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この記事の概要
J-REITが保有する一棟賃貸マンションのうち1,066物件※1を対象に、地域と住戸タイプ※2別に賃貸事業の年間支出と年間収入を集計した。年間支出額(建物延床あたり㎡単価)は概ね増加が続き、全体では直近14期の間に指数で100から114.0に上昇した。金額は、地域別では東京都心5区が最も高く直近で10,534円/㎡[図表1]。東京18区と市部がこれに次ぐ。しかしこれら東京の上昇幅は相対的に小さく、大阪市を筆頭に地方都市平均と名古屋市、政令指定都市平均で上昇幅が大きい。住戸タイプ別では、金額はコンパクトが最も高い(9,603円/㎡)が、上昇幅はワンルームを若干下回る[図表2]。ファミリーは比較的上昇幅が小さかったが、直近で上昇を強めた。
※1:J-REITの決算データ等を網羅して収録し時系列分析が可能な都市未来総合研究所のデータベース「ReiTREDA」を使用。集計対象とした物件の抽出条件は次のとおりである。:2018年度上期から2024年度下期について、当該期を含む過去1年間の収入と支出の連続したデータが得られること。建物の利用用途が住宅専用であること。投資対象が底地でないこと。賃貸借契約の相手方がエンドテナントであるか、またはマスターレッシーの場合には賃料保証が付されていない(運営委託のみである)こと。
※2:住戸の面積で住戸タイプを分類した。ワンルーム:概ね18㎡前後、コンパクト:概ね30~40㎡前後、ファミリー:概ね60㎡以上
データ出所:都市未来総合研究所「ReiTREDA」。図の地方都市とは、東京都と政令指定都市以外の都市
データ出所:都市未来総合研究所「ReiTREDA」
好調な需要を背景に年間の収入額(㎡単価)も増加しているが、賃料改定やテナント入替えに因るため上昇は緩やかで、全体で指数105.4に。支出増に追い付いていない。収入の上昇幅が大きいのは地域別では東京都心5区で、住戸タイプ別ではファミリーである[図表3]。名古屋市は図の地域区分の中で唯一、収入が減少している。
収入の増加を上回る支出増が響き、収入に対する支出の割合が高まって賃貸経営を圧迫している。割合が特に上昇したのは支出額大幅増の大阪市(図の期間で5.1%pt上昇)と収入減の名古屋市(同5.1%pt)。地域別で東京都心5区(同1.3%pt)、東京18区と市部(同1.5%pt)、住戸タイプ別でファミリー(同0.9%pt)は相対的に軽微である[図表4]。
一棟賃貸マンションの支出増加要因を探るため、住宅系J-REITで資産総額と時価総額が共に最大のアドバンス・レジデンス投資法人の決算データを元に、一部データの平滑化処理を行ったうえで、同一の250物件を対象に支出等推移を分析した[図表5]。
概略は本編で行った分析結果と同じく、緩やかな収入増に対して支出が相対的に高率で増加する構図であった[下図1]。項目別にみると修繕費の額が増加していて[下図2]、2018年7月期を100とすると直近期は170.3に上昇している[下図3]。
全国で建築工事費が上昇しているのと同じく、資材費や労務費等の上昇が修繕費に影響していると考えられる。加えて、当該投資法人は専有部のリノベーションなどで戦略的な資本的支出を行っていることから、修繕費についても同様の考え方で、物件の価値を維持するため積極的な修繕対応を採っている可能性もある。
データ出所:都市未来総合研究所「ReiTREDA」。元データはアドバンス・レジデンス投資法人による
発 行:みずほ不動産販売株式会社 営業統括部
〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル
レポート作成協力:株式会社都市未来総合研究所 研究部
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