【シリーズ連載】親子で暮らす?近くに住む?二世帯住宅と近居を考える(第五話「親子が仲良く暮らすためのポイント–制度編–」)

漫画で見る不動産購入・売却のポイントvol.34

この記事の概要

  •  1980年は共働き世帯より専業主婦世帯の方が約2倍多かったが、現在はその数が逆転している。親と近居や同居を望む人が増えているが、実際に近居や同居をしている人の割合は望む率に比べて低いのが現状。
  •  政府は、同居をしやすくための各種支援制度や税制控除を打ち出している。
  •  2018年9月28日本編公開時の要件であり、税制等は今後変更となる場合があります。

第五話「親子が仲良く暮らすためのポイント–制度編–」

【Aさん・Bさん親子】
親のこれからについて、心配するようになってきた共働き夫婦のAさん。結婚後は電話やメールで連絡を取り合っていたが、最近子どもができたことで親との同居や近居を検討中。親世帯のBさんは、子育てがひと段落して夫婦水入らずの生活を送っていたものの、息子夫婦のこれからを考えて、できる限り協力したいと考えている。

共働き世帯の増加に伴い、近居や同居を望む割合も上昇傾向に

「独立行政法人 労働政策研究・研修機構」の統計によると、1980年には専業主婦世帯が共働き夫婦の約2倍だったのに対し、2017年になるとその世帯数は逆転しています。女性の社会進出が進んだことや賃金の減少などが理由で共働きを選択する世帯が増えたことが原因と考えられますが、その分家事や育児の負担は夫婦に重くのしかかっています。
親の協力を得たいと近居や同居を望む率が高くなっているものの、実際に近居や同居をしている人の割合は望む率に比べて低いのが現状。その乖離が問題と認識した政府は、三世代同居をしやすくするための支援制度や税制控除を導入しています。

近居と同居。理想と現実との差が顕著に

「2013年度家族と地域における子育てに関する意識調査報告書」(内閣府)によると、「理想の家族の住まい方」という問いでは、20 歳~49 歳有配偶者の場合「祖父母と近居」(48.6%)「祖父母と同居」(15.0%)という結果となっており、約6割の人が近居か同居を理想としていることが分かります。
それに対し「2015年度国勢調査世帯構造等基本集計」(総務省統計局)では、三世代世帯数の占める割合は全世帯の5.7%(約302万世帯)にとどまっており、内閣府の調査と照らし合わせてみると理想と現実との差が顕著に現れていることが分かります。

同居をしやすくための各種支援制度や税制控除

少しでも同居をしやすくできたら…という考えから、政府が打ち出した各種支援制度や税制控除は以下のようなものです。それぞれ要件などもあるので、事前に確認するようにしましょう。

(1)三世代同居に対応した良質な木造住宅等の整備への支援(地域型住宅グリーン化事業)

地域型住宅グリーン化事業とは、長期優良住宅、ゼロ・エネルギー住宅などの優れた木造住宅を新築する場合などに対して、補助が受けられるというもの。木造の長期優良住宅と認定低炭素住宅及び性能向上計画認定住宅では、1戸あたり110万円(ゼロ・エネルギー住宅は140万円)を限度に補助が受けられるほか、地域材を多用する場合は20万円を限度に加算されます。さらに、三世代同居でキッチン、浴室、トイレ、玄関のうち、いずれか2つ以上を住宅内に複数設置する場合は、1戸あたり30万円を限度に加算されます。

(2)三世代同居など複数世帯の同居の実現のためのリフォーム工事への支援

三世代同居等に対応するリフォーム工事を行う場合、一定の性能向上が認められる場合 100万円、長期優良住宅(増改築)認定を取得する場合 200万円、省エネ性能を向上させる場合 250万円と各々補助限度額が設定されています。三世代同居対応の工事については、50万円を限度として、各々の補助限度額に加算されます。
三世代同居改修工事については、リフォーム工事完了後、キッチン、浴室、トイレ、玄関のうちいずれか2つ以上が複数あることなどが要件となります。工事は、国土交通省に事業者登録をした業者へ依頼する場合が対象です。

(3)三世代同居に対応した住宅リフォームを行った場合の所得税の税額控除

三世代同居などに対応するリフォーム工事を行う場合、いずれかの所得税の税額控除が受けられます。リフォーム工事終了後、キッチン、浴室、トイレ、玄関のうちいずれか2つ以上が複数あること、合計所得金額が3,000万円以下であることなどが要件となります。

●リフォーム投資型減税

一定の三世代同居リフォームを行った場合、工事費の10%が所得税額から控除されます。対象工事費限度額は250万円、最大控除額は25万円です。

●リフォームローン型減税

5年以上のローンを組んだ場合、ローン残高の一定割合(三世代同居などに対応するリフォーム工事については2%、その他工事については1%)が5年にわたって控除となります。三世代同居などに対応するリフォーム工事費の限度額は250万円、そのほかの工事をした場合はリフォーム工事分と合わせて1,000万円が上限。5年間の最大控除額は62.5万円です。

子どもの急な発熱で保育園から呼び出しの電話がかかってきたり、残業が長引いて帰りが遅くなってしまったりなど、仕事をしながらの子育てはなかなか大変なものです。そんなとき、親が近くにいてくれたらこんなに心強いことはありません。これを機に、同居や近居について本格的に考えてみてはいかがでしょうか。

執筆

橋本 岳子 (はしもと・たかこ)

20年勤めた不動産情報サービスの会社での経験を活かし、住まい探しが初めての方にも分かりやすい、生活者の目線に立った記事の執筆活動を手がける。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※  2018年9月28日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合があります。