- 大学進学の際、親元を離れて一人暮らしを開始する新入学生は全新入学生の4〜5割とのことです(日本学生支援機構調べ)。多くの方はアパートやマンションなどの賃貸住宅住まいですが、進学を機にコンパクトなマンションを1戸購入し、お子さまの生活拠点とする選択肢も考えられます。賃貸でなく、持ち家にお子さまを住まわせるメリットについてご紹介しましょう。

1. 学生向け賃貸住宅と、分譲マンションの住宅性能を比較すると?
お子さまが自宅から遠方の大学に進学される場合、一人暮らしの住居をどうするかで4年間の就学環境は大きく変わっていきます。アパートやコンパクトマンションなど、賃貸住宅を借りて住まうのが一般的ですが、分譲マンションと比べると、学生向けの賃貸住宅の住宅性能はどうしても劣ってしまいます。
所有者であるオーナーが自己居住するわけではないため、収益性が優先されがちで、どうしても性能やグレードが見劣りしてしまうわけです。生活費を圧縮するため、賃料の安さを優先して狭めの部屋を選ぶことも、住環境の低下につながってしまいます。
(表1)Z世代の賃貸住宅への不満点(複数回答)

出典:(一財)住宅改良開発公社「Z世代賃貸住宅居住者アンケート調査」(2024)を基に筆者作成
若い世代の賃貸住宅への不満を見ても、住宅性能の低さが浮かび上がってきます(表1)。不満の1番目に挙がっている「冬の寒さ」は、近年の分譲マンションでは主流のペアガラスや断熱サッシでなく、単板ガラスが賃貸住宅ではまだまだ一般的だからでしょう。こうした温熱環境の差は、住まい手の睡眠の質を低下させたり、寒さ・暑さを補うための光熱費増加につながります。「隣の音が聞こえる(2位)」「上の階の音がうるさい(9位)」など、防音性能の低さは精神的なストレスやプライバシーの流出につながりかねません。
自宅とは違った環境での生活は、社会に出る第一歩としてよい体験機会といえなくもありませんが、お子さまにはできる限り安全で快適な空間の中でキャンパスライフを送ってほしいもの。表1には現れていませんが、とくに女性に不可欠な、オートロックがないなどの防犯性能が低くなることも問題です。
こうした背景から、お子さまの一人暮らしの開始のタイミングでコンパクトな分譲マンション(新築・中古)を購入するという選択肢が浮かび上がります。
2. 家賃という出費を資産形成に充てる発想
表2は大都市圏の賃貸住宅の平均賃料ですが、首都圏や大阪市、京都市などでは前年同月比で3%以上の上昇を見せており、今後も賃料の上昇は続いていくものと考えざるを得ません。仮に月額賃料8万円の賃貸住宅に4年間住み続けた場合、賃料だけでも合計400万円近くになりますが、これに入居時の敷金・礼金、更新料、上昇家賃なども含めると、4年間の住居費総額は500万円近くに達するのではないでしょうか。
(表2)三大都市の「賃貸マンション・アパート」平均募集家賃(2025年12月)

出典:アットホーム「2025年12月 全国主要都市における賃貸マンション・アパートの平均家賃(面積帯別)」を基に筆者作成
これを所有物件に置き換えると、購入費用(ローン使用の場合は頭金など)など一時的に高額の出費は伴いますが、こうした4年間支払うはずの家賃を持ち家の返済に付け替えることで、住居費を「消費」でなく「資産形成」のための費用として活用できるわけです。
持ち家購入の最大のメリットは、こうした賃料等の様々な住居費を資産形成の原資にできるということです。お子さまの学生生活を持ち家で送るメリットが「良質の居住環境」だとしたら、購入される親御さんにとっては「資産形成のための費用の付け替え」が何よりのメリットでしょう。
3. 大学卒業後の出口戦略も多彩
では、お子さまの大学卒業後、購入した住戸はどう取り扱っていけばよいのでしょうか。大学卒業後の住まいの扱いについては、保有と売却の2つの選択肢があります。
(表3)購入物件の卒業後の利活用例

保有し続ける場合、引き続きご本人やごきょうだい、ご家族で使用するほか、その地域で利用する方がいなければ賃貸物件として貸し出すことで収益化が可能になります。用途については、将来のライフステージの変化に応じていつでも保有・活用方法を見直せます。
一方、売却も可能ですが、数年での売買はそれまでにかかったコストを吸収し切れないケースもあります。その場合は、賃貸化して収益を上げた後に売却するなど、時間を味方につけた対策も考えられます。
このように、将来の賃貸化や売却を考慮すると、物件選びは慎重に行っていく必要があります。自己使用だからといって気軽に選ぶのでなく、立地や駅からの距離、周辺環境、設備の修繕など、その地域で一定の需要と競争力のある物件を選ぶことが大切です。
大学進学などで一人暮らしになると、家賃や光熱費、通信費、家具や家電品の購入費、そして食費と、実家で同居している時は見えなかったコストが一気に顕在化します。子どもの教育資金の捻出は大変かと思いますが、その中でも大きな費用である家賃を資産形成に充てることで、生活コストの改善が図れます。
就学環境の向上と、資産形成の両立。持ち家購入によるお子さま用の住まいの提供は、親子Win-Winの関係にもつなげられるのではないでしょうか。
建築・不動産ライター / 編集者。主に住宅を中心に、事業者や住まい手に向けて暮らしや住宅性能、資産価値の向上を主テーマとして執筆活動を展開している。近年は空き家活用や地域コミュニティーにも領域を広げる。著書に『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP・共著)。
※本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。
※2026年2月26日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。