所有者が組合員となる管理組合の役割を理解して協力しよう

マンションを購入する際に、絶対に知っておくべきこと(第3回)

この記事の概要

  • 戸建てや賃貸住宅で暮らしてきた方が、マンションを購入する際に知っておくべき知識に、管理組合の存在があります。マンションを購入したら、必ず入らなくてはならない管理組合。その役割は多岐にわたります。日々の暮らしの質に直結し、マンションの資産価値にも影響を及ぼしますから、重要性を理解して協力しましょう。

所有者が組合員となる管理組合の役割を理解して協力しよう

戸建てと違い、マンションは1つの建物で他者との共同生活を送る居住スタイルです。分譲マンションのほとんどで管理組合が設立され、区分所有者=組合員によって運営されています。戸建てや賃貸住宅に暮らしていた方は、管理組合といってもピンとこないと思います。管理組合とはどのような役割で設立され、所有者や住人にどのようなメリットをもたらすのでしょう。知っておくべき管理組合の概要を解説します。

マンションの区分所有者全員が組合員になる

マンションは、購入した自室だけが所有物ではありません。マンションの個人所有できる区画を専有部分、それ以外の部分を共用部分といいます。分譲マンションの1室を購入した段階で、共用部分についても他の所有者との共有財産になります(第1回参照)。当たり前のことですが、共用部分なしには専有部分は成立しません。エントランスやエレベーター、廊下、給排水設備、ゴミ置き場といった設備がなければマンションに居住できません。ですから、区分所有者は、こうした共用部分の維持管理をしなければなりません。

こうした共用部分や敷地等について、区分所有者全員で維持管理していくための団体が管理組合です。そこで取り決められたルールに基づき、所有者やその家族、賃借人まで含めた全居住者が生活することで、日々の安全で快適なマンション生活が送れるようになります。

では、誰が管理組合の組合員となるのでしょう。「建物の区分所有等に関する法律」(以下:区分所有法)では、「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。」(第三条)と規定されています。つまり、区分所有者全員が管理組合の組合員となります。マンションを購入し区分所有者となった時点で自動的に組合員の資格を取得し、売却等で区分所有者でなくなった時点で資格を喪失します。

「全員で」と規定されているところがポイントです。マンション所有者は全員が管理組合員となります。実際の居住は関係ありません。投資マンション等として賃貸している場合でも、所有者であれば組合員としての責務を果たす必要があります。

管理組合は何をする団体?

さて、上記の区分所有法にある「建物並びにその敷地及び附属施設の管理」とは、具体的にどのような行為を指すのでしょう。国土交通省が作成・公表している標準管理規約では、15もの業務が列挙されています。

国土交通省「標準管理規約」第6章第2節「管理組合の業務」

  1. 管理組合が管理する敷地及び共用部分等(以下本条及び第48条において「組合管理部分」という。)の保安、保全、保守、清掃、消毒及びごみ処理
  2. 組合管理部分の修繕
  3. 長期修繕計画の作成又は変更に関する業務及び長期修繕計画書の管理
  4. 建替え等に係る合意形成に必要となる事項の調査に関する業務
  5. 適正化法第103条第1項に定める、宅地建物取引業者から交付を受けた設計図書の管理
  6. 修繕等の履歴情報の整理及び管理等
  7. 共用部分等に係る火災保険、地震保険その他の損害保険に関する業務
  8. 区分所有者が管理する専用使用部分について管理組合が行うことが適当であると認められる管理行為
  9. 敷地及び共用部分等の変更及び運営
  10. 修繕積立金の運用
  11. 官公署、町内会等との渉外業務
  12. マンション及び周辺の風紀、秩序及び安全の維持、防災並びに居住環境の維持及び向上に関する業務
  13. 広報及び連絡業務
  14. 管理組合の消滅時における残余財産の清算
  15. その他建物並びにその敷地及び附属施設の管理に関する業務

このように、管理組合が果たすべき業務は非常に多岐にわたります。ただ、中には専門性の高い業務もありますから、多くのマンションでは、管理業務の一部または全部を専門の管理会社に委託しています。どんな業務を委託しているのか、その範囲はマンションによってまちまちです。

マンション管理のほぼ全てを管理会社に委託する「全部委託」、高度な専門業務のみを委託する「一部委託」、基本的に管理組合主導で必要な業務のみを専門業者に委託する「自主管理」などの種類があります。管理組合の負担が少ないのは全部委託です。ただ、コスト(委託費)が高くなることや、住人本位の管理業務にならない可能性もあるといったデメリットもあります。その点を考慮して一部委託や自主管理を選択するケースもあります。

管理会社に業務を委託するにしても、管理組合活動として、全ての区分所有者の意思等について集約することは必須です。所有者の総意に基づくスムーズな運営を実現するため、管理組合の基本ルールである管理規約を定めたうえで、執行機関として理事会をもち、組合員の中から理事や監事、防火管理者などの役員を選任して運営することが一般的です。

図 管理組合の一般的な組織体系

管理組合の一般的な組織体系の図

理事は理事会の構成員で、管理組合員の中から選出されます。その他に管理会社など外部の関係者を理事とするマンションもあるようです。理事長は理事会の代表者であり、また管理組合全体の代表者でもあります。

そして「総会」※が、管理組合=区分所有者の最高意思決定機関です。そこでは、管理組合の前年度決算や次年度予算、管理費や修繕積立金などの会計報告をはじめ、理事の選任、管理規約やルールの変更などについて話し合われます。マンション管理に関する重要事項は原則としてこの総会の決議を必要とします。年に1度以上開催される定期総会のほか、必要に応じて招集する臨時総会も行われたりします。
※区分所有法では「集会」と表記されていますが、国土交通省の標準管理規約では「総会」と称しています。

暮らしのコミュニティを広げていこう

このように重要な役割がある管理組合の理事や役員はどのようにして決められるのでしょう。基本的には、管理組合員全員が公平に務めることが望ましいといえます。自発的な「立候補」や、現役員等からの「推薦」などもありますが、現在、一般的になっている選出方法は「輪番制」です。フロア(階)単位などでグループをつくって、持ち回りで理事や役員を務める方法のことです。各フロアから均等に理事が選出されることは、階ごとの問題を理事会に伝えるという意味からも合理的といえるかもしれません。

共働きをしていたり、高齢だったりという理由で、理事や役員を務めることは難しいという方もいらっしゃるかと思います。冒頭で、区分所有者は全員自動的に管理組合員になる(=義務)と説明しました。標準管理規約で組合員は「組合への積極的な参加、役割を適切に果たすように努めること」とありますが、理事や役員を務めることは義務というわけではありません。

しかし、マンションというスタイルの住宅で暮らす以上、よほどの事情以外は、できるだけ理事や役員を引き受けることが大切だと思われます。理事や役員を務めることで、総会だけでなく、理事会や委員会等に参加する等、時間を取られることもあるでしょう。ただ、マンション内に知己を得られる、総会や会計報告書だけでは分かりにくいマンションの課題が見えやすくなる、日常生活の問題点を迅速に解決しやすくなるなど、得られるメリットもまた少なくないかと思います。

マンションの管理状況によって、将来売却する際の査定価格は大きく違ってきます。築年が古くなっても、管理の行き届いているという要素が、取引価格=資産価値の維持につながっていきます。また、マンション内に良好なコミュニティのあることは、資産価値の維持につながるだけでなく、そこに暮らす人びとの日々の生活を豊かで良質のものにしてくれます。

自分たちの生活の質の向上と、マンションの資産価値の維持のためにも、マンションを手に入れたら管理組合の活動に関心を持ちましょう。

執筆

谷内 信彦 (たにうち・のぶひこ)

建築&不動産ライター。主に住宅を舞台に、暮らしや資産価値の向上をテーマとしている。近年は空き家活用や地域コミュニティにも領域を広げている。『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP社・共著)

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

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