閉じる

ページの先頭です

50代の売却。~親から相続した不動産を売却するまでのステップ~第九話「取得費加算の特例編」

漫画で見る不動産購入・売却のポイントvol.73

公開日:2021年01月29日

この記事の概要

  •  不動産を売却して利益がでると、譲渡所得税の対象に。譲渡所得税額は、所有期間が5年超か以下かによって税率が変わってくる。
  •  相続後、相続税の申請期限(=相続のあった日の翌日から10カ月以内)から3年以内に売却すると『取得費加算の特例』が利用できる。
  •  特例を受けるためには確定申告が必要。

50代の売却。~親から相続した不動産を売却するまでのステップ~
第九話「取得費加算の特例編」
50代の売却。~親から相続した不動産を売却するまでのステップ~第九話「取得費加算の特例編」

【Gさん】
Gさんの父親は30年前に他界。母親は20年前まで都内の中心部にある一戸建てで暮らしていましたが、整備計画により売却。そこで得た現金で、都内に区分所有マンションを三戸(一戸は自宅、二戸は賃貸)購入し、所有していました。そのような中、母親が室内で転倒し骨折。入院生活で次第に体力が低下し、他界してしまいます。遺言書はなく、慌てる2人兄弟のGさんとGさんのお兄さん。遺言書があればな・・・、不動産の組み換えをすすめておけばよかったな・・・など後悔しながら、売却へ向けて動き出しているところです。

まずは譲渡所得税の基本を把握

不動産を売却して利益がでると、譲渡所得税の対象となります。利益=収入とみなされるので、所得税や住民税などがかかってくることになりますが、その計算方法は下記の通りです。


①課税譲渡所得金額を算出する

売却金額-(取得費+譲渡費用)=課税譲渡所得金額(=利益)

ここでいう取得費とは、購入時の価格とその際にかかった諸経費の合計となります。(実際には建物の減価償却費も関わってきますが、今回は考慮しないものとします。)ただし、相続した物件の場合は、購入時のパンフレットや契約書が見当たらないケースも多く、これらがはっきり分からないことも多いようです。その場合は、売却金額の5%として計算する方法、公的資料で算出する方法などがあります。契約書がない場合、まずは税務署または税理士などの専門知識のあるところに相談してみるといいでしょう。


②所有期間を調べ、譲渡所得税額を計算する

課税譲渡所得金額(=利益)がプラスの場合は、それにかかる税金である譲渡所得税額を計算します。所有期間が5年超か5年以下かによって税率が変わってくるので、まずは所有期間を調べること。相続によって取得した不動産の場合、所有期間は親が所有していた期間を引き継ぐことができます。ここで注意しておきたいのは、所有期間の算出基準が売却した年の1月1日現在であることです。売却した日を基準として考えてしまうと、想定と税率が変わってしまうこともあるので、しっかり認識しておくようにしましょう。



長期譲渡所得:所有期間が5年超の計算方法

課税譲渡所得金額×15.315%=所得税(復興税含む)
課税譲渡所得金額×5%=住民税


短期譲渡所得:所有期間が5年以下の計算方法

課税譲渡所得金額×30.63%=所得税(復興税含む)
課税譲渡所得金額×9%=住民税


令和19年までとはなりますが、所得税には復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%が上乗せされています。

相続後、一定期間内に売却すると利用できる『取得費加算の特例』

相続した不動産を一定期間内に売却した場合は、一部金額を取得費に加算することができます。所得費に加算されることで、譲渡所得税額の算出時に基準となる課税譲渡所得金額が減額となるため、税の負担が軽減されるというわけです。その売却期限は、相続税の申請期限(=相続のあった日の翌日から10カ月以内)から3年以内。相続で不動産を得た人というのはもちろん、その不動産に相続税が課税されていることも要件となります。
取得費に加算できる相続税額は、下記で計算した金額です。


Aその者の相続税額×(Bその者の相続税の課税価格の計算の基礎とされたその譲渡した財産の価格 ÷(Cその者の相続税の課税価格+D その者の債務控除額)=取得費に加算される相続税額


Gさんのような子2人が相続人になるケースで、参考までに簡易的なシミュレーションをしてみましょう。
(減価償却費や小規模宅地評価減等一切考慮せず、万円以下は切り捨てて計算しています。)
(実際にご利用になる際は、税務署または税理士等の専門家にご相談ください。)


[前提条件]

  • A 兄弟ふたりで仲良く母親の財産を均等に相続し、2人あわせての相続税額は1,840万円
  • B 相続した所有期間5年超えの相続税評価額10,000万円のみずほマンション1室を12,000万円で売却した。 (購入時の価格は不明、譲渡費用は300万円)
  • C 相続した財産は現金5,000万円と相続税評価額10,000万円のみずほマンション1室の計15,000万円
  • D 債務は考慮しないものとした。


取得費に加算される相続税額

1,840万円×(10,000万円/15,000万円)=1,226万円

課税譲渡所得金額

12,000万円-(12,000万円×5%+1,226万円(取得費加算)+300万円)=9,874万円

譲渡所得税額

※所有期間が5年超のため、長期譲渡所得の税率で計算
9,874万円×15.315%=1,512万円 所得税(復興税含む)
9,874万円×5%=493万円 住民税
→税金総額は2,005万円
なお、取得費に加算される金額が課税譲渡所得金額を超える場合は、課税譲渡所得金額の相当額が取得費に加算されることになります。

『取得費加算の特例』を活用しない場合との税金の差額

12,000万円-(12,000万円×5%+300万円)=11,100万円
11,100×15.315%=1,699万円 所得税(復興税含む)
11,100×5%=555万円 住民税
→税金総額は2,254万円
→取得費加算の特例を活用した場合、249万円(2,005万円-2,254万円)税金が減少しました。

特例を受けるためには確定申告を

『取得費加算の特例』は、売却をすれば受けられるというものではなく、確定申告での手続きが必要です。確定申告書には、『相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書』『譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書【土地・建物用】)』などを添付します。
ちなみに、『相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書』を利用すると、取得費に加算される相続税額が計算できます。

執筆

橋本 岳子 (はしもと・たかこ)

20年勤めた不動産情報サービスの会社での経験を活かし、住まい探しが初めての方にも分かりやすい、生活者の目線に立った記事の執筆活動を手がける。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2021年1月29日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。

バックナンバー

閉じる×
ページの先頭へ