下落継続は住宅地15、商業地10県
住宅地、商業地、工業地平均の全用途変動率(すべてプラス)は全国平均が2・7%と前年(2・3%)を上回って4年連続の上昇で、上昇率は91年(11・3%)以降では最も高い水準。3大都市圏では東京圏5・2%、大阪圏3・3%、名古屋圏2・8%、地方圏では地方四市(札幌、仙台、広島、福岡)5・8%、その他0・8%と全エリアで上昇した。上昇幅は前年と比べ名古屋圏、地方四市で縮小したが、東京圏、大阪圏、地方圏その他は拡大。地方圏その他は3年連続、それ以外は4年連続の上昇となった。
住宅地の変動率(同)は全国平均で2・1%(前年2・0%)と上昇幅は0・1ポイント増に留まった。3大都市圏では東京圏4・2%、大阪圏2・1%、名古屋圏2・3%、地方圏では地方四市4・9%、その他0・6%で、上昇幅は東京圏、大阪圏が拡大したが、名古屋圏、地方四市は縮小、その他は横ばいだった。
商業地の変動率(同)は全国平均で3・9%(前年3・1%)と、各用途の中でも最も高い上昇率を示した。年間3500万人を超える訪日外国人観光客などの動向を最も反映した格好で、3大都市圏では東京圏8・2%、大阪圏6・7%、名古屋圏3・8%、地方圏では地方四市7・4%、その他0・9%だった。上昇幅は東京圏、大阪圏、地方圏その他で拡大したが、名古屋圏、地方四市は縮小した。変動率に強弱はあるが全国的にインバウンド需要の波が広がっていることを示した。


都道府県別地価変動率を見ると、住宅地では、滋賀県が前年の下落から上昇に転じたことで変動率プラスの都道府県は前年の29から30に増えた一方で、変動率マイナスの都道府県は前年の17から15に減少した(横ばい2)。商業地では山形県、富山県、長野県、香川県、宮崎県の5県が下落から上昇に転じ、変動率プラスが前年の29から34に増加した。逆に変動率マイナスは15から10に減少した(横ばい3県)。全国的に地価の上昇傾向が広がる中でも、なお住宅地では15県、商業地は10県で下落傾向が継続していることも改めて浮き彫りとなった。
住宅地で上昇率が5%を超えたのは沖縄県(7・3%)と東京都(5・7%)。逆に最も下落したのは新潟県と和歌山県のマイナス0・6%だった。商業地では5%以上の上昇が7都府県あったが、最も上昇したのは東京都(10・4%)で二ケタ台乗せとなり、同様に訪日外国人の多い京都府、大阪府が7%台で続いた。
住宅堅調、観光客増も
国交省では住宅地の特徴について、「低金利環境の継続などによって引き続き住宅需要は堅調で地価上昇が継続。特に東京圏や大阪圏の中心部などで高い上昇を示した」「交通利便性や生活利便性に優れ、転入者が多い地域では、堅調な住宅需要に支えられ、比較的高い上昇が継続した」「リゾート地・観光地では、外国人向けの別荘・コンドミニアム需要や地元の住宅需要を背景に、引き続き高い上昇となった地点が見られた」と分析。価格上昇が顕著でも好調な分譲マンション、北海道や長野県、沖縄県で増大したリゾート需要などの動きを反映した。
また商業地は「主要都市では、店舗・ホテルなどの需要が堅調で、オフィスも空室率の低下傾向や賃料の上昇傾向によって収益性が向上していることなどから地価上昇が継続した」「駅周辺などマンション需要との競合が見られる地域では高い上昇を示した」「外国人を含めた観光客が増加した観光地では、引き続き高い上昇となった地点が見られた」「再開発事業などが進展する地域では、利便性やにぎわいの向上への期待感などから、地価上昇が継続した」と分析。商業系用地でのマンションとの競合や、再開発による地域価値向上への効果が後押ししたと説明する。
最高価格地点は19年連続「銀座山野楽器本店」
全国の最高価格地点は19年連続で東京・銀座4丁目、中央通り沿い「山野楽器本店」で1㎡あたり6050万円だった。コロナ禍から脱した23年に上昇に転じた後、24年(3・5%上昇)に上昇基調を強めたが、25年は8・6%上昇とさらに加速。坪当たり約2億円まで上昇した。
住宅地の最高価格地点は東京・港区の「赤坂1-14-11」でこちらは8年連続。米国大使館やホテルオークラなどに近接する高台の都心住宅街で、外国人向け高級賃貸マンションが立つ。価格は1㎡あたり590万円と10・3%上昇した。現地の真ん前では、旧ホテルオークラ別館の跡地再開発(53階建てタワーに)の工事が本格化している。
全体的には後半が拡大/基準地価と共通地点、半年間の上昇率
地価公示と都道府県地価調査(毎年7月1日時点、基準地価)との共通地点(1590地点=住宅地1087地点、商業地503地点)で半年ごとの地価変動率(すべてプラス)を見ると、全国住宅地は前半が1・6%、後半が1・7%で年間3・3%の上昇と、全体的には後半の方が上昇幅は大きく、時間の経過とともに上昇度合いが高くなっていることが分かった。
東京圏の場合、前半2・4%、後半2・6%で年間5・0%上昇。大阪圏は前半1・4%、後半1・5%で年間2・9%上昇、名古屋圏は前半1・5%、後半1・2%で年間2・8%上昇。地方四市は前半2・9%、後半3・0%で年間6・0%上昇、その他は前半・後半とも0・9%で年間1・7%上昇だった。
商業地の変動率は、全国が前半・後半とも2・8%で年間5・7%上昇だった。各圏域の年間上昇率は東京圏8・9%、大阪圏8・2%、名古屋圏4・0%、地方四市7・8%、その他2・3%。住宅地と違って後半の上昇幅が大きかったのは東京圏だけだった。
全国地価上昇率トップ10/観光・リゾート地目立つ
全国・住宅地の地価上昇率トップ地点は、2年連続で北海道富良野市の「北の峰町25―11」となった。通年で観光・リゾートが堪能できるエリアで、公示価格は1㎡あたり6万5000円。上昇率は前年(27・9%)を上回る31・3%だった。外国人による別荘やコンドミニアム需要が地価を押し上げた。
同様に2位の長野県白馬村と6位の同野沢温泉村の地点は、パウダースノーを楽しむ外国人観光客が増えたことで、別荘・コンドミニアム・住宅需要も増加した。白馬村の地点は前年の19・5%上昇から29・5%上昇に、野沢温泉村の地点は同15・0%から20・9%に上昇幅を拡大した。
3位の沖縄県宮古島市の地点、7位、8位の同石垣市の地点はリゾート地・観光地だが、投資需要に加え地元の住宅需要も加わってそれぞれ前年比20%前後の上昇となった。4位の北海道千歳市の地点、5位の熊本県合志市の地点は大手半導体メーカーの工場進出による影響で上昇した。
全国・商業地の上昇率トップ地点は、大手半導体メーカーの工場が進出する北海道千歳市の地点で上昇率は48・8%と前年(30・3%)を大きく上回った。2位、3位も千歳市の地点が占め、6位に昨年上位2を占めた熊本県菊陽町の地点が入った。4位、8位には観光客が増えている長野県白馬村と岐阜県高山市の地点、5位には大型再開発ビルが開業した東京・渋谷区桜丘町の地点、さらに観光客の増加で浅草地区の2地点もがトップ10入りした。
逆に住宅地の下落率ワースト10には、能登半島地震で大きな被害を受けた石川県輪島市、珠洲市、能登町、七尾市など被災地の地点がずらりと並んだ。商業地でも珠洲市、七尾市、志賀町などの7地点が入り、被災地の震災・豪雨被害の大きさが伝わってくる。