バスルームとトイレの快適性・利便性が飛躍的に向上

スペース別に考えるリフォームテクニック vol.2

この記事の概要

  • 中古住宅を購入する際、リフォームを検討するケースが多いでしょう。悩みどころは、バスルームやトイレ。どの程度、快適性や利便性が変わるのか分からない方も少なくないと思います。実は、近年、バスルームやトイレの快適性や利便性は飛躍的に向上しています。そのポイントをご紹介しますので、ぜひ決断の参考にしてください。

バスルームとトイレの快適性・利便性が飛躍的に向上のイメージ図

中古住宅(既存住宅)を購入する際、多くの方が内装や設備更新等、一定のリフォームを検討されているかと思います。老朽化や劣化も大きな動機ですが、前所有者の生活感を払拭したいという気持ちも大きな理由の1つでしょう。特にトイレ、キッチン、バスルーム等の水まわりについては、使用頻度も高いこともあって、リフォームの意欲が高いようです。

国土交通省の「平成30年度 住宅市場動向調査」によると、2019年度中にリフォームを実施したケースの対象部位は、下のグラフのようになっています。トップの外壁の後、水まわりが続きます。第1回でキッチンリフォームのポイントを取り上げましたから、今回は、バスルームとトイレについて解説します。

リフォームの部位(複数回答)

リフォームの部位のグラフ

(国土交通省「平成30年度 住宅市場動向調査」報告書より作成

近年のユニットバスは性能アップが著しい

一昔前の日本の住宅のバスルームといえば、床や壁がタイル張りの「在来工法」の空間が主でしたが、近年は戸建住宅もマンションもユニットバス*(システムバスなどとも呼ばれます)が一般的になっています。リフォームに関しても、ユニットバスを検討する方が主流になっています。

最新のユニットバスは、安全性、清潔性、デザイン性・快適性など、あらゆる機能が古いバスルームから進化を遂げています。それぞれの機能別に最新傾向を見ていきましょう。もちろん、ユニットバスを提供している各社は、最新機能をフルに備えたタイプから、ベーシックなタイプまで豊富なバリエーションを用意しています。どんな機能が必要なのか見極めてください。

本稿で紹介するユニットバスは、ビジネスホテルのようなトイレ、洗面台の付いたいわゆる「3点ユニットバス」でなく、浴室単独のユニット商品を意味します。

①安全性:出入りしやすく、すべりにくくする配慮が

段差がある、すべりやすい、冬場など他の居室と温度差があるなど、古いバスルームは決して安全な空間とはいえませんでした。しかし近年は、こうした問題点を解消する機能が盛り込まれたユニットバスが増えています。

従来、浴室と脱衣所の間にはかなりの段差があるのが一般的でした。これは浴室内の水やお湯が脱衣所側に流れ込まないためです。しかし段差は、つまずきの元になりやすいため、最新のユニットバスは段差が最小限になるように設計しています。出入り口扉も、引き戸を採用して出入りしやすくしているタイプもあります。もちろん、浴槽のまたぎに対しても、高さを配慮し、手すりを用意するなど、危険を減らす工夫をしています。

浴室の床は一般的にお湯や水で濡れて足元が不安定なものですが、最近は、素材や目地の工夫により、すべりにくくする工夫を凝らしています。ユニットバス自体の保温性を高めたり、床下にお湯を循環させたりすることで、冬場のひんやり感を解消したタイプも提供されています。最新のユニットバスは「思わぬ事故」を防いでくれる、高齢者だけでなく誰にも優しい空間をめざしています。

②清潔性:汚れにくく、汚れてもお掃除しやすい工夫が

水分や湿気の多いバスルームは、カビ等が発生しやすく、お手入れの負担が大きいスペースです。それだけに、最近のユニットバスは、汚れにくくしたり、清掃しやすくしたりしたタイプが増えています。壁や床の目地をなくしたり減らしたりしてカビが付きにくくしたり、表面に特殊処理を施して汚れにくく、汚れても簡単に落とせるなどの工夫をしています。

バスタブも高級感を演出しつつ、汚れの付きにくい素材にするなどの工夫がされています。残り湯を除菌する機能を備えているタイプなら、翌日の入浴でも清潔・快適です。洗濯水に使う場合も安心して使えるでしょう。

③デザイン性・快適性:リラックスできる贅沢な空間に

「ユニットバス」と聞くと、どうしても無機質で画一的な工業製品をイメージしてしまいますが、近年、各社がそうしたイメージを払拭するモデルをラインアップしています。かつてのホテルにあった3点ユニットバスのような無骨で閉鎖的なイメージではないバスルームにリフォームすることもできます。

心身がリラックスできる場所としての機能も取り入れられます。例えばバスタブは、形状や素材、サイズが多彩になり、ゆったり長時間浸かっていられるタイプも増えています。ハンドシャワーにマッサージ機能を付加したり、全身をシャワー浴できる天井シャワーが装備可能なタイプもあります。ミストサウナ、気泡浴槽、調光調色照明、大型液晶テレビなどの癒しのためのワンランク上のオプションが用意されている高級モデルであれば、快適性が大きくアップするでしょう。

脱衣室との一体的な計画が重要に

次にバスルームをリフォームする際のポイントをいくつかご紹介します。まず、スペースですが、心身を癒すリラックス空間とするのであれば、なるべく広く(できれば1坪以上)とりたいところ。マンションなどスペースに制約があるような場合、出窓タイプの製品を採用したり、脱衣室との間仕切りに窓を付けたりするなど、開放感ある空間にすることでも広さを補えます。また、壁裏のスペースをコンパクトにして以前と同じスペースでも一回り広くなるユニットバスも多く、こうした製品の採用が有効です。

安全性、清潔性は基本的な機能といえます。これについては優先度を上げましょう。その上で、予算に合わせてデザイン性や快適性について検討します。バスルームはそれほど手軽にリフォームできるスペースではありません。後悔しないように念入りに考えてください。

また、ユニットバスの浴槽は、カタログ上は同じサイズでも、わずかな角度の違いや縁(ふち)の処理などによって、好みが分かれるケースがあります。また、素材、カラー等もカタログ写真と実物ではイメージが異なる可能性があります。本当に満足のいくバスルームをつくりたいなら、メーカーショールームで実物を確認するなど手間をかけることが大切です。

リフォームに当たっては、ユニットバスを単純に取り換えるだけでなく、脱衣室(洗面室や家事室)との一体的に計画することが重要です。動線を検討し、使い勝手を高めましょう。

節水性と清潔性が著しい最新トイレ

トイレはバスルーム以上に頻繁に使うスペースです。便器(衛生陶器)はそうそう簡単に壊れるものではありませんから、リフォームせずに使用することができるケースも多いようですが、最近の性能アップは著しいので検討する価値があります。まずは機能別の最新傾向を紹介します。

①経済性:節水タイプが当たり前に

1回の洗浄に必要な水の量が少なくなり、かなりの節水ができるようになりました。1990年代以前は大洗浄1回に13ℓ程度を使うモデルが主流でしたが、最新商品の中には4リットル程度のモデルが増えています。既存の便器の品番を調べれば、洗浄水量はチェックできます。取り換えた場合、どの程度の節水が期待できるのか、水道代を試算してもいいでしょう。

②清潔性:汚れにくく、清掃しやすい

各社が最新の表面処理技術を採用することなどで、汚れが付きにくく落ちやすくしています。洗浄の際に除菌水を流したり、抗菌素材を使ったりした商品も出ています。

③デザイン性・快適性:温水洗浄便座も機能アップ

従来のトイレよりも、タンクの部分をコンパクトに設計したタイプや、タンクレスのモデルも増えています。これらに取り換えてトイレ室内を少しでも広く感じさせるようにすることは快適性アップにつながります。また、快適装備である温水洗浄便座は便器と比較すると、寿命が短いのが一般的です。温水洗浄便座も機能アップしていますから、取り換えを検討しましょう。

手洗いをどうするかを検討したい

トイレのリフォームのポイントに手洗いがあります。従来は、便器の後ろのタンクと一体になったタイプを設置することが少なくありませんでしたが、最近は独立型の採用が増えています。コンパクトな手洗いでも独立させると従来よりもトイレ室面積が必要になることも多いのですが、ゆとりあるトイレにすることができます。

トイレは、将来も考えてバリアフリーにも配慮すべきです。入り口の段差をなくすこと、開き戸ではなく引き戸を採用すること、手すりをつけておくことといった配慮を、今回のリフォームで済ませておけば、将来の手間を減らすことができます。

バスルームとトイレも、リフォームする際には、既存の上下水配管の位置などが大きく影響します。特にレイアウトを変える場合には、下水管がつまりやすくなったりしないように十分に配慮することが必要です。専門家の意見を尊重して、無理のない計画を作ってください。

ポイント制度を活用してお値打ちにリフォームを

2019年10月1日から消費税増税が予定されています。それによる住宅の買い控えやリフォームの実施延期などを最小限に抑えるため、政府は「次世代住宅ポイント制度」を設けています。この制度はリフォームにも適用され、今回紹介するバス・トイレのリフォームでも申請可能な工事が存在します。活用に当たっては、以下の表のように様々な切り口が考えられますので、リフォーム事業者に相談してください。

(表)バスルーム・トイレのリフォームで適用可能な「次世代住宅ポイント制度」対象工事

▶「エコ住宅設備」枠での付与ポイント
エコ住宅設備の種類 ポイント数 備考
太陽熱利用システム 24,000ポイント/戸
節水型トイレ 16,000ポイント/戸 家事負担軽減に資する設備の「掃除しやすいトイレ」との重複は不可
高断熱浴槽 24,000ポイント/戸
高効率給湯機 24,000ポイント/戸 電気ヒートポンプ給湯機(エコキュート)、潜熱回収型ガス給湯機(エコジョーズ)、潜熱回収型石油給湯機(エコフィール)、ヒートポンプ・ガス瞬間式併用型給湯機(ハイブリッド給湯機)
節湯水栓 4,000ポイント/戸 浴室シャワー水洗:「手元止水機能」または「小流量吐水機能」(シャワーヘッドのみの交換は除く)
▶「バリアフリー改修」枠での付与ポイント
対象工事の種類 ポイント数 備考
手すりの設置 5,000ポイント/戸 原則、バリアフリー改修促進税制の取り扱いに準じる
▶「家事負担軽減に資する設備」枠での付与ポイント
家事負担軽減に資する住宅設備の種類 ポイント数 備考
浴室乾燥機 18,000ポイント/戸
掃除しやすいトイレ 18,000ポイント/戸 エコ住宅設備の「節水型トイレ」との重複は不可
▶その他の付与ポイント
対象となる行為 ポイント数 備考
リフォーム瑕疵保険への加入 7,000ポイント/戸
インスペクションの実施 7,000ポイント/戸 次世代住宅ポイント事務局が対象とする要件を満たしていること
若者・子育て世帯が既存住宅を購入して行う一定規模以上のリフォーム 100,000ポイント/戸
  • 若者・子育て世帯が自ら居住することを目的に購入した既存住宅であること
  • 売買契約締結後3カ月以内にリフォーム工事の請負契約を締結すること
  • 税込100万円以上のリフォーム工事を行うこと
*新築住宅の購入は対象外
既存住宅購入加算 各リフォーム工事等のポイント数を2倍
  • 自ら居住することを目的に購入した既存住宅であること
  • 売買契約締結後3カ月以内にリフォーム工事の請負契約を締結すること
*新築住宅の購入は対象外
執筆

谷内信彦(たにうち・のぶひこ)

建築&不動産ライター。主に住宅を舞台に、暮らしや資産価値の向上をテーマとしている。近年は空き家活用や地域コミュニティにも領域を広げている。『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP社・共著)

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 本記事は2019年7月31日時点の情報であり、今後変更となる場合があります。