近年のユニットバスは性能アップが著しい
一昔前の日本の住宅のバスルームといえば、床や壁がタイル張りの「在来工法」の空間が主でしたが、近年は戸建住宅もマンションもユニットバス*(システムバスなどとも呼ばれます)が一般的になっています。リフォームに関しても、ユニットバスを検討する方が主流になっています。
最新のユニットバスは、安全性、清潔性、デザイン性・快適性など、あらゆる機能が古いバスルームから進化を遂げています。それぞれの機能別に最新傾向を見ていきましょう。もちろん、ユニットバスを提供している各社は、最新機能をフルに備えたタイプから、ベーシックなタイプまで豊富なバリエーションを用意しています。どんな機能が必要なのか見極めてください。
本稿で紹介するユニットバスは、ビジネスホテルのようなトイレ、洗面台の付いたいわゆる「3点ユニットバス」でなく、浴室単独のユニット商品を意味します。
①安全性:出入りしやすく、すべりにくくする配慮が
段差がある、すべりやすい、冬場など他の居室と温度差があるなど、古いバスルームは決して安全な空間とはいえませんでした。しかし近年は、こうした問題点を解消する機能が盛り込まれたユニットバスが増えています。
従来、浴室と脱衣所の間にはかなりの段差があるのが一般的でした。これは浴室内の水やお湯が脱衣所側に流れ込まないためです。しかし段差は、つまずきの元になりやすいため、最新のユニットバスは段差が最小限になるように設計しています。出入り口扉も、引き戸を採用して出入りしやすくしているタイプもあります。もちろん、浴槽のまたぎに対しても、高さを配慮し、手すりを用意するなど、危険を減らす工夫をしています。
浴室の床は一般的にお湯や水で濡れて足元が不安定なものですが、最近は、素材や目地の工夫により、すべりにくくする工夫を凝らしています。ユニットバス自体の保温性を高めたり、床下にお湯を循環させたりすることで、冬場のひんやり感を解消したタイプも提供されています。最新のユニットバスは「思わぬ事故」を防いでくれる、高齢者だけでなく誰にも優しい空間をめざしています。
②清潔性:汚れにくく、汚れてもお掃除しやすい工夫が
水分や湿気の多いバスルームは、カビ等が発生しやすく、お手入れの負担が大きいスペースです。それだけに、最近のユニットバスは、汚れにくくしたり、清掃しやすくしたりしたタイプが増えています。壁や床の目地をなくしたり減らしたりしてカビが付きにくくしたり、表面に特殊処理を施して汚れにくく、汚れても簡単に落とせるなどの工夫をしています。
バスタブも高級感を演出しつつ、汚れの付きにくい素材にするなどの工夫がされています。残り湯を除菌する機能を備えているタイプなら、翌日の入浴でも清潔・快適です。洗濯水に使う場合も安心して使えるでしょう。
③デザイン性・快適性:リラックスできる贅沢な空間に
「ユニットバス」と聞くと、どうしても無機質で画一的な工業製品をイメージしてしまいますが、近年、各社がそうしたイメージを払拭するモデルをラインアップしています。かつてのホテルにあった3点ユニットバスのような無骨で閉鎖的なイメージではないバスルームにリフォームすることもできます。
心身がリラックスできる場所としての機能も取り入れられます。例えばバスタブは、形状や素材、サイズが多彩になり、ゆったり長時間浸かっていられるタイプも増えています。ハンドシャワーにマッサージ機能を付加したり、全身をシャワー浴できる天井シャワーが装備可能なタイプもあります。ミストサウナ、気泡浴槽、調光調色照明、大型液晶テレビなどの癒しのためのワンランク上のオプションが用意されている高級モデルであれば、快適性が大きくアップするでしょう。
脱衣室との一体的な計画が重要に
次にバスルームをリフォームする際のポイントをいくつかご紹介します。まず、スペースですが、心身を癒すリラックス空間とするのであれば、なるべく広く(できれば1坪以上)とりたいところ。マンションなどスペースに制約があるような場合、出窓タイプの製品を採用したり、脱衣室との間仕切りに窓を付けたりするなど、開放感ある空間にすることでも広さを補えます。また、壁裏のスペースをコンパクトにして以前と同じスペースでも一回り広くなるユニットバスも多く、こうした製品の採用が有効です。
安全性、清潔性は基本的な機能といえます。これについては優先度を上げましょう。その上で、予算に合わせてデザイン性や快適性について検討します。バスルームはそれほど手軽にリフォームできるスペースではありません。後悔しないように念入りに考えてください。
また、ユニットバスの浴槽は、カタログ上は同じサイズでも、わずかな角度の違いや縁(ふち)の処理などによって、好みが分かれるケースがあります。また、素材、カラー等もカタログ写真と実物ではイメージが異なる可能性があります。本当に満足のいくバスルームをつくりたいなら、メーカーショールームで実物を確認するなど手間をかけることが大切です。
リフォームに当たっては、ユニットバスを単純に取り換えるだけでなく、脱衣室(洗面室や家事室)との一体的に計画することが重要です。動線を検討し、使い勝手を高めましょう。
節水性と清潔性が著しい最新トイレ
トイレはバスルーム以上に頻繁に使うスペースです。便器(衛生陶器)はそうそう簡単に壊れるものではありませんから、リフォームせずに使用することができるケースも多いようですが、最近の性能アップは著しいので検討する価値があります。まずは機能別の最新傾向を紹介します。
①経済性:節水タイプが当たり前に
1回の洗浄に必要な水の量が少なくなり、かなりの節水ができるようになりました。1990年代以前は大洗浄1回に13ℓ程度を使うモデルが主流でしたが、最新商品の中には4リットル程度のモデルが増えています。既存の便器の品番を調べれば、洗浄水量はチェックできます。取り換えた場合、どの程度の節水が期待できるのか、水道代を試算してもいいでしょう。
②清潔性:汚れにくく、清掃しやすい
各社が最新の表面処理技術を採用することなどで、汚れが付きにくく落ちやすくしています。洗浄の際に除菌水を流したり、抗菌素材を使ったりした商品も出ています。
③デザイン性・快適性:温水洗浄便座も機能アップ
従来のトイレよりも、タンクの部分をコンパクトに設計したタイプや、タンクレスのモデルも増えています。これらに取り換えてトイレ室内を少しでも広く感じさせるようにすることは快適性アップにつながります。また、快適装備である温水洗浄便座は便器と比較すると、寿命が短いのが一般的です。温水洗浄便座も機能アップしていますから、取り換えを検討しましょう。
手洗いをどうするかを検討したい
トイレのリフォームのポイントに手洗いがあります。従来は、便器の後ろのタンクと一体になったタイプを設置することが少なくありませんでしたが、最近は独立型の採用が増えています。コンパクトな手洗いでも独立させると従来よりもトイレ室面積が必要になることも多いのですが、ゆとりあるトイレにすることができます。
トイレは、将来も考えてバリアフリーにも配慮すべきです。入り口の段差をなくすこと、開き戸ではなく引き戸を採用すること、手すりをつけておくことといった配慮を、今回のリフォームで済ませておけば、将来の手間を減らすことができます。
バスルームとトイレも、リフォームする際には、既存の上下水配管の位置などが大きく影響します。特にレイアウトを変える場合には、下水管がつまりやすくなったりしないように十分に配慮することが必要です。専門家の意見を尊重して、無理のない計画を作ってください。
ポイント制度を活用してお値打ちにリフォームを
2019年10月1日から消費税増税が予定されています。それによる住宅の買い控えやリフォームの実施延期などを最小限に抑えるため、政府は「次世代住宅ポイント制度」を設けています。この制度はリフォームにも適用され、今回紹介するバス・トイレのリフォームでも申請可能な工事が存在します。活用に当たっては、以下の表のように様々な切り口が考えられますので、リフォーム事業者に相談してください。
(表)バスルーム・トイレのリフォームで適用可能な「次世代住宅ポイント制度」対象工事