中古住宅のメリット・デメリットを改めてチェック!

中古住宅に関するトピックス

この記事の概要

  •  新築住宅の価格高騰によって中古住宅への注目が高まっています。また、政府も中古住宅の流通促進に力を入れています。中古住宅を検討する方のためにメリットとデメリットを整理しました。一番のメリットは、価格が新築住宅よりリーズナブルなこと。ただ、設備や内装の劣化というデメリットも無視できません。リフォームを視野に入れて比較しましょう。

中古住宅のメリット・デメリット

これまで新築住宅志向が強かった日本人の持ち家観ですが、新築住宅の価格が高騰していることもあって、中古住宅(既存住宅)の検討も一般的になってきました。今一度、中古住宅のメリットやデメリットをおさらいしましょう。

一般的には、新築住宅より以下のようなメリットがあるとされています。

中古住宅のメリット例

  1. 価格が新築住宅よりもリーズナブル
  2. 物件が豊富で選びやすい
  3. コンディションを実物で確認できる

やはり1番のメリットは、新築住宅と比較するとリーズナブルな価格で購入できることでしょう。現在、中古住宅を検討している方の中には、「新築住宅は高すぎるから」と考えている方が少なくないと思います。これまで「無理のない持ち家の取得価格は年収の5倍程度まで」と言われてきましたが、今や新築住宅購入でそれを実現することは非常に難しくなっています。

住宅金融支援機構の「フラット35利用者調査」によると、全国の新築分譲マンションの年収倍率は2010年度以降8年連続で上昇し、最新の2017年度調査では6.9倍となっています。建売住宅の年収倍率は6.6倍、土地付注文住宅も7.3倍にまで達しています。

※この統計における年収倍率とは、物件価格に仲介手数料等の諸費用を合算した各利用者の所要資金を世帯年収で除したものの総和をサンプル数で除したものです。

住宅金融支援機構とは調査方法などが異なるので同列には比較できませんが、東京カンテイが2018年9月に発表したデータは驚くべきものです。2017年の首都圏における新築マンションの年収倍率はなんと11.01倍。中でも東京都は13.26倍、神奈川県は11.16倍と突出しています。近畿圏全体でも8.26倍、中部圏全体も7.96倍になっており、全国平均でも7.81倍になっています。

こうしたデータをみる限り、平均的な世帯では新築住宅の購入は、かなり厳しくなっていることが分かります。近年、資材価格の高騰や労働者の確保面等から建設コストはアップしており、今後も新築住宅の販売価格の高止まり傾向は避けられそうもありません。

一方、中古住宅の年収倍率も増加を続けているものの、その倍率は、中古マンションが5.6倍、中古戸建て住宅は5.1倍と、比較的手に届きやすい数値に留まっているといえます(「フラット35利用者調査」より)。こうしたデータをみる限り、平均的な世帯では中古住宅を検討したほうが資金面では現実的だということになります。

2番目の「物件が豊富で選びやすい」というのも中古住宅の大きなメリットといえるでしょう。最近は、価格高騰により、新築在庫が増加する傾向にあるのは事実です。それでも中古住宅の流通量と比べれば少ない状況に変わりはありません。

住宅選びでは、価格だけでなくエリアや広さなど、それぞれこだわる条件があるはずです。やはり物件の数が多い方が、それをかなえる物件を見つける可能性は高まります。例えば、駅近にこだわるような場合、建替えや再開発などがない限り、新築住宅ではなかなか供給されにくいことがあります。子どもの教育環境を重視した結果、希望エリアが絞られるケースもあるでしょう。そうした場合には、中古住宅を探す方が物件は見つかりやすくなるかもしれません。

3番目の「コンディションを実物で確認できる」というのは、モデルルーム等の内見で購入を決める新築マンションと違い、中古住宅はまさに住もうとするストックの実物を確認できるという意味です。モデルルームだと確認できない、エントランスからの動線、陽当たり、バルコニーからの眺望といったことが確認できます。さらに、なんといっても大きいのは、上記のようなハード面だけでなく、管理組合や管理会社の状況や、近隣の住民の様子といったソフト面も確かめられることです。

デメリットを理解してプラスに転じることも

いっぽう、中古住宅ならではのデメリットとしては次のようなことが挙げられます。

中古住宅のデメリット例

  1. 耐震性が劣っていたり、設備が旧式だったり、内装が劣化していたりすることがある
  2. 保証やアフターサービスが新築住宅に劣るケースが少なくない

まず、一番に挙げられるのは、耐震性、設備、内装の問題です。最近の耐震基準をクリアし、最新の設備を備え、施工したばかりのピカピカの内装を持つ新築住宅と比較すると、中古住宅は見劣りするケースが少なくありません。ただ、こうした点は、価格との見合いです。どの程度の資金を用意すれば、問題が解決するのかを計算して、新築住宅と比較すべきです。そこで気をつけたいのは、購入者がお金をかければ、解決する問題とそうでない問題を切り分けることです。

例えば、マンションの場合、耐震性を向上させるのは、1戸の所有者だけでできることではありません。また設備についてもオートロックやインターフォンシステムなどについては、全体の意志決定がないと手をつけることができないでしょう。一方、専有部分については設備も内装も基本的には改善が可能です。

この点は、中古住宅のデメリットとして説明していますが、見方を変えればメリットと考えることも可能です。それは思い切ってリフォームをすれば自分の思い通りの住まいになる可能性があるということです。最近は新築住宅でも、工事中にある程度購入者の希望を反映するケースもありますが、その範囲は、大規模リフォームに比べると限られています。一戸建てを注文建築するならともかく、マンションで、こだわりの設備、こだわりの内装を希望するなら、中古住宅のほうが実現しやすいかもしれません。

2の「保証やアフターサービスが新築住宅に劣るケースが少なくない」は、中古住宅の多くは個人間売買だからです。雨漏り等、内見時では見つけにくい瑕疵(欠陥)が建物にあった場合には「瑕疵担保責任」として前所有者に修繕費等の請求ができますが、中古住宅の場合、3カ月程度の短期であったり、中には「瑕疵担保責任を負わない特約」の付いた物件もあったりします。リスクを軽減する手段として、事前にインスペクション(建物現況調査)を行った物件を選んだり、契約時に既存住宅瑕疵保険等を付けたりすることが考えられます。

生活の質を上げるために総合的に考えたい

また、新築住宅と中古住宅の大きな違いとして、物件チェックの難しさもあります。新築住宅と違って中古住宅は1戸1戸が全く別のコンディションなのです。例えば同一マンションの同じ間取り・広さの物件でも、前所有者の暮らし方やメンテナンス方法の違いなどで、コンディションは大きく異なります。だからこそ、信頼できる不動産仲介会社のアドバイスを受けて、慎重に検討しなくてはなりません。

住宅を購入する際にはそれぞれ価格、ロケーション、広さ、設備などの希望条件があるでしょう。中古住宅にするか新築住宅にするかは、そうした条件中でも重要なポイントであることは間違いありません。ただ、最初からどちらか一方に限定せず、今回、紹介した内容踏まえて比較したほうがより良い住まい選びができると思います。他の諸条件とのバランスを考慮して、総合的に考えてもっとも生活の質を上げられる住まいを選びましょう。

執筆

谷内 信彦 (たにうち・のぶひこ)

建築&不動産ライター。主に住宅を舞台に、暮らしや資産価値の向上をテーマとしている。近年は空き家活用や地域コミュニティにも領域を広げている。『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP社・共著)

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。