生前整理の進め方 5つのStep

絶対に“争族”にしない!親子で考える相続(第8回)

この記事の概要

  • 相続の事前準備として大切なポイントが親の家の整理です。それも、親が生きているうちに、自分の意志で行ってもらう「生前整理」をしてもらったほうがトラブルは少なくなります。連載第6回では、親にスムーズに生前整理を実行してもらう秘訣を説明しました。今回は実際のやり方を、幸せ住空間セラピストの古堅純子さんにアドバイスしてもらいました。

生前整理の第一歩は、しまってあるモノをすべて出し、取っておくモノの優先順位をつけることです。驚くほどスムーズに進められる整理の極意をお教えします。

親世代にはもったいない精神が根づいていることが少なくありません。「捨てる」ではなく、「分ける」発想で片付けを進めれば、簡単に生前整理が進められます。

まず、収納されている中身をすべて外に出しましょう。あくまでも、モノを手放す結論を出すのは親です。「この品、懐かしいね。全部取ってあるんだ。几帳面だね」などと会話を弾ませながら、「使うモノ」と、1年以内には使わないと思われる「今すぐは使わないモノ」とに仕分けていきます。

「使うモノ」は、使用頻度によって「スタメン」や「控え」「二軍」に。「今すぐは使わないモノ」は「戦力外」に位置づけます。「スタメン」は、立ったまま出し入れしやすい「ゴールデンゾーン」に収め、「控え」は「スタメン」の近くと位置決めすれば、収納の使い勝手も格段に向上します。一方、「戦力外」は中身を段ボール箱に入れ、邪魔にならない場所に保管しておきます。1年後に親子で中身を見直すと、処分することに意外なほど同意してくれることもあります。

生前整理で厄介なのはアルバム。思い出の写真を親に捨てさせるのは至難です。「親子で1冊のベストアルバムを作ってみましょう。親子で作りながら『この写真はいらないか』となることもあります。」。

Step1 モノをすべて出して並べる

片付ける場所を決めて、収納されているモノをすべて取り出します。目の前の床に並べていくと、いかに多くのモノがあるかが分かり、片付ける気にもなります。親も何が入っているか忘れているような押し入れや納戸から始め、趣味やこだわりのモノがある部屋の片付けは時間がかかる傾向があるので、最後に回したほうがよいでしょう。

Step1 モノをすべて出して並べる

Step2 「使うモノ」「今すぐは使わないモノ」に分ける

中身をすべて出したら、「使うモノ」と、1年以内には使わないであろう「今すぐは使わないモノ」に仕分けていきます。そして「使うモノ」を、使用頻度によって「スタメン」「控え」「二軍」に分類します。どれに仕分けるか判断に困ったモノは、「今すぐは使わないモノ」である可能性が高いので「戦力外」としましょう。

Step2 「使うモノ」「今すぐは使わないモノ」に分ける

使用頻度による4分類のポイント

  • スタメン

    普段よく使うモノや使用頻度の高いモノ。下着、パジャマ、よく着る外出着、靴、バッグ、傘、普段使いの食器など。

  • 控え

    たまに使うモノや買い置きストックなど。レインコート、礼服、防寒具、来客用の食器など。

  • 二軍

    1年に1度しか使わないモノ。正月やクリスマスなどの季節のグッズ。写真、アルバムなどの思い出の品々。

  • 戦力外

    この先1年で使う予定のないモノ。すぐ処分する決断ができないときは、段ボール箱に入れて1年後に処分を決める。

Step3 「スタメン」をゴールデンゾーンに収納

「ゴールデンゾーン」とは、立った状態で腰から背の高さまでの位置。背伸びしたり腰を曲げたりせずに楽に取り出せるので、ここによく使う「スタメン」を収納するのが理想的です。「控え」はスタメンのそばや上下に収納し、「二軍」は天袋やかがんで出し入れする位置へ。食器棚やタンスでも同じ発想です。

Step3 「スタメン」をゴールデンゾーンに収納

Step4 「今すぐは使わないモノ」を段ボール箱に入れる

1年以内に使わない、または1年以上使わなかった「今すぐは使わないモノ」を段ボール箱に入れ、中身の内容と入れた日付を記して、邪魔にならない場所に保管しておきます。これなら今すぐに捨てる決断をしなくてよいので、親の理解も得られやすいでしょう。

Step4 「今すぐは使わないモノ」を段ボール箱に入れる

Step5 「今すぐは使わないモノ」を1年後、手放す

1年が経過したら、「今すぐは使わないモノ」の段ボール箱を開けて見直してみます。「1年間、全く使わなかったのだから、もういらないかな」「誰かにもらってもらおうか」と、親も処分に納得してくれるはずです。「私にちょうだい」と、いったん引き取ってから処分してもいいでしょう。

Step5 「今すぐは使わないモノ」を1年後、手放す

解説

古堅 純子

幸せ住空間セラピスト。1998年老舗の家事代行サービス会社に入社。約20年間、現場第一主義を貫き、お客様の元に通っている。2000軒以上のお宅に伺いサービスを重ね、整理収納のメソッドと技術を取得する。整理収納アドバイザー1級。企業内整理収納マネージャー。個人宅や企業内での整理収納コンサルティング、収納サービスを提供する傍ら、大手住宅機器メーカーの収納開発に協力した実績あり。テレビ・ラジオ雑誌などのメディアの取材協力も多数。『定年前にはじめる生前整理』(講談社)ほか著書多数

執筆

文:礒部 道生

イラスト:エイイチ

協力:『日経おとなのOFF』(日経BP社)

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。