2021年度税制改正大綱、住宅関係はコロナの影響に配慮し特例要件を緩和・延長

税制改正大綱に関するトピックス

この記事の概要

  • 2021年度の税制改正大綱が発表されました。新型コロナウイルス感染拡大の影響による先行きの不透明さなどを背景に住宅取得環境が厳しさを増していることから、住宅の購入や売却に関わる特例の緩和や延長などが盛り込まれました。今回は、そうした不動産関連項目を解説し、さらに、2021年度の住宅購入・売却で覚えておきたい特例や制度を再確認します。

2021年度税制改正大綱、住宅関係はコロナの影響に配慮し特例要件を緩和・延長

2021年度の税制改正には、新型コロナウイルス感染拡大による景気への悪影響を和らげるための減税措置と、デジタル・グリーンを中心とする産業構造転換促進の2点に主軸が置かれています。

不動産関連では地価上昇により2021年度の税額が増加する全ての土地に対し2020年度と同額とする特別措置が講じられることとなりました。また、住宅ローン減税の控除期間の延長と住宅取得等資金に係る贈与特例の非課税枠の一部拡大とともに、床面積要件が緩和されることとなっています。

ただし、教育資金などの一括贈与の非課税制度について、相続対策を抑える措置の導入が盛り込まれました。今回、それらを解説するとともに、2021年度の住宅購入・売却に適用される重要な項目をまとめます。

コロナ禍での税負担増を回避する項目が目立つ

2021年度税制改正大綱における不動産関連の項目は、コロナ禍での経済対策および消費税率引き上げに対する対策がほとんどです。例えば次のような項目が挙げられます。

住宅ローン控除の控除期間13年間の特例措置の延長と面積要件の緩和

以下の要件を満たせば、住宅ロ-ン控除の控除期間が13年間とされる特例が延長されます。また、一定の制限はありますが、面積要件である「登記簿面積50㎡以上」が「登記簿面積40㎡以上」に緩和されました。

[適用要件]

  1. 消費税率10%で住宅取得等を行い、2021年(令和3)年1月1日から2022年(令和4年)12月31日までの間に、居住の用に供すること。
  2. 住宅取得等をするための契約締結の時期が以下の期間内であること。
    • 注文住宅を新築する場合
    • 2020年(令和2年)10月1日から2021年(令和3年)9月30日までの期間
    • 分譲住宅・既存住宅を取得する場合、増改築等をする場合
    • 2020年(令和2年)12月1日から2021年(令和3年)11月30日までの期間

(注1)消費税率8%での住宅取得、売主個人(非事業用)からの取得は除かれます。

(注2)40㎡以上50㎡未満の住宅については、その年の合計所得金額が1,000万円を超える年については、適用できません。

(注3)その他の要件等は、現行の住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)と同様とされます。

上記の項目は、内需の柱となる住宅取得を幅広い購買層に対して喚起するための改正となります。面積要件を40㎡に引き下げる措置は、世帯構成や暮らし方の変化に伴い拡大するコンパクトマンションニーズなどを対象とする目的があると思われます。

直系尊属からの住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の拡充

①2021年(令和3年)1月1日から同年12月31日の住宅取得等資金の贈与において、下図のとおり非課税限度額が引き上げられます。

住宅用家屋の取得に係る契約の締結期間 ①消費税率10%で取得 ②左記以外
省エネ住宅等 左記以外 省エネ住宅等 左記以外
令和3年4月~令和3年12月 現行 1,200万円 700万円 800万円 300万円
令和3年4月~令和3年12月 改正案 1,500万円 1,000万円 1,000万円 500万円

②贈与を受けた年分の合計所得金額が1,000万円以下の場合に限り、現在、登記簿面積50㎡以上の対象要件が登記簿面積40㎡以上と緩和されます。この改正は「特定の贈与者から住宅取得資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例」についても同様となります。

(注)上記の改正は、2021年(令和3年)1月1日以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用されます。

登録免許税や固定資産税などの軽減措置が延長

以下のような税金の軽減措置の延長が大綱に盛り込まれています。これらは住宅取得・売却時のメリットを与えてくれます。この他にも固定資産税の軽減措置もあります。詳しくは専門家にお尋ねください。

登録免許税の軽減措置

  1. 土地の売買による所有権移転登記の軽減
    • 現行のまま2023年(令和5年)3月31日まで2年間延長。
  2. 相続登記未了のまま次の相続人が相続した場合の、相続移転登記の免税。
    • 現行のまま2022年(令和4年)3月31日まで1年間延長。

不動産取得税の軽減措置

  1. 宅地について課税標準が2分の1となる軽減。
  2. 住宅および土地の取得に係る標準税率(本則4%)を3%とする軽減。
  3. 宅地建物取引業者が取得した既存住宅に対して一定の改修工事を行った後、個人の自己居住用住宅として譲渡する場合、宅地建物取引業者に課税される建物・土地の不動産取得税の軽減。

(注)①および②は現行のまま2024年(令和6年)3月31日まで3年間延長。③は現行のまま2023年(令和5年)3月31日まで2年間延長。

富裕層の過度な相続対策を抑える措置を導入

不動産関連項目ではありませんが、前述の住宅取得等資金の贈与とともに検討する方がいらっしゃいますから、教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置についても触れておきます。

これについては、孫に対し一括して贈与を行い、贈与者死亡時の残高に係る相続税について、相続税の2割加算が適用されないことなどが過度な相続対策につながっていることが指摘されていました。令和2年度の与党大綱でも「次の適用期限の到来時に、その適用実態も検証した上で、両措置の必要性について改めて見直しを行う」とされており、その存廃についても検討された結果、両制度とも2年間延長されたものの、活用範囲に制限が加えられました。

直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の適用期限の延長と見直し

下記のとおり過度な相続対策を抑える措置を導入の上、適用期限が2023年(令和5年)3月31日まで2年延長されます。

  1. 贈与者死亡時において贈与資金のうちに教育資金として使用していない管理残額がある場合には、すべての贈与に係る残額が相続税の対象(改正前は、贈与者の死亡前3年以内の贈与に係る残額が相続税の対象)。
  2. 上記(1)により相続等により取得したものとみなされる管理残額につき、贈与者の子以外の直系卑属に相続税が課される場合には、当該残額に対応する相続税額が、相続税額の2割加算の対象。

(注)上記①と②の改正は、2021年(令和3年)4月1日以後の贈与について適用されます。

(注)「管理残高」とは、非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残高。

直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の適用期限の延長と見直し

教育資金の一括贈与と同様に、適用期限が2023年(令和5年)3月31日まで2年延長されます。

  1. 贈与者から相続等により取得したものとみなされる管理残額につき、当該贈与者の子以外の直系卑属に相続税が課される場合には、当該管理残額に対応する相続税額が、相続税額の2割加算の対象とされます。

    (注)上記の改正は、2021年(令和3年)4月1日以後の贈与について適用されます。

    (注)「管理残高」とは、非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額。

  2. 民法の成年年齢の引き下げに伴い、受贈者の年齢要件の下限を18歳以上(現行:20歳以上)に引き下げとなります。

    (注)上記の改正は、2022年(令和4年)4月1日以後の贈与について適用されます。

協力・監修

東京シティ税理士事務所:不動産を所有する方の相続と不動産税務を専門とする多数の税理士が所属する税理士事務所。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2021年1月29日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。

おすすめ・関連記事