時代と共に進化してきた住宅性能
住宅が住まい手にとって安全、かつ環境負荷の軽減となるよう、国は住宅性能の基準を引き上げていきました。建築基準法が施行されたのは戦後すぐの1950年ですが、その後数回の改正を行い、耐震性や断熱性などの基準をレベルアップしています(断熱性については2025年まで任意)。
(表1)建築基準法の改定の変遷と住宅性能に関するトピック
| 年代 |
耐震性関連 |
断熱性関連 |
その他 |
1970年代 以前 |
●1950(昭和25)建築基準法施行 |
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| 1980年代 |
●1981(昭和56)建築基準法改正 ・新耐震基準施行 (それ以前の建物は「旧耐震基準物件」として取り扱われる) |
●1980(昭和55)「旧省エネ基準」制定 ★ ・断熱等性能等級2新設 (それ以前の建築物は等級1に) |
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| 1990年代 |
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●1992(平成4)「新省エネ基準」制定 ★ ・断熱等性能等級3新設 ●1999(平成11)「次世代省エネ基準」制定 ★ ・断熱等性能等級4新設 |
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| 2000年代 |
●2000(平成12)建築基準法改正 ・基礎の形状、鉄筋量等について仕様規定化 ・バランスのよい壁配置規定 ・接合部の接合方法の仕様規定化 ●2009(平成21)長期優良住宅認定制度開始 |
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●2000(平成12) 住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)制定 ・住宅性能表示制度の導入 ★ ・瑕疵担保責任の10年義務化 |
| 2010年代 |
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●2013(平成25)改正省エネルギー法 ★ ・一次エネルギー消費量基準制定 ・断熱等性能等級4 |
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| 2020年代 |
●2025(令和7)建築基準法改正 ・無筋基礎の廃止 ・建物仕様に応じた壁量規定 |
●2022(令和4)「一次エネルギー消費量基準」制定 ★ ・断熱等性能等級5〜7新設 ●2025(令和7)建築基準法改正 新築において等級4以上の性能付与が義務化 |
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*筆者作成★は義務項目ではないことに留意(任意)
中でも、1981年と2000年の建築基準法改正では基準が大きく引き上げられ、その前後では建築された年が近い物件同士でもスペックが大きく違ったりもします。以降、中古住宅を大きく「1980年以前」「1981-2000年」「2000年以降」と3つの年代ゾーンに分け、それぞれの住宅性能の特徴や価値について整理してみたいと思います。
(表2)築年代別に見る住宅の耐震性・断熱性
| 建物の建築年 |
住宅性能 |
その他 |
| 耐震性 |
断熱性 |
| 1980年以前 |
旧耐震基準 |
等級1〜2 ★ |
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| 1981〜2000年頃 |
新耐震基準 (1981年基準) |
等級2〜4 ★ |
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| 2000年以降 |
新耐震基準 (2000年基準) |
等級4以上 ★ |
住宅性能表示制度による 安全・安心性の向上 |
- ★は義務項目ではないことに留意(任意。ただし2025年4月以降築からは義務化)
1980年以前築:耐震改修とリフォーム履歴のチェックは必須!
この年代の建物は、1981年に制定された新耐震基準を満たしておらず、中古住宅市場では「旧耐震物件」として流通しています。築年が古いことや大地震における倒壊リスクが高めであることから、ストックとしての価値はあまり認められておらず、住宅ローンの審査が通りにくい、住宅ローン控除や地震保険料の割引等が受けられないなどの現実的なデメリットがあります。ただし、耐震改修などで耐震性を新耐震基準に適合させることによってクリアできるため、耐震改修済み(またはこれから計画)であることが資産価値維持の観点から大切になっていきます。
リフォームやリノベーションをすることで、ストックとしての価値を高められます。比較的低価格で流通しており、一次取得層が独自性ある空間にリフレッシュして暮らしたり、利回りの高い賃貸投資用不動産として運用をするなど、様々な使い方ができそうです。
検討時のチェックポイントですが、建設されてから50年近く(またはそれ以上)経っていることから、購入を検討する際は建物のコンディション(とくに構造部)の確認が必須です。とくに戸建住宅においては、前所有者のメンテナンスによって、基本的な住宅性能が大きく違っており、自費でインスペクション(建物状況調査)してでも現状性能を確認しておきたいものです。
なお、現在こうした旧耐震物件の住宅にお住まいの方は、戸建であれマンションであれ、そろそろ建替えも視野に入れた維持管理計画が必要になってきます。建替えはリフォームとは比べものにならないほどの手間やコストがかかりますので、場合によっては住み替えを検討するなども大切かと思います。
1980年以前築の中古住宅の検討ポイント
- ・築50年近く(以上)経過しており、リフォームやリノベーションによる刷新が不可欠。物件価格だけでなく、リフォーム費用を合算した総額で検討していく。
- ・インスペクション(建物状況調査)などで、建物構造部を中心とした現況性能やコンディションの確認が必須。マンションなら共用部の大規模修繕の実施履歴を確認。
- ・〈マンション〉住み継ぎがない場合、住人に高齢者が多く、各戸の住人構成や管理組合の活動状況もチェックする。
- ・〈戸建て住宅〉中古で購入後の使用期間を勘案し、建替えも視野に入れつつコスト計算していく。
1981〜2000年築:メンテナンスや修繕の実施履歴を確認しておく
1981〜2000年の建物(※)は新耐震基準を満たしており、一定の住宅性能を有するストックとして中古住宅市場で流通しています。2026年時点で築26〜45年とある程度経過しており、場合によっては一定のリフォームが必要ですが、適切に維持管理されてきた物件であればまだまだ長期使用できるストックといえます。
マンションについては、法定耐用年数が47年(RC造)ということもあって概して物件価格は落ち着いてきます。価格面で比較的手に入れやすく、またその後の下落が築浅物件より少ないことから、安定した資産ともいえます。対して戸建て住宅は、法定耐用年数(木造で22年)を超えているため土地ベースで評価されているのが実情。ただしそれは流通市場の話であって、建物自体は一定のリフォームやリノベーションによって、さらなる長期使用も見込めます。
築年数をそれほど気にしないのであれば、リーズナブルに購入し、その分リノベーションに費用をかけて新たな価値をつくる方法もあります。実際、不動産業者が買い取って、リフォームを実施し、再販売する中古物件のボリュームゾーンはこの年代になります。
ただコンディションが様々なため、この年代の建物は適切に維持管理されてきたかのチェックが何より大切です。マンションならば大規模修繕の実施履歴を、戸建て住宅は構造部(基礎・柱・梁)のコンディションと屋根や外壁などのメンテナンスや修繕履歴を確認しましょう。
1981〜2000年築の中古住宅の検討ポイント
- ・前所有者の維持管理状況によって現状のコンディションが大きく異なる。
- ・現状のコンディションに応じた一定のリフォームが必要。
- ・〈マンション〉大規模修繕の計画と実施履歴、修繕積立金の残高を念入りにチェック。
- ・〈戸建て〉構造部(基礎・柱・梁)、屋根・外壁の老朽具合とメンテナンス履歴を確認。
2000年以降築:比較的安心だが類似物件との比較をしっかりと
2000年以降築の中古物件は、建築されてからそれほど年月が経過していないこと、概ね現行の住宅性能を満たしていることから、居住快適性や資産価値の面からも比較的安心して手にできるストックといえます。一方で、近年の新築住宅の価格高騰もあってコンディションのよい築浅中古物件に注目が集まっており(とくにマンション)、都心部を中心に、中古市場に出てもすぐに成約してしまう、物件価格が上昇傾向にあるなどの動きも見られます。
耐震性においては、2000年により細かな規定が加わり(※)、大幅に強化されています。中古住宅市場では1981年を境に「旧耐震基準」「新耐震基準(の物件)」での区別がなされていますが、そう遠くない時期に2000年以降かどうかが査定の大きなポイントになっていくものと筆者は考えています。一定の性能とコンディションを有していることから、現時点で最も資産価値の下落しにくい中古ストックといえます。加えて、2000年に「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)が施行され、瑕疵担保責任(10年保証)の義務化や住宅性能表示制度の導入(任意)など、物件に対する安心感が高まったことも価値の維持・向上に働いています。将来性を考えるのであれば、2000年以降の物件を選ぶことをお薦めします。
この年代における物件選びの注意点ですが、近年の建築コスト上昇の影響から、分譲価格を抑えるために専有面積をコンパクトにしたり、設備や内装の仕様やグレードを下げて分譲されている物件の場合もあります。ですので購入検討時は、近隣の類似物件と比較検討し、狭めではないか、収納量が少なくはないか、割高ではないか、設備や内装などの仕様が劣っていないかなどについてしっかりチェックしていきましょう。
また築浅であっても、前所有者の生活感を払拭するためには入居前に何らかのリフォームが必要ですが、壁紙の貼り替え程度で大丈夫そうか、設備機器の更新も必要かなどによってリフォーム費用が大きく変わりますので、そのあたりの概算も見ておきましょう。
2000年以降築の中古住宅の検討ポイント
- ・中古の中では比較的高額物件となる。
- ・価格が妥当か坪単価・㎡単価などで、近隣物件と比較、確認。
- ・広さや設備、グレードなど、近隣物件と比べてハンデはないか?
- ・比較的新しい物件だが、最低限必要なリフォーム費用を計上する。
同じ条件であれば、築年数が浅いほど物件価格は高くなっていきますが、住宅性能やリセールバリューもアップします。一方で、リフォームなどで性能向上は可能なので、居住性を高めるためにカスタマイズ費用を重視する考え方もあります。可能な限り資産価値の維持を気にかけたいのであれば2000年以降の物件を中心に検討していけばよいでしょうし、リーズナブルに住宅を取得されたいのであれば築年数にこだわらない選び方も考えられます。物件購入費用を抑え、その分リフォームに費用をかけることで、より自分好みの空間をつくる選び方もアリでしょう。
ただ、耐震基準の切り替わる1981年前後と2000年前後の物件については、築年数が近くても住宅性能に差があるケースもあるので、前記の「3つの年代」の特徴や差異を意識して検討していきましょう。
(※)新耐震基準の適用年月について
新耐震基準(1981年基準)は1981年6月以降、同(2000年基準)は2000年6月以降に建築確認を受けた住宅について適用されるため、竣工が基準年(1981年・2000年)以降であっても古い耐震基準の物件が存在することにご注意ください。