防犯性からみる賃貸住宅経営 ~投資の利回りを左右する防犯性~New

投資用不動産トピックス

この記事の概要

  • 住宅侵入犯罪の凶悪化や、つきまとい・ストーカー被害の増加、悪質な訪問販売による被害など、住まい手の安全・安心への不安などを背景に、賃貸住宅においても高い防犯性が求められるようになっています。防犯性の位置付けについて、賃貸住宅のオーナーは、入居者がどのようなポイントを気にしているのか考えてみましょう。

防犯性からみる賃貸住宅経営 ~投資の利回りを左右する防犯性~

賃貸住宅にも必要な犯罪への備え

“あればいい”から、“なくては困る”へ。住まいの防犯性は賃貸住宅でも不可欠な仕様になりつつあります。賃貸物件の検索サイトでも、防犯対策のなされた物件の特集ページがあったり、設備のチェック項目に挙がっていたりと、入居希望者が検討時に重要視するポイントとなっています。

(表)賃貸物件検索サイトの防犯機能に関する取り組み例

検索サイト 防犯機能に関する検索性
SUUMO
  • ・こだわり条件として「オートロック」「防犯カメラ」「TVモニタ付きインタホン」などの絞り込みが可能
  • ・「セキュリティ・防犯対策充実の賃貸住宅」での条件での物件検索が可能
LIFULL
HOME'S
  • ・「セキュリティ・防犯対策が充実した物件」特集があり、オートロック、防犯カメラ、角部屋などから検索可能
アパマン
ショップ
・「セキュリティー重視」の物件ページがあり、防犯性の高い設備を備えたマンションやアパートなどを探せる

※2026年3月現在

近年「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」による犯行事例など、住宅侵入犯罪の凶悪化をニュースでたびたび目にします。具体的な数値は公表されていませんが、警察庁の方に伺った話では、「闇バイトなど組織からの指示で無理やり侵入する」、「カードの暗証番号などを聞き出すために在宅時にも押し入る」、「ストーカーがわいせつ目的で押し入る」など、「強引型」「凶悪型」の事件が近年の新たな傾向のひとつとして出てきているとのことです。一人暮らしの世帯も多い、女性や高齢者もいる賃貸住宅で、防犯性が求められているのも当然でしょう。

ただ同じマンションであっても、自己居住用の分譲マンションに比べると、賃貸向けに建てられた住宅では防犯性はどうしても見劣りしてしまいます。オートロックの有無を見てもその差は明確です。しかし防犯性は既存の賃貸住宅でも強化が可能です。防犯力の底上げは、入居者の安全・安心の提供とともに、物件価値の向上につながります。

防犯機能の高い賃貸物件は、一般の賃貸住宅よりも入居率が高いという報告も出ています。福岡県においては、NPO法人福岡県防犯設備士協会が県・市・県警察の後援を受け、2011年から優良防犯認定制度を実施。同協会の調べでは、一般の賃貸住宅の平均入居率が81.2%なのに対し、認定物件の入居率は96.4%と大きな差が見られたとのことです。

出典:西日本新聞me「『性犯罪の危険少ない』防犯アパート人気 警察が“お墨付き”導入広がる」(2018年11月1日)

敷地や建物共用部に必要な防犯対策

防犯性から見た賃貸住宅のウィークポイントは様々ですが、突き詰めると、第三者が玄関先まで入り込めてしまえるという「動線面での不安」と、玄関錠や窓を破壊される「建物の物理的な抵抗性への不安」の2点に集約できるかと思います。

まず「動線面での不安」ですが、防犯カメラや防犯ライトなどで監視性を高める方法や、物理的にゲートをつくる方法が防犯性を高めてくれます。

監視性を高めるというのは、建物の出入口付近に防犯カメラを設置したり、センサー付きのライトやアラームを付けて夜間の侵入時に光や音で近隣に知らせるというものです。また、夜間は暗がりによる死角が増えるので、一定の照度が必要です。建物の出入口付近や廊下、階段など、人の出入りする箇所を中心に明るさを確保していきましょう。駐輪場や駐車場にも同様の設備を取り付けることで、盗難やいたずら防止にも効果的です。

ゲートというのは、エントランスの前や中にドアや門扉をしつらえ、関係者以外は建物内に入れないようにするということです。エントランスのある賃貸マンションであればオートロックシステムも後付けしやすく、コストと賃料上昇のバランスを見ての検討も可能かと思います。アパートや小規模賃貸マンションでも、建物内への動線が1本なら、エントランスから廊下の間に鍵の付いた背の高めな門扉を付けるだけでも、第三者の侵入を防ぐ効果が期待できます。この場合、訪問者が玄関ドア前まで近づけなくなるため、ゲートの前にインターホンを付けることが必要になります。

一般に住宅の防犯対策というと建物の強化を思い浮かべる方が多いかと思いますが、実は敷地や道路、隣地などとの境界部分の強化が不可欠なのです。敷地内に無関係な人間を入れないことが、防犯対策の第一歩。敷地と併せて建物共用部の防犯力強化が入居者から支持され、選ばれる物件へとつながっていきます。

専有部はドアと窓、インターホンの強化を

次いで室内の防犯力強化ですが、侵入窃盗の侵入口は玄関ドアと窓からの侵入でほぼ占められており、これらの補強が不可欠です。

(図)侵入窃盗の侵入口(共同住宅・3階建以下)

(図)侵入窃盗の侵入口(共同住宅・3階建以下)

出典:警察庁「住まいる防犯110番」

玄関ドアは、ドアと錠の強化がポイントになります。強固なドアへの交換もありますが、コストがかかり過ぎる場合は、ドアと枠の隙間を塞ぐ「こじ開け防止金具(ガードプレート)」を付けるなどで既存のドアも強化できます。錠は、鍵を防犯性の高いディンプルキーに替えたり、補助錠を取り付けて「ワンドア・ツーロック」などにすることで安心感が高まります。近年はスマートフォンなどで開閉する電子錠の採用も増えています。キーレスのため紛失やドアの閉め忘れがなくなり入居者の利便性が高まるだけでなく、賃借人の変更の際に実施する物理的な錠の交換が不要になり、オーナーにとってもコストや管理面でのメリットにつながります。

窓は、窓ガラスに防犯フィルムを貼ったり、クレセントをボタン錠や鍵付きのものに交換するなどで防犯力を強化できます。また、既存の窓の内側にインナーサッシ(内窓)を取り付けたり、シャッターを付けることでも防犯力を高められますが、これらは断熱性能や防災性能向上などのメリットにもつながるうえ、省エネリフォームの補助金が使えるケースもあって、コストパフォーマンスの高い取り組みです。

※リフォームの補助金については、時期や自治体によります

そして忘れてならないのが、インターホンのグレードアップです。訪問者を非対面でチェックできるよう、カメラ付きであることは今や必須で、広角レンズタイプであればカメラに映らない死角が減ります。録画機能があれば、不在時の訪問者の有無も確認できますし、後の証拠の収集にもなります。

以上、賃貸住宅の防犯対策例をざっとご紹介しましたが、不動産投資を実施・検討されている方にとって、こうした防犯対策は余計なコストに見えましたか?いえいえ、防犯性のまだまだ低めな賃貸住宅において、競争力を高め、賃料アップ・入居率向上の差別化要素ともなり得る、不可欠な投資なのです。

設備や内装の充実も大切ですが、まずは物件自体の基本性能として、防犯力を高めていくことは、近隣の競合物件との差別化につながります。既に賃貸物件を所有・運用されているオーナー様はもちろん、これから新規に賃貸物件購入を検討されている方も、防犯性をチェックしていくことで、入居者に選ばれる物件につながっていくかと思います。

執筆

谷内 信彦(たにうち・のぶひこ)

建築・不動産ライター / 編集者。主に住宅を中心に、事業者や住まい手に向けて暮らしや住宅性能、資産価値の向上を主テーマとして執筆活動を展開している。近年は空き家活用や地域コミュニティーにも領域を広げる。著書に『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP・共著)。

※本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※2026年3月27日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。