、住宅についても建ぺい率や容積率、絶対高さなどに上限が課せられています(下表参照)。

(表3)「低層住居専用地域」における建築物の制限例

(表3)「低層住居専用地域」における建築物の制限例

建ぺい率、容積率が低めなうえ、高さも最大12mと厳しく課せられています。つまりは戸建て住宅が多く建つエリアであり、その中でのマンションですから、自ずと住環境が高いことが保証されるというわけです。そうしたエリアでのマンション計画は希少性もあります。

低層マンションは、生活利便性が高いともいえます。階段利用も無理がなく、エレベーター待ちのストレスもさほどありません。高層マンションの上層階のような広範囲を見渡す眺望は期待できませんが、周りに公園や神社などがあれば、その緑や庭を借景にすることができます。用途制限によって近隣の住環境が維持されているので街並みとの一体感もあります。

眺望やサービス面が魅力の高層マンション

対して高層マンションの魅力として第一に挙げられるのは、高層階の眺望の高さです。バルコニーや窓から広がるパノラマは、室内を視覚的にも感覚的にも開放してくれます。特に超高層マンションの高層階からの眺望は格別です。都市部では、昼間だけでなく、夜景の眺望も魅力的なものに映るはずです。

実用面では、採光や通風に優れるケースが多いようです。地上の近隣騒音や虫などの侵入も、高層階になるほど緩和され、快適性が高まっていくはずです。セキュリティ面も、レベルが高いケースが多く見られます。また、大規模な高層マンションの場合、エントランスなどの共用スペースがゆったりと大きめに取られていたり、付帯設備やサービスが充実していたりするなどのケースもあります。

どんなタイプを選ぶか自分の優先順位から考える

これまでの説明で、低層マンションと高層マンションには、違った傾向がみられることはご理解いただけたと思います。しかし、それはどちらが優れている、劣っているというわけではありません。

また、これまでの説明は一般的な傾向であり、それぞれのタイプのメリットはリスクとも表裏一体です。例えば高層マンションの眺望というメリットは、災害の際のエレベーターが止まった際の暮らしにくさというデメリットの裏返しです。どちらを優先して物件を選ぶのかは、購入者の考え方次第です。さらにもう一つ考慮したいのは、低層マンションと高層マンションの“いいところ取り”を狙うこともできるという点です。例えば、「高層マンションの低層階」という選択。高層マンションの充実した共用設備やサービス等が利用でき、災害などの際エレベーターが止まっても、生活利便性は確保できます。

マンション選びでは、自分が新居での生活において何を重視するのかを整理し、物件それぞれが持つメリット、デメリットを考慮して、ベストマッチングを探してください。

執筆

谷内 信彦(たにうち・のぶひこ)

建築&不動産ライター。主に住宅を舞台に、暮らしや資産価値の向上をテーマとしている。近年は空き家活用や地域コミュニティにも領域を広げている。『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP社・共著)

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2020年2月28日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。