50代の売却。~自己所有する一戸建てを売却し、都心マンションへ住み替え~第七話「立地選択時には、子どものことも考える編」

漫画で見る不動産購入・売却のポイントvol.84

この記事の概要

  •  子ども世代の晩婚化や出産年齢の高齢化によって、子どもがダブルケアに直面するケースが顕著になってきている。
  •  子ども世代に共働き世帯が増えている中、ダブルケアに直面すると時間のやりくりが大変となり、仕事や子育てに影響が出ることも。
  •  住み替え先の希望条件に子どもがアクセスしやすい場所を加えることも検討しておくといい。

50代の売却。~自己所有する一戸建てを売却し、都心マンションへ住み替え~第七話「立地選択時には、子どものことも考える編」
50代の売却。~自己所有する一戸建てを売却し、都心マンションへ住み替え~第七話「立地選択時には、子どものことも考える編」

【Hさん】
娘2人が独立してほっと一息している50代のHさん夫婦。子育てに適していると購入した都内郊外の庭・駐車場付き一戸建ては6LDKあり、鉄筋コンクリート造3階建てのこだわりある注文住宅。夜は人通りが少ないとあって、セキュリティにも配慮した物件です。土地面積は300㎡以上あり、夫婦2人では広すぎる上に駅から遠い点をネックに感じてきました。コンパクトな広さや便利さが売りの都心にあるマンションに興味が出てきたため、住み替えを検討することになりました。

人生100年時代といわれるようになり、50代や60代、70代はバリバリ働いていたり、スポーツや趣味にいそしんだりと元気に暮らしている方が多い昨今。しかし、元気な場合だけでなく、子の手を借りることも想定しておかなければなりません。住み替え先についても、子ども世代目線で検討しておくというのもひとつのポイントとなるでしょう。

高齢化少子化で顕著になってきている「ダブルケア」

ダブルケアとは親の介護と子育てを同時に行うこと。子ども世代の近年の晩婚化や出産年齢の高齢化によって、ダブルケアに直面するケースが顕著になってきています。以前から介護と子育てを同時に行うケースはありましたが、親子三代などで一つ屋根の下に暮らしていた時代は、家族で助け合いながら行っていました。よって、核家族化が進んだ今ほど負担は大きくなかったかもしれません。

内閣府委託調査「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査」(2016年)によれば、ダブルケアをしている人の推計人口は約25万3,000人。男女の内訳は、男性が約85,000人、女性が約168,000人となっており、年代別では30代・40代が約80%を占めています。
また、2025年にはすべての団塊世代が75歳以上になります。団塊世代に次いで人口ピラミッドのボリュームゾーンとなる団塊ジュニア世代(1971~74年生まれ)がダブルケアに直面する年代となり、ダブルケアをしている人の推定人口はさらに上昇することが考えられます。

ダブルケアに直面すると、時間のやりくりが大変に

仕事や子育てに忙しい年代がダブルケアに直面したとき、まず考えなければならないのが時間のやりくりです。共働き夫婦の世帯数は、1997年以降、男性雇用者と無業の妻から成る世帯数を上回り、夫は外で仕事をし、妻が子育てをしながら家を守るという考え方は一般的ではなくなってきています。こういった世帯に親の介護が入ってくると、業務量や労働時間を調整したり、離職・休職したりなど仕事での影響が出てしまうことも否めません。子育てに費やす時間調整も必要になってくるでしょう。

“子ども世代にできるだけ負担をかけないためには”という点を考えて、住み替え先を検討

このような中、親の住まいが遠かったり、アクセスしにくい場所にあったりするケースでは、その移動時間や移動費などが大きな負担に。親側はこういった状況をふまえて、“子ども世代にできるだけ負担をかけないためには”という点を考えておく必要があります。
子どもが今の場所に住み続けるというケースばかりではないので一概には言えませんが、一般的に子どもがアクセスしやすい場所に住み替え先を構えるというのは、希望条件として検討しておくといいでしょう。複数の路線が利用できる駅の近く、車でアクセスしやすい立地、バスが頻繁に往来しているエリアなど、負担が少しでも減らせる場所というのがポイントです。また、最寄り駅やバス停から平坦な場所というのも意外と重要。高台は眺望が良い、水害のリスクが低いというメリットがありますが、行き来が頻繁になると億劫になり、ストレスを感じるようになってしまうこともあるからです。

スーパーマーケットやコンビニエンスストア、ドラッグストア、医療機関が近いというのは日常生活を送る上でも重要視したい点ではありますが、これらはダブルケアを行う子ども世代にとってもうれしいポイントとなります。
子ども世代からしても、親側との行き来がしやすければ子育ての協力もお願いしやすいというもの。お互いの負担が少しでも減らせるよう、住み替え先の立地は家族で話し合って決めるというのもいいかもしれません。

執筆

橋本 岳子 (はしもと・たかこ)

20年勤めた不動産情報サービスの会社での経験を活かし、住まい探しが初めての方にも分かりやすい、生活者の目線に立った記事の執筆活動を手がける。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2021年9月30日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。

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