働き方改革とこれからの住まいの関係性を考える(第七話「快適・安全な住宅で過ごすための、中古住宅リフォーム・リノベーション編」)

漫画で見る不動産購入・売却のポイントvol.47

この記事の概要

  •  ︎一般的に中古住宅は手ごろな価格で手に入る分、リフォームやリノベーションにお金がかけられるのが特徴のひとつ。ただし、築年数が経過している点は意識することが必要。
  •  ︎「耐震性」、「断熱性」、「24時間換気システム」など建築された年代によっても確認すべき点は異なる。
  •  空き家を購入する場合は、築年数に関わらず、定期的な換気やどんな手入れがされていたかを確認する。
  •  場所別の注意点も把握することで、より過ごしやすい住まいが手に入る。

第七話「快適・安全な住宅で過ごすための、中古住宅リフォーム・リノベーション編」

【Eさんファミリー】
Eさんは東京駅近くのオフィスで働く30代のサラリーマン。結婚して5年が経ち、元気いっぱいの息子(2歳)と専業主婦の妻と一緒に、オフィスからドア・ツー・ドアで30分のところにある都内の賃貸マンションで暮らしている。勤務先は働き方改革の流れをくんで、必ずしもオフィスで仕事をしなくてもいいという方針に。息子を伸び伸びとした環境で育てたい、趣味のサーフィンをもっと気軽に楽しみたいと考えているEさんは、郊外でのマイホーム購入した。

中古住宅は手ごろな価格で手に入る分、リフォームやリノベーションにお金がかけられる。築年数が経過している点は意識することが必要

一般的に中古住宅は、立地や広さが新築住宅と同等であっても、手ごろな値段で手に入るというのがメリット。ゆとりがある分、リフォームやリノベーションにお金がかけられるので、自分たちらしい住宅を造りあげられます。随所に想いが反映できるのも満足度の高さにつながると言えるでしょう。
実物をチェックしてから購入できるというのもうれしい点。大きく手を入れるとしても、事前に眺望や風通しなどがチェックできます。住んだ後のことが想像しやすいのも中古住宅の大きな魅力です。
一方、築年数が経過していることによる注意点もあります。ここでは、後悔のない中古住宅への住み替えとなるよう、チェックポイントを解説していきましょう。

建築された年代によって、確認すべき点は異なる。

リフォームやリノベーションというと、外観をきれいにしたり室内の設備やデザインを自分好みに変更したりなど、目に見える部分に関心が行きがちです。しかし、いくら見た目が気に入っても住宅性能が低い場合はその快適性に問題が生じてしまうこともあります。ここでポイントとなるのは、住宅を建てる際の住宅性能の新基準や義務化が定められた年を知っておくということです。つまりその年より前に建築確認申請された住宅は新基準に達していない場合が考えられるので、購入前には必ず確認し、現行の基準をクリアできるような対応をしておくということが必要になります。

1981年:耐震性能の新基準(新耐震基準)

1981年5月31日以前に建築確認申請された住宅は旧耐震基準をもとに建てられた可能性があります。旧耐震基準は震度5程度の揺れで倒壊しない、もしくは破損しても補修すれば住み続けられるということを想定しています。一方、1981年6月1日以降に建築確認申請された住宅は新耐震基準に対応しており、震度6~7でも建物が倒壊しない、もしくは破損があっても人命を損なわないような強度が備わっている必要があります。
なお、1995年に発生した阪神・淡路大震災の教訓をもとに、2000年には木造住宅の耐震基準が強化されました。地耐力に応じた基礎構造にすることが規定されたので、事実上地盤調査が義務化したということになります。

※どのくらいの重さに耐えられるか・地盤沈下ヘの抵抗力など地盤の強さを示す指標。

1999年:断熱性能の新基準(次世代省エネ基準)

1980年に省エネ基準が初めてもうけられ、以降1992年、1999年にその内容が見直されてきました。1999年は大幅な変更となり「次世代省エネ基準」と言われています。ただし、あくまでも基準であり義務ではありません。よって、1999年以降の住宅でも基準を満たしていない可能性があるので注意しましょう。断熱性能の基準を満たすには、複層ガラスにしたり屋根裏や床下に断熱材を入れたりします。また、地域によって基準が異なりますので、費用や範囲などについては事前に確認しておくと安心でしょう。
断熱性能の低さはヒートショックの原因にもなります。東京都監察医務院の報告によると、2017年に死亡直前の行動が入浴中だった事例は東京23区で1,479件発生しています。11~4月に多く、9割が65歳以上という結果になっています。寒い時期に多いということは温度差、つまり断熱性が影響しているという面は否めません。

2003年:24時間換気システムの義務化

近年の住宅は気密性が上がった分、自然換気が難しくなっています。また、昔のように天然素材だけで建てられているわけではないので、住宅自身が呼吸できない状態でもあります。
気密性が向上したことで、エアコンのききがよくなるなどのメリットがある一方で、シックハウス症候群や二酸化炭素の濃度が高まることでの体調不良などが問題視されるようになりました。十分に換気できないことはカビやダニの発生原因にもなり、建物にダメージを与えることになります。このようなことがなるべく起きないように24時間換気システムが義務化されることになりました。

空き家だった中古住宅を購入する場合は、どのように管理されていたかも確認

空き家を購入する場合は、築年数に関わらず、定期的な換気やどんな手入れをしていたかどうかを確認するようにしましょう。ずっと閉めきっていたのであれば、そのことによって湿気がこもり、躯体が傷んでいる場合もあります。購入前にそれに気づかず住み始めてから不備が出てきては大変です。
最近は「ホームインスペクション」といって、ホームインスペクター(住宅診断士)が住宅の状態を診断してくれる専門業務があります。自分で内見しただけでは心配という場合はこういった専門家にお願いするといいかもしれません。

場所別の注意点も把握しておく

自分らしい住まいにしたいと言っても注意点は抑えておく必要があります。
キッチンの失敗例で多いのが床の素材選びです。油汚れなどがさっと拭き取れるようにと、タイルを選んだ場合滑りやすくなってしまったということも聞かれます。滑りにくいという視点をもつことは浴室も同じなので覚えておくようにしましょう。また、家族が開け閉めする冷蔵庫は手前に設置場所をもうけることをおすすめします。奥に配してしまうと、調理中に家族と接触してしまうなどして思わぬケガにつながってしまうことも想定されます。
トイレはリビングから近いと便利ですが、使用中の音が聞こえないくらいの距離は保っておくといいでしょう。家族同士なら気にならなくても、来客時などはお互い気を使ってしまうことにもなります。

快適な住まいを実現するためには、自分好みというだけでなく“住宅性能や機能性の高さ、安心・安全に過ごせる場所という基準で判断することも大切”ということを忘れないようにしましょう。

執筆

橋本 岳子 (はしもと・たかこ)

20年勤めた不動産情報サービスの会社での経験を活かし、住まい探しが初めての方にも分かりやすい、生活者の目線に立った記事の執筆活動を手がける。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2019年6月28日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。