50代の売却。~親から相続した不動産を売却するまでのステップ~第四話「相続したマンションが賃貸中。売却は可能?編」

漫画で見る不動産購入・売却のポイントvol.68

この記事の概要

  •  入居者がいる賃貸物件でも売却できる。所有者が変わることをオーナーチェンジといい、新しいオーナーは家賃収入が見込める点がメリットとなる。
  •  入居者へ売却してもいいかなど確認する必要はないが、オーナーが変わったことや賃貸借契約の内容が引き継がれることは新オーナーから入居者に伝える必要がある。
  •  自宅の売却ではないので、譲渡益が出たときに使える特例や、譲渡損が出た場合の損益通算・繰越控除の特例は対象外となる。

50代の売却。~親から相続した不動産を売却するまでのステップ~第四話「相続したマンションが賃貸中。売却は可能?編」
50代の売却。~親から相続した不動産を売却するまでのステップ~第四話「相続したマンションが賃貸中。売却は可能?編」

【Gさん】
Gさんの父親は30年前に他界。母親は20年前まで都内の中心部にある一戸建てで暮らしていましたが、整備計画により売却。そこで得た現金で、都内に区分所有マンションを三戸(一戸は自宅、二戸は賃貸)購入し、所有していました。そのような中、母親が室内で転倒し骨折。入院生活で次第に体力が低下し、他界してしまいます。遺言書はなく、慌てる2人兄弟のGさんとGさんのお兄さん。遺言書があればな・・・、不動産の組み換えをすすめておけばよかったな・・・など後悔しながら、売却へ向けて動き出しているところです。

賃貸中のマンションでも売却は可能

人生で何度とない不動産売却。その中で、自宅を売却するということはあっても、人に貸しているマンションを売却するという機会は、あまりあるケースではありません。自宅のような居住用の物件を売却する場合、一般的には売却したら転居しなければなりませんが、賃貸住宅として所有しているマンションを売却する場合は、入居者が住み続けていても、売却して所有者を変更することが可能です。

こういったケースはオーナーチェンジと呼ばれており、所有者が変わるのみ。売却時に入居中ということは、投資目的で購入する人にとっては大きなメリットです。少なくとも購入時は空室に悩むことはなく賃貸経営ができることになります。ただし、人が住んでいるので、室内の様子がチェックできないという点は否めません。そのような時のために、修繕履歴やリフォーム時に撮影しておいた写真などをとっておくと活用できます。不動産は大きな買い物です。少しでも情報が多いほうが購入する側も決断しやすいといえます。相続するまでは親が全てを管理しているかもしれませんが、いずれは受け継ぐかもしれない・・・ということも考えて、事前に聞けることは質問するなどし、自分自身も情報を収集しておくことは重要です。

入居者へは、オーナーが変わったことや賃貸借契約の内容が引き継がれることを新オーナーが明示

賃貸マンションの売却時は、手続きなどが煩雑そうと考えている方もいらっしゃるようですが、特別難しい手続きはありませんし、入居者に売却してもいいかなどお伺いをたてる必要もありません。入居者にとっては、単にオーナーがかわるだけで、条件等は賃貸借契約書の内容が引き継がれるからです。
ただ、売却後新しいオーナーに変わったら、新しいオーナーがその旨を伝える必要があります。その際、「賃借人の地位継承通知書」を作成し、入居者へ明示するのが一般的です。(「確認書」の仕様にして、入居者の署名と捺印をもらうケースもあります。)そこには下記のような内容が記されています。

  • ●オーナーが変更したこと
  • ●変更のタイミング
  • ●賃貸借契約書の内容はそのまま引き継ぐこと
  • ●敷金返済の義務は新しいオーナーに承継されること
  • ●変更になる賃料の振込先
  • ●新たな管理会社の概要

など。

売却するにあたって、入居者との間に手続きが生じることはありませんが、退去する予定があるかどうかは確認しておきましょう。投資用物件として売却することになるので、前述のように入居中か否かで大きく価値が変わってくるからです。
査定は、自宅を売却するのと違って、収益還元法という利回りを中心とした方法がとられます。また、今後家賃がアップできそうな立地であるか、地価の上昇によって売却益が見込める物件かなど、投資目線で価格が決まってきます。居住用物件のように購入者がそこに住むことを前提とした査定ではないことは、認識しておきましょう。

マイホーム売却時の特例などは対象外

売却時に譲渡所得に対して所得税・住民税が課されますが、譲渡損失が発生する場合、これらは課税されません。また、自宅の売却ではないので、譲渡益が出たときに使える『3,000万円特別控除』『特定居住用財産の買換え特例』や、譲渡損が出た場合の損益通算・繰越控除の特例は対象外となります。

執筆

橋本 岳子 (はしもと・たかこ)

20年勤めた不動産情報サービスの会社での経験を活かし、住まい探しが初めての方にも分かりやすい、生活者の目線に立った記事の執筆活動を手がける。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2020年8月31日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。